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Jを目指せ! by 木次成夫

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第24回 “頑張れ石川県”特別編
by 木次成夫

 6月10日の全国社会人選手権石川県大会決勝後、ショッキングなニュースがありました。北信越リーグ1部所属のフェルヴォローザ石川・白山FCの経営が悪化し、選手及びスタッフの給料支払いが遅延する事態に陥ったという内容でした。リーグ開幕戦を、このコラムで書いた頃から危惧してしたとはいえ、驚きました。

 フェルヴォは昨季5位。Jを目指すクラブとしては比較的地味な存在でした。ところが今季は、“まるで別のクラブ”といっても過言ではないほどの大変革をしたのです。監督にはスロベニアで指導経験のある濱吉正則氏を起用し、阿部祐大朗(前・横浜M、元U-20代表)とスロベニア人プロ選手2人を含めて新加入選手は20人。2月には10日間の九州合宿を実施。その上、平日も「昼間練習」に移行。地域リーグ所属でも「昼間練習」をしているクラブはありますが、アマチュア(セミプロ)選手の生活を考慮すれば、なかなかできることではありません。例えばJリーグ準加盟のJFL、栃木SCですら最近まで夜間練習がメインでした。結果的には、急速な変革に無理があったということになりますが、フェルヴォの問題は、日本全国の「Jを目指すクラブ」にも他人事ではありません。

 まず、地域リーグ所属クラブは収入の多くをスポンサーに依存しています。他にはユニフォームなどのグッズ販売収入程度しかありません。試合観戦料は無料にしているクラブの方が多いです。その理由のひとつは、スタジアムは公共施設ゆえに、有料にするよりも無料で試合を行う方が、スタジアムを割安で使用できる場合があるからです。自治体の協力を得て、使用料を優遇されているクラブも多いのですが、有料にした方が結果的に赤字が増えることもありうるのです。ちなみに、今や日本中の地域リーグ所属クラブ随一の観客動員力を誇る松本山雅FCは全試合無料。フェルヴォは5月20日以降のホーム開催6試合が有料で、大人500円、高校生以下無料です。つまり、1000人の大人が集まっても収入は50万円。リーグ戦ホーム開催7試合合計で350万円ということになります。わかりやすく言うなら、週40時間働いている都会のコンビニ・バイト2人の年収以下です。
 そんな状況にも関わらず、フェルヴォは今季、スポンサーは複数あるものの、メインであるユニフォームの胸スポンサーがありません。昨季は、あったのですが……。

 6月17日、フェルヴォが気になり、長野パルセイロ・ホームのリーグ10節を見に行きました。結果は1-3で敗退。前半は気迫溢れるサッカーで互角以上に戦い、先制された後も一度は追いついたのですが、終盤、力尽きました。この試合、フェルヴォはスタメンのうち新加入選手が10人。対するパルセイロは新加入8人中5人がスタメン。2年目のバドウ監督のもと、主将でボランチの貞富信宏(元・湘南、前・アルテ高崎)、FW要田勇一(前・ジェフ千葉)、DF籾谷信宏(元・C大阪、前・アルテ)ら、限られた予算の中でチームの軸となる選手を揃えた成果が試合結果に出ました。先制点は昨季リーグ得点王の兼子一樹(長野県出身)、2点目は貞富、3点目は要田という点は象徴的です。

 パルセイロに比べると、フェルヴォは当然ともいえますが、大変革後の「新生」チームでした。監督の濱吉氏にしても、柏と名古屋などで下部組織の指導経験はありますが、地域リーグは今季が初めてです。長野戦の結果、首位JSC(ジャパンサッカーカレッジ)から2位=松本山雅FC、3位=長野パルセイロ、4位=ツエーゲン金沢まで、残り4試合で勝ち点差4という激戦状況の中、5位=フェルヴォのJFL昇格という夢は来年以降に持ち越されました。是非、現在の危機を乗り越えて、今季の経験を来季につないでほしいと思います。長野まで訪れた約30人の熱いファンのためにも……。

 フェルヴォの運営会社社長、吉田貴宏氏はかつて選手として松任FC(フェルヴォの前身)でプレーした選手です。経費削減のために選手たちが移動する際には、バスを自ら運転しているそうです。長野との試合中は、フェルヴォ攻撃サイドのカメラマンがゼロという状況下、写真撮影をしていました。経営難と報道した後ゆえに、少しは石川県の報道陣が来ると思ったのですが……。石川県のマスコミは「Jを目指すクラブ」にはあまり興味がないようです。地元のスーパースター、松井秀喜は別格としても、今季始まった北信越BC(ベースボールチャレンジリーグ)よりも扱いが小さいです。
 
 だからこそ、石川県のみなさんには、是非、フェルヴォ(ツエーゲンも)を応援してほしいです。松任市を中心に合併した白山市の知名度アップのためには、フェルヴォは絶好のアイテムだと思います。市役所員を動員してスタジアムを満杯にするくらいの頑張りに期待したいです。やがて、「サッカーでも有名な白山ですか?」といわれる時代が訪れるかもしれないのですから。
 
 今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL
6月16日・17日 第16節
佐川急便SC 3-1 FC岐阜
栃木SC 1-1 流通経済大学
ロッソ熊本 3-0 TDK
アルテ高崎 1-1 FC刈谷

首位=佐川急便SC(勝ち点38)、2位=ロッソ熊本(同37)、3位=FC岐阜(同33)、7位=栃木SC(同24)、18位=アルテ(最下位、同5)
J準加盟の栃木SCにとっては痛恨の引き分け。10節から4分け3敗で、5位から7位に順位を下げた。次節は前期最終節。佐川印刷SC対栃木SC(23日、13:00)、FC岐阜対ガイナーレ鳥取(23日、19:00)、三菱水島FC対ロッソ熊本(24日、13:00)

●北信越リーグ
6月17日 10節
長野パルセイロ 3-1 フェルヴォローザ石川・白山
JSC 3-0 上田ジェンシャン
松本山雅FC 3-2 ヴァリンテ富山
ツエーゲン金沢 5-1 新潟経営大学

首位=JSC(勝ち点25)、2位=松本山雅(同24)、3位=長野パルセイロ(同22)、4位=ツエーゲン金沢(同21)、5位=フェルヴォ(同15)、6位=ヴァリエンテ富山(同6)

●関西リーグ
6月16日 9節
FC Mi-OびわこKusatsu 3-3 アイン食品
バンディオンセ神戸 3-0 グラスポ柏原
Mi-Oが引き分けたため、バンディが単独首位に! 

●中国リーグ
6月17日 第11節
ファジアーノ岡山 6-0 フジタSC  
ファジアーノは開幕11連勝。64得点、2失点(対セントラル中国戦7-2)。ダントツ首位。相変わらず、強すぎです!

四国リーグ 6月17日 第8節
カマタマーレ讃岐 7-0 三和クラブ
徳島コンプリール 1-4 南国高知FC
カマタマーレはヴォルティス・アマと並ぶ7勝1分けながら、得失点差で2位。南国高知FCは6勝2敗で3位

●九州リーグ
6月16日、17日 第12節・13節
6月16日 七隈トンビーズ 0-7 ニューウェーブ北九州
     熊本教員蹴友団 1-3 V・ファーレン長崎
6月17日 ニューウェーブ北九州 4-0 三菱重工長崎
      V・ファーレン長崎 10-0 海邦銀行

首位=NY北九州(勝ち点=31)、2位=ホンダロック(同30=11試合のみ消化)、3位=V・ファーレン長崎(同29)
NWが暫定的に1位奪取!

<写真>フェルヴォの阿部(左)と、パルセイロの飯田諒(前・草津)。スポンサーの有無は歴然

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※本コラムは毎週火曜日更新予定です

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