beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第26回 北信越リーグ12節「3度目の信州ダービー」
by 木次成夫

「リーグ優勝=Jリーグへの道」という点でも、「ダービー戦ゆえの意地」という点でも、これ以上に盛り上がる要素はない状況に惹かれ、またもや長野県に行きました。

 北信越リーグ12節、長野パルセイロ対松本山雅FC。ともに絶体絶命下での「3度目のダービー」でした。11節終了時点で、首位は昨年度王者のジャパンサッカーカレッジ(JSC、勝ち点28)。以下、2位=長野パルセイロ(同25)、3位=松本山雅(同24)、4位=ツエーゲン金沢(同24、得失点差)。残り3試合。山雅は最終節でJSCと戦いますが、もはや自力優勝の可能性はありません。対する長野は13節がJSC戦ゆえ、最終的に勝ち点で並ぶ可能性はありますが、11節終了時点での得失点差はJSC=26で、長野=16。得失点差で上回ることをことは不可能に近い状況です。ただ、この日、JSCはアウェーでツエーゲン金沢戦。JSCが敗れれば……長野、山雅、ツーゲンの3チームに優勝の可能性が残ります。

「信州ダービー」という点では、1勝1敗後の「3度目」です。まずは4月29日に松本ホームで行われたリーグ戦、長野が0-1で勝利。6月10日の全国社会人選手権長野県大会決勝では山雅が1-0でリベンジ。3戦目が長野ホームのリーグ戦というわけです。

 試合前に、まず注目していたのは観客数でした。というのは、松本ホームのリーグ戦は、入場料無料ながらも6399人も集まったからです。長野は入場料有料(大人500円、高校生以下200円)とはいえ、第1節、新潟経営大学戦の1358人が最高でした。

 結果は、ほぼ満員の3138人。相対的に見れば“サッカー不毛の地”だった北信(長野市を中心とした県北部)としては革命的な数字です。試合当日朝には、長野パルセイロファン(サッカー好きママ、と書いてありました)から「大事な決戦」という趣旨のメールをいただいていました。

 ところで、試合は0-3で長野の完敗に終わりました。前半は拮抗した展開だったのですが、後半2分に長野のMF小田竜也が2枚目のイエローで退場。山雅の主将、土橋宏由樹がPKを決めて先制。これで流れが変わりました。ファールを誘ったのは、左サイドアタッカーの竹内優の突破でした。全社・決勝でゴールを決めた選手です。

 2点目は後半35分。竹内のシュートをGKがはじき、こぼれ球を土橋が決めました。この試合、土橋は本来のボランチではなく、ワントップ下。中盤底からのゲームメイクセンスよりも、前線での決定的仕事に期待したということでしょうが、結果的に、監督の采配は大成功だったわけです。
 そして、3点目は終了間際の後半44分。セットプレー後のカウンター。長野は得点を狙うべく、GKすら前線に出ていました。いたし方のない失点です。

 終わってみれば、全社・決勝同様に長野の“個”に、山雅の“組織”が勝った試合でした。長野は“普段通り”だったのに対して、山雅は“3度目ならではの”研究をしたサッカーをしたともいえます。中でも、左SB吉田匡良(24歳。元・京都など。東福岡高校出身)と右SB金沢慶一(22歳。近畿大学卒。広島Y出身)のバランス感覚と粘りには、感動しました。ともに今季加入した選手ですが、さすがは“名門育ち”。相手との力関係を把握した上で、ベストのチームプレーをする判断力と実践力に長けています。
 
 試合後、長野の選手たちは当然ながら、落胆していました。守備の中心、籾谷真弘(26歳、元・C大阪など。C大阪Y出身)にいたっては大泣き(写真)。そんな姿を見たファンが「泣いている場合じゃない。まだ、次がある」と鼓舞する様を見て、地域リーグは変わりつつあると感じました。“ただの”レベル低いリーグではありません。元Jリーガー=落ちこぼれが適当にやっているリーグではありません。精一杯頑張っている選手と、精一杯の運営をしているクラブがあり、身近で見られる試合に喜びを感じるファンが増えています(あまり、増えていない地域もありますが……)。

「Jを目指す」クラブ(Jリーグクラブも)は、“子供の夢”というフレーズをPRで多用しますが、実は“大人の夢”にもなっていると感じました。高齢化社会に向かい、地方格差などが問題も大いに日本ゆえに、です。参議院選挙に向けて、日本全国の政治家の方々には、是非地元の「Jを目指すクラブ」を見に行ってほしいと思うほどです。

 この日、ツエーゲン金沢がJSCに勝ったため、残り2試合で首位から4位までの勝ち点差が3という状況になりました。7月1日の結果は以下の通りです。

●北信越1部リーグ
長野パルセイロ 0-3 松本山雅
フェルヴォローザ石川・白山 2-1 ヴァリエンテ富山
ツエーゲン金沢 1-0 JSC(ジャパンサッカーカレッジ)
上田ジェンシャン 2-2 新潟経営大学 

首位=JSC(勝ち点28)、2位=松本山雅(同27)、3位=ツエーゲン金沢(同27、得失点差)、4位=長野パルセイロ(25)、5位=フェルヴォ(同21)、6位=ヴァリエンテ富山(同6)。

次節(7月8日)は山雅対ツエーゲン、JSC対長野。そして、最終節(7月22日)はJSC対山雅、長野対ツエーゲン。優勝争いは最終節までもつれ込みます。

2部リーグ
グランセナ新潟 3-0 サウルコス福井
アンテロープ塩尻 2-2 大原学園

首位=グランセナ(勝ち点27)、2位=サウルコス(同25)、3位=アンテロープ(同22)。4位=大原学園(同20)。アンテロープにとっては“痛い”引き分け。次節と最終節は上位と下位クラブの対決になるため、順当に見ればグランセナが優勝か。

<写真>試合後の籾谷真弘(長野パルセイロ)。熱いプレースタイルで人気随一の選手ならではの、魂を感じる涙

今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向
●JFL
6月29、30日。7月1日 後期1節
流通経済大学 1-4 ロッソ熊本
FC岐阜 0-1 Honda FC 
ガイナーレ鳥取 2-1 アルテ高崎
FC琉球 1-0 栃木SC

首位=佐川急便SC(勝ち点42)、2位=ロッソ熊本(同40)、3位=FC岐阜(同36)、8位=栃木SC(同25)、18位=アルテ(最下位、同5)
FC岐阜は松永英機新監督(前ヘッドコーチ)采配2試合目(監督就任後1試合目)の“痛い”敗戦。栃木SCは柱谷幸一新監督の初采配を勝利で飾れず10節から5分け4敗で8位に後退。次節は、岐阜対アローズ北陸(6日=19時)、栃木対ソニー仙台(7日=17時)

●関西リーグ
6月30日、7月1日 11節
バンディオンセ神戸 5-1 ASラランジャ京都
FC Mi-OびわこKusatsu 9-0 三洋電機洲本
首位バンディと、2位Mi-Oの勝ち点差は2。Mi-Oホームの直接対決(7月22日)まで、優勝争いはもつれこむか?

●中国リーグ
7月1日 12節
レノファ山口 1-5 ファジアーノ岡山
ファジアーノは開幕から12連勝! 2位のセントラル中国との勝ち点差は12(セントラルは10試合のみ消化。中国リーグはリーグ終了後に上位4チームで1試合総当りのプレーオフが行われるが、次節(8日)、ホーム開催の佐川急便中国(3位)戦に勝てば、ファジアーノの2位以内が確定し、全国地域リーグ決勝大会出場権を得る(ファジアーノは昨年の同大会3位ゆえ、中国リーグの同大会出場枠は2チーム)。また、同クラブは7月4日に「Jリーグ準加盟」申請!!!!


●四国リーグ
7月1日 第10節
カマタマーレ讃岐 8-0 ベンターナAC 
南国高知FC 2-3 ヴォルティス・アマ
首位は得失点差でヴォルティス・アマ。今後の注目は7月15日、ヴォルティス・ホームのカマタマーレ戦。南国高知は3位

●九州リーグ
7月1日 14節
七隈トンビーズ 2-3 V・ファーレン長崎
OSUMI NIFS 0-1 ニューウェーブ北九州

首位=NW北九州(勝ち点34)、2位=ホンダロック(同33。13試合のみ消化)、3位=V・ファーレン長崎(同32)。今後の注目カードは、8月12日、V・ファーレン長崎対NW北九州

「我が町の“Jを目指すクラブ”自慢&情報」はこちらまでお待ちしています

TOP