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Jを目指せ! by 木次成夫

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第21回 関西&四国リーグ「頂上決戦」編
by 木次成夫

 5月26日は関西リーグのバンディオンセ神戸対FC Mi-OびわこKusatsu、27日は四国リーグの南国高知FC対カマタマーレ讃岐を観ました。両リーグともに前期最終節で、昨季1位と2位同士の首位争い。4クラブ揃って「Jを目指している」点でも注目でした。

5月26日
バンディオンセ神戸対FC Mi-OびわこKusatsu

“バンディオンセ”は、スペイン語のBANDIDO(バンディード=山賊、悪党)とONCE(オンセ=数字の11)を合わせた造語です。チームの前身は兵庫県教員のサッカークラブから発展した「セントラルスポーツクラブ神戸」。04年まで3年連続で3位でしたが、「バンディオンセ神戸」と改名した05年は、チーム強化が実って、見事、リーグ優勝。全国地域リーグ決勝大会では4位になりました。この年は上位3クラブ(1位=FC琉球、2位=ジェフリザーブズ、3位=ロッソ熊本)がJFLに昇格しています。つまり、バンディは“あと一歩(1クラブ)”のところまで近づいたわけです。そこで、昨季は森岡茂(33歳、元G大阪など、アトランタ五輪代表)ら、一昨年をしのぐ補強をしました。ところが、関西リーグ連覇こそ果たしたものの、地域リーグ決勝大会はグループリーグ敗退。今年は、いわば“3度目の正直”になります。

 6節終了時点で1位は6連勝のMi-O(昨季2位)、5勝1敗のバンディは2位でした。昨季最後の公式大会である西日本選手権決勝(2月)で対戦した際は、1-1でPK戦にもつれ込み、バンディが敗れています。つまり、バンディにとっては、ホームのMi-O戦は絶対に負けられない状況でした。
 バンディはスタメン中5人が新加入選手で、7人が元Jリーガーでした。結果は2-0でバンディの勝利。“小粒ながらも組織的なサッカー”が武器のMi-Oに比べると、バンディは選手個人の能力で勝っていました。先制点をあげたのは新加入のDF朝比奈伸(29歳、前ロッソ熊本、元G大阪など)。エース的存在の森岡茂は先制点のアシストに加えて、追加点を決める大活躍でした。精度の高いクロスと、試合状況に応じたポジショニングは際立っています。

 ところで、この試合は兵庫県加古川市にある日岡山公園グランドで開催されました。観衆は150人(公式発表)。北信越リーグや九州リーグの“首位争い”に比べると、はるかに数が少ないですが、子供から中高年まで様々な世代が集まっていました。バンディは子供(女の子を含む)から大人まで積極的に“サッカースクール”を開催しているので、その成果でしょう。メンバー発表など場内アナウンスがないためか、関西リーグ・プログラムをじっくりと見て、出場選手をチェックしているファンもいました。今まで各地で見た試合と比べると、ユニフォーム(あるいはクラブ公式Tシャツ)を着ているファンの率が高い点も印象的でした。数は少ないながらも“濃い”ファンが集まったという感じでした。
 また、初めて応援フレーズを聞いたのですが、例えば“うらーわレッズ”と叫ぶ感じで、“バンディ! オンセ!”(バとオにアクセント)と区切ります。“バーンディオンセ”ではありません。かつてナビスコカップのイメージソングだった「勝利の歌」(ディアマンテス)の替え歌もありました。それに対して、歌ったりして応援するMi-Oファンは神戸FC1970戦同様にゼロでした。つまり、今ならMi-Oの初代応援団長になれるということです。

 7節を終えて、バンディとMi-Oは6勝1敗で並び、得失点差でバンディが1位を奪取しました。関西リーグは6月9日(10日)から後期が始まります。Mi-Oホームのバンディ戦は最終節の7月22日。幸いにも? J1は中断期間で、J2は21日開催です。


5月27日
南国高知FC対カマタマーレ讃岐

 6節終了時点で昨季優勝のカマタマーレは5勝1分けでヴォルティス・アマと並びながらも、得失点差で2位。昨季2位の南国高知FCは5勝1敗の3位でした。
会場は香南市にある「野市ふれあい広場」サッカー場。当日の地元新聞には両クラブ名を記した試合告知情報すら掲載されていませんでした。メンバー発表など場内アナウンスもなければ、グッズ販売もありませんでした。多くのクラブで恒例になっている“エスコートキッズ”もいません。遠目に見れば、ただの“草サッカー”と変わらなかったでしょう。僕自身、近くまで行って、応援の垂れ幕を発見するまでは、試合会場だという確信が持てませんでした。

 観客は約100人。親子連れをはじめ、世代は様々ながら、約20人は明らかにカマタマーレ讃岐ファンでした。試合は2-6で南国高知FCが敗退。熱い応援と垂れ幕の数という点でもアウェーのカマタマーレが勝っていました。1人が歌い、1人が太鼓を叩き、数人がフォローする“熱い”南国高知サポーターの奮闘ぶりには感動しましたが、両クラブの「勢いの差」が結果に出てしまったという感じです。
 南国高知FCは、高知農業OBチームから発展してきたクラブで、「2002年高知国体強化チーム」になった99年に現在の名称になりました。その後、01年から四国リーグ5連覇を達成。肝心の02年国体は1回戦で鹿児島に敗れましたが、“高知県初のJFLチーム”という目標に向けて頑張ってきたというわけです。
 ところが、昨季は最終節、ホームのカマタマーレ戦に勝てば6連覇達成という状況ながらも、3-3の引き分けで2位。先制されながらも一時は2-1と逆転したのですが、結果的に当時の両クラブの「勢いの差」が明暗を分けました。カマタマーレは一昨季5位(当時の名称は高松FC)ながら、昨季からJリーグを目指して積極的な活動に転じたクラブです。優勝慣れした南国高知と比べると、選手たちの闘志が違いました。
 以来、1年も経たないうちに両クラブの「勢いの差」は大きくなってしまったというのが率直な印象です。南国高知FCが01年から達成した四国リーグ5連覇、つまり5年連続地域リーグ決勝大会出場という実績は、“快挙から停滞への5年間”ともいえます。最もJFLに近づいたのは、上位2チームが自動昇格した全国地域リーグ決勝大会で3位になった01年でした。その後は、昇格争いでアルテ高崎(01年時点で群馬県リーグ所属。04年からJFL)、FC琉球(04年時点で沖縄県リーグ所属、06年からJFL)、FC岐阜(03年時点で岐阜県リーグ所属。07年からJFL)など、他地域の後発クラブに抜かれました。
 近年、「地域活性化」策のひとつとして「Jを目指すクラブ」を支援している自治体も多い中、南国高知は02年の国体以降、積極的なチーム強化をしていません。カマタマーレの補強も日本各地の地域リーグ強豪に比べると地味ですが、徐々に地元の支援は高まっています。
高知県はもともとサッカーよりも野球が盛んな上に、雇用(就職)状況が悪いため、アマチュアとしてサッカーを続けることが難しいことも、南国高知が停滞している要因のようです。高知県庁のHPを見て初めて知ったのですが、例えば有効求人倍率は全国46位、完全失業率は4位、老齢者人口割合(65歳以上)は3位でした。
 もっとも、厳しい状況ならばなおさら「地域活性化」策として南国高知FCを利用しても良いのではないかと思います。少ないながらも、熱いファンはいます。和やかにサッカーを楽しむファンもいます。選手の世代交代も徐々に進んでいます。
また、ライバルが存在してこそリーグ全体が盛り上がり、サッカーのレベルも高まります。自治体、企業、マスコミの方々には、南国高知FCをサポートしてほしいものです。せっかく国体のために充実させた施設とチームを有効利用しないのは、そもそも“もったいない”です。
 


今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL
5月26日・27日 第13節
FC 岐阜 1-0 FC刈谷
Honda FC 2-2 栃木SC
YKK AP 1-2 ロッソ熊本
流通経済大学 3-1 アルテ高崎

 首位=佐川急便SC(勝ち点34)、2位=FC岐阜(同32)、3位=ロッソ熊本(同30)、4位=栃木SC(同22)、18位=アルテ(最下位、同4)。次節(6月3日)の注目カードはロッソ対佐川急便

●北信越リーグ 
5月26日=第7節
ヴァリエンテ富山 0-2 ツエーゲン金沢
フェルヴォローザ石川・白山FC 2-3 長野パルセイロ
新潟経営大学 0-6 松本山雅FC 

5月27日=第8節
上田ジェンシャン 0-1 松本山雅FC
ヴェリエンテ富山 3-2 長野パルセイロ
フェルヴォローザ石川・白山FC 2-1 ツエーゲン金沢

 首位=JSC(6勝1敗1分=勝ち点19)、2位=松本山雅(同18)、3位=長野(勝ち点16)、4位=フェルヴォ(同15)、5位=ツエーゲン(同15、得失点差)、6位=V富山(同6)。V富山は元G大阪の木場昌雄が退団したが、7節終了時点で首位だった長野に勝利する快挙! 金沢ダービーは1節で破れたフェルヴォが勝利して、通産1勝1敗。首位のJSCは昨季優勝チーム。次節(6月3日)の注目カードはJSC対フェルヴォ

●中国リーグ
5月27日 第8節
マツダSC 0-6 ファジアーノ岡山 
 ファジアーノは開幕8連勝で首位。相変わらず、強すぎです!

●九州リーグ
5月27日 第9節
V・ファーレン長崎 3-1 新日鐵大分
ホンダロック 0-1 ニューウェーブ北九州

 首位=V・ファーレン(勝ち点23)、2位=ホンダロック(同21。8試合のみ消化)、3位=NW北九州(同19。8試合のみ消化)

<写真説明>森岡茂(33歳)。若い頃よりもイケメンになった気がしませんか?

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