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Jを目指せ! by 木次成夫

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第20回 JFL ロッソ熊本&九州リーグ8節
by 木次成夫

「ロッソ熊本」としては今季で3シーズン目です。02年から04年まで「アルエット熊本」という名称だったチームと、「熊本にJリーグ・クラブがほしい」と願う人々が結びついて、現在に至っています。「地元クラブ」を「地元の人々」がサポートして「Jを目指す」のは、かつて甲府や新潟などが歩んだパターンです。
「アルエット熊本」の前身は1969年発足の日本電信電話公社熊本サッカー部。九州リーグに属した時期が長く、記録を見る限り、ニューウェーブ北九州の前身である三菱化成黒崎とはライバルでした。歴代最高位は2001年のJFL16チーム中8位(当時の名称はNTT西日本熊本サッカー部)。ちなみに同年2位は大塚製薬(現・徳島ヴォルティス)、8位は愛媛FCです。
その後、02年JFL18チーム中17位で九州リーグ降格、03年九州リーグ5位、04年九州リーグ4位と低迷しましたが、幸いにも熊本県内の「Jクラブを作る」運動が熟し、04年末に現在の運営会社である「株式会社アスリートクラブ熊本」が設立されました。そして、元Jリーガーを中心にした積極的な補強に加え、04年途中まで柏レイソルを率いていた池谷友良氏を監督に招聘。05年、「ロッソ熊本」として九州優勝を達成し、地域リーグ決勝大会ではFC琉球、ジェフ市原アマチュア(現ジェフリザーブズ)に次ぐ3位ながら、JFLに昇格しました。
 昨季は“Jリーグ準加盟”を承認されながらも5位。他チームが羨むほどの資金力で選手を揃えても簡単には勝てない、いわば“サッカーの難しさ”を経験したわけですが、地元のサッカー熱は高まり、ホーム試合の観衆は1試合平均3765人で1位でした。

5月20日
JFL
ロッソ熊本対FC岐阜

 会場は大津町運動公園球技場でした。JR豊肥本線肥後大津駅から徒歩40分程度。臨時シャトルバスで10分程度。高校サッカーで有名な大津高校のある“大津”(オオヅ)です。
 11節終了時点でロッソは9勝2敗(勝ち点27)で2位、FC岐阜は8勝2分1敗(勝ち点26)で3位でした。ちなみに、1位は9勝1分け(勝ち点28)で佐川急便SC。
“Jリーグ準加盟クラブ”の上位争いという点で、JFL屈指の好カードなのですが、観衆は3387人(公式発表)。“意外に少ない”というのが率直な印象でしたが、同節のJFLでは栃木SC対佐川急便SC(2449人)、ガイナーレ鳥取対流通経済大学(2581人)を凌いで、観客数1位でした。
 ロッソはスタメン中10人が元Jリーガーで7人が新加入、対する岐阜は11人中9人が元Jリーガーで2人新加入。結果的にロッソは0-1で敗れましたが、実力的には拮抗していました。「元Jリーガー」という肩書きに、“落ちこぼれ”あるいは“衰えたベテラン”をイメージするかもしれませんが、実際に見ると、楽しいです。“再チャレンジ”を唱える首相に是非観戦してほしいと思うほどです。また、ベテランには全盛期の片鱗があります。個人的にはボランチの喜名哲裕(30歳、新加入、元・名古屋など)のセンス溢れるプレーに魅せられました。また、DF上村健一(33歳、新加入、アトランタ五輪代表、元・広島など)は相変わらず、1対1の対峙場面で勝負強かったです。
 試合後、池谷監督は「失点後、前へ前へと急いでしまった」と、大雑把なサッカーになってしまったことを敗因のひとつにあげていました。また、「審判のレベルが低い。判定の基準がわからなかった」とも。確かに、審判の判定には疑問がありましたが、“そんな状況下、いかに冷静に戦うかも「Jリーグ入り」には重要な点なのだろう”とは、思いました。
 岐阜ホームのロッソ戦(8月19日)が楽しみです。開幕の頃を振り返ると、クラブ運営、地元のサポートという点で、岐阜はロッソに劣っていました。果たして、どれくらい好転しているでしょうか――。勝敗だけでなく、試合運営、町の雰囲気など、様々な点で注目です。


5月19日
九州リーグ
NW北九州対V・ファーレン長崎

 ロッソ対岐阜戦前日、九州リーグのニューウェーブ北九州対V・ファーレンを見ました。結果は1-1でPK戦の末にV・ファーレンが勝利。ちなみに九州リーグはPK戦方式を導入していて、「PK勝ち」が勝ち点2、「PK負け」は勝ち点1です。観衆は775人(公式発表)。幼稚園児の集団から中高年まで様々な世代が集った点に未来を感じましたし、両チームの実力は拮抗していて楽しかったです。 
 そして、思いました。いわゆる観光地ではない町にあるマンチェスター・ユナイテッドが世界的な典型例ですが、サッカークラブは、いわば“観光資源”でもある、と――。日本各地でチェーン店(フランチャイズ)が増えて地方の個性がなくなりつつある中、サッカーのプレースタイル、ファンの応援スタイル、主催者のホスピタリティなど、サッカークラブと試合に関わるすべてが一期一会の魅力になりえます。湯の成分、宿泊施設の質、気候などが違うゆえに、日本各地を回る“マニア”が多い温泉に似ているかもしれません。
 V・ファーレン、FC岐阜とも数十人のファンがアウェー観戦に訪れていました。やがて、日本全都道府県にJリーグ・クラブが誕生し、ファンの往来がある時代になってほしいと思いました。そのためにはJ3、J4などを作ることが前提になりますが……。
 J2には降格がありません。実は大問題です。というのは、たとえ長期的に最下位で低迷するクラブがあったとしても、J2に参加し続けるか、クラブが倒産して消滅する以外に方策がないわけです。言い方を代えると、J3以下があれば、“出直す”ことができます。
 Jリーグ幹部の方々には、早急に対策を考えてもらいたいものです。
(NW北九州対V・ファーレン長崎、ロッソ熊本対FC岐阜ともに、最新NEWSでも掲載していますので、是非、ご覧ください。)

 
今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

JFL
19日・20日 第12節
栃木SC 0-1 佐川急便SC
アルテ高崎 1-3 三菱水島FC

 首位=佐川急便SC(勝ち点31)、2位=FC岐阜(同29)、3位=ロッソ熊本(同27)、6位=栃木SC(同21)、18位=アルテ(最下位、同4)

北信越リーグ
20日 第6節
ツエーゲン金沢 3-1 長野パルセイロ
フェルヴォローザ石川・白山 7-0 新潟経営大学
松本山雅FC 1-2 JSC(ジャパンサッカーカレッジ)
ヴァリエンテ富山 9-0 上田ジェンシャン

 首位=長野パルセイロ(勝ち点13)、2位=JSC(同13)、3位=フェルヴォ(同12)、4位=松本山雅(同12)、5位=ツエーゲン(同12)。富山は今季初勝利で7位に上昇。前節終了時点で1位のパルセイロと2位の松本山雅が共に敗れたため、「勝ち点差1」内で5クラブが争う激戦模様になりました。

関西リーグ
19日 第6節
FC京都BAMB 0-3 FC Mi-OびわこKusatsu

 Mi-Oは開幕6連勝で首位。次節、26日のバンディオンセ神戸(昨季王者、今季5勝1敗で2位)との対戦に注目!

中国リーグ
20日 第7節
ファジアーノ岡山 7-2 セントラル中国

 ファジアーノは開幕7連勝で首位。2位のセントラル中国との勝ち点差は早くも9。強すぎです!

四国リーグ
20日 第6節
カマタマーレ讃岐 9-2 しまなみFC

 カマタマーレは通産5勝1分(4節でヴォルティス・アマと引き分け)。ヴォルティス・アマも5勝1分ながら、得失点差でカマタマーレは2位。次節、27日は昨年度2位(一昨年度優勝)の南国高知FCとアウェーで対戦。四国リーグ随一の好カードです。

九州リーグ
19日・20日  第8節
ニューウェーブ北九州 1-1(PK4-5)V・ファーレン長崎

 首位=ホンダロック(勝ち点21。7試合のみ消化)、2位=V・ファーレン(同20)、3位=新日鐵大分(同17)、4位=NW北九州(同16。7試合のみ消化)。次節、27日はホンダロック(昨季JFL最下位)対NW北九州、V・ファーレン長崎対新日鐵大分(昨季2位)

<写真説明>ロッソDF上村健一(左)と岐阜FW片桐淳至の攻防

※本コラムは毎週火曜更新予定です

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