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Jを目指せ! by 木次成夫

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第19回 関西&北信越リーグ5節「全国地域リーグ決勝大会展望」編
by 木次成夫

 見たことがないクラブに興味がある一方で、年末開催の全国地域リーグ決勝大会に向けた戦いも気になる日々です。先週末は、悩んだ末に関西リーグのFC Mi-OびわこKusatsu対神戸FC1970と、北信越リーグのツエーゲン金沢対松本山雅FCを見ました。

 全国地域リーグ決勝大会はJFLへの登竜門です。昨年を例にとると、出場クラブ数は13。内訳は全国9地域リーグ優勝クラブ(05年大会決勝ラウンド=ベスト4進出クラブ所属地域はリーグ2位クラブも出場)と、全国社会人選手権(通称・全社)枠=1クラブ。昨年は九州リーグ王者のV・ファーレン長崎が「全社」で優勝したため、準優勝の静岡FC(東海リーグ2位)が出場しました。

 そして、大会優勝のTDKがJFL自動昇格、2位のFC岐阜がJFL最下位、ホンダロックとの「入れ替え戦」の末に昇格を決めました。今季は、優勝と準優勝の2クラブが自動昇格、3位クラブが「入れ替え戦」を行うことになっています。

 地域リーグ所属クラブにはリーグ戦の他に、ふたつの主要大会があります。全社予選(本大会)と天皇杯都道府県予選(本大会)です。各地域は気候と、選抜チームで参加する国民体育大会などを考慮して、独自にスケジュールを組んでいます。中でも関西リーグ(4月14&15日開幕、7月22日最終節)と北信越リーグ(4月8日開幕、7月22日最終節)は他の地域に比べて短期的に開催しています。最近、北信越リーグを度々見ているのは「最大の激戦区」という事情に加えて、リーグ・スケジュールも考慮してのことでした。


5月12日 関西リーグ5節
FC Mi-OびわこKusatsu対神戸FC1970

 関西リーグからは、昨年の全国地域リーグ決勝大会にバンディオンセ神戸(リーグ優勝)とMi-O(同2位)の2クラブが出場しました。05年大会でバンディが決勝ラウンドに進出したため、出場枠が“2クラブ”だったからです。ところが昨年の大会では両クラブとも予選ラウンド敗退に終わったため、今年の出場枠は“1クラブ”。つまり、熾烈さという点では昨年と比較になりません。

 試合会場の滋賀県野洲川歴史公園サッカー場(ビックレイク)はピッチが3面あり、うち2面が人口芝です。乾貴士(横浜FM)らを輩出した野洲高校はじめ、子供から大人まで有効的に利用しています。この日は、小学生の大会が行われていました。
 観衆は250人(公式発表)。太鼓を叩いたり、応援フレーズを叫ぶ“いわゆる”サポーターは0人。良いプレー、惜しいシーンには、メガホンを叩くパタパタという音がする程度でしたが、なぜか全体的に和やかな雰囲気がありました。様々な世代が、じっくりと試合を見ている点で、日本リーグ(Jリーグの前身)を髣髴とさせる感じでした。

 最初は、想定外の光景に唖然としましたが、05年2部リーグ優勝後に廃部した佐川急便京都SCがMi-Oトップチームの前身だったことを思い出し、なんとなく納得。Mi-Oとして滋賀県草津市を本拠に活動を開始してから、まだ2シーズン目です。最寄りの守山駅から1時間に1本程度しかないバスで約20分というアクセスの悪さも、“新規ファン予備軍”には壁なのかもしれません。試合は3-1でMi-Oが勝ち、開幕5連勝。昨季優勝のバンディオンセは3節でアイン食品(昨季6位)に敗れたため、2位。5月26日、バンディオンセ・ホームの「直接対決」が楽しみです。
 ところで、Mi-Oの3点目を決めたのは地元、草津東高校出身の内林広高(新加入=23歳、前・ロッソ熊本)でした。子供たちにとって、“身近な先輩”の活躍は、夢にもつながると思います。また、大人のサッカーを見ること自体、勉強になるのですから、指導者の方々は、子供が試合する前後にMi-Oを観戦できるようにスケジュールを調整しても良いのでは? とも思いました。


5月13日?命・曠蝓璽圧節
ツエーゲン金沢対松本山雅FC

今季こそ「最大の激戦区」ですが、全国地域リーグ決勝大会の出場枠は“1クラブ”です。この試合は4節でJSC(ジャパンサッカーカレッジ)に敗れたツエーゲン、同じく長野パルセイロに敗れた松本山雅、双方にとって大事な試合でした。結果は2対3で山雅の勝利。ツエーゲンを見るのは開幕のフェルヴォローザ石川・白山FC戦以来でしたが、“試行錯誤している”というのが率直な印象です。フェルヴォ戦は中盤底から“つなぐ”スタイルがベースになっていましたが、リズムが単調でした。では、山雅戦はどうだったかというと、良く言えば選手の個性を生かしたサッカーを展開していましたが、言い方を変えれば“大雑把”でした。山雅から5月上旬に移籍したばかりのFW奈良安剛(24歳、元・札幌など)をMFでスタメン起用するなど攻撃的布陣には魅力を感じましたし、接戦になったのは元・Jリーガーがレギュラーの半数以上を占めるチームならではの、個人能力の高さゆえだと思います。つまり、まだまだ強くなる余地があるわけです。ただ、初試合の奈良が“まだまだいけるよ”などと再三チーム全体を鼓舞した点が象徴的でしたが、マイペースタイプでおとなしい選手が多い点は気になりました。
ちなみに、この試合の観衆は入場料有料(500円。高校生以下は無料)ながら、822人(公式発表)。トップチームのプレー同様、ファンの応援にも「Jを目指して」実質3シーズン目の山雅と2シーズン目のツエーゲンとの「経験の差」を感じました。「ツエーゲン 走ってゆけ!」というフレーズが印象的な「トレイン・トレイン」の替え歌はじめ、独自性を生かした応援スタイルの熟成に期待します。

 ところで、全国社会人選手権の石川県予選決勝はツエーゲン対フェルヴォローザ石川・白山、長野県予選決勝は松本山雅対長野パルセイロで、ともに6月10日開催です。北信越リーグ枠は“3クラブ”しかないため、勝者は後に北信越予選に進出します。全国地域リーグ決勝大会出場への“もうひとつのチャンス”ゆえ、注目です。


今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL 13日第11節
FC岐阜 1-0 FC琉球 
YKK AP 2-2 栃木SC
TDK 2-0 アルテ高崎
ロッソ熊本 3-2 横河武蔵野FC

首位=佐川急便SC(勝ち点28)
2位=ロッソ熊本(同27)
3位=FC岐阜(同26)
5位=栃木SC(同21)

 アルテは最下位に転落。次節の注目は栃木SC対佐川急便SC(19日)とロッソ熊本対FC岐阜(20日)!

●北信越リーグ 13日第5節
長野パルセイロ 2-2 JSC
上田ジェンシャン 2-6 フェルヴォローザ石川・白山
新潟経営大学 2-1 ヴァリエンテ富山

首位=長野パルセイロ(勝ち点13)
2位=松本山雅(同12)
3位=JSC(同10)
4位=フェルヴォ(同9。得失点差)
5位=ツエーゲン(同9)

 富山は5連敗で最下位。
 次節20日はツエーゲン金沢対長野パルセイロ戦が注目カード!

●中国リーグ 13日第6節
ファジアーノ岡山 1-0 佐川急便中国
 ファジアーノは開幕6連勝で首位。

●四国リーグ 13日第5節
三洋電機徳島  0-2 カマタマーレ讃岐
 カマタマーレは通産4勝1分(4節でヴォルティス・アマと引き分け)。ヴォルティス・アマも4勝1分ながら、得失点差でカマタマーレは2位。

●九州リーグ 13日第7節
V・ファーレン長崎 5-0 ヴォルカ鹿児島
ニューウェーブ(NW)北九州 3-0 新日鐵大分

 新日鐵がNWに敗れたため、V・ファーレンが暫定的に首位に返り咲きました(勝ち点18)。以下、
2位=ホンダロック(同18。6試合のみ消化)
3位=新日鐵大分(同17)
4位=NW北九州(同15。6試合のみ消化)
 次節、5月19日のNW北九州対V・ファーレン長崎は前半戦最大の注目カード!

<写真>FC Mi-O対神戸。Mi-OのFW村瀬和隆(14番)は地元、守山北高校出身で前・V神戸

※本コラムは毎週火曜更新予定です

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