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Jを目指せ! by 木次成夫

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第27回 ファジアーノ岡山PART2「桃太郎スタジアムに9252人」
by 木次成夫

 このコラムの第一回で紹介したクラブです。04年に岡山県1部リーグ所属のアマチュアクラブを母体に発足し、年々、成長してきました。

04年
 岡山県1部リーグ優勝
05年
 中国リーグ2位(全国地域リーグ決勝大会=グループリーグ敗退)。
06年
 中国リーグ初優勝(全国地域リーグ決勝大会=3位)

 JFL昇格は2チームでした。全国地域リーグ決勝大会1位のTDK(自動昇格)と2位のFC岐阜(入れ替え戦勝利)です。つまり、ファジアーノは、「最もJFLに近いチーム」になったわけです。

 今季、ファジアーノは東京VからFW喜山康平、MF弦巻健人をレンタルで獲得した他、大幅な選手補強をしました。監督にはザスパ草津を率いた経験のある手塚聡氏を招聘。80年代中盤には日本代表として活躍した往年の名FWです。

 結果は、中国リーグ首位独走。去る7月4日にはJリーグ準加盟申請もしました。8月21日にJリーグ理事会で審議される予定です。

7月8日
中国リーグ13節
VS.佐川急便中国

 12節終了時点でファジアーノは12連勝。リーグ終了後に上位4チームで一回戦総当りのプレーオフが行われますが、この試合に勝てば2位以内が確定し、全国地域リーグ決勝大会出場権も獲得するという状況でした。

同大会は前年度のベスト4進出クラブ所属地域リーグに出場枠が“プラス1”与えられます。つまり、今季の中国リーグからは優勝と2位のクラブが出場できるわけです。

 試合は6-0でファジアーノが圧勝。リーグ3位の佐川急便は組織的な守備で粘りましたが、今季から平日昼間練習に移行したファジアーノとはフィジカル・コンディションという面でも大きな差がありました。その一方で“強すぎるファジアーノ”に若干の不安も感じました。例えば激戦を繰り返している北信越リーグ所属クラブに比べると、“競り合い”や、“危機的状況”経験が足りません。そういう意味では、全国地域リーグ決勝大会前に行われる天皇杯予選や、全国社会人選手権予選が楽しみともいえますが……。

 ところで、この試合最大の驚きは観衆の数でした。チームは強い上に、入場料無料、重要な試合、今季最後のホーム“桃太郎スタジアム”開催……ファンが集まる要素は揃っていたとはいえ、なんと9252人(主催者発表)。昨季の最多記録約6800人を大幅に更新しました。チーム強化が必ずしもファン増加に結びつかないクラブが多々ある中、凄いです。

 ファジアーノは短期的な強化を急ぎすぎていると思う半面、「クラブ運営」という点で多くの「Jを目指すクラブ」と違った手腕も感じます。クラブ運営会社代表取締役、木村正明氏が岡山県出身で、長らく外資系証券会社員だった経験ゆえでしょうか。ファジアーノには親会社があるわけでもなく、地元自治体及び財界が先頭にたって「Jへの道」を歩みだしたクラブでもありません。いわば零細企業です。にもかかわらず、スポンサーの数は地域リーグクラブ随一(スタジアムスポンサーだけでも約40社)。天満屋(シドニー五輪マラソン代表の山口衛理を輩出した百貨店)をはじめ、地元を代表する企業が揃っています。

 去る2月には岡山駅徒歩2-3分の商業ビルに「フットサル・パーク」をオープンし、一般に貸し出す他に小学生と幼児向けのサッカースクールも始めました。指導するのはファジアーノの現役&元選手。雇用問題という点でも将来につながります。そして、駅前の大通りに面したビルの表壁には「ファジアーノ岡山始動」という大きな垂れ幕。東京駅前の丸ビルの壁に吊るしてあるようなものです(写真)。サッカーに興味がない人へのPRという点で抜群です。また、フットサル・パーク受付はファジアーノのオフィシャルショップを兼ねていて、例えば女性用のカジュアルTシャツもあるなど、地域リーグ所属クラブとしてはグッズ数が充実しています。クレジットカード機能つきファンクラブカードもあります。

 今回、訪れた時にはコンビニのサークルK・サンクスが期間限定(6月26日から7月9日)ながら、“ファジアーノ岡山応援ランチ”を販売していました。メニューは3種類で、「カツ(勝つ)サンド」(290円)、「チキンカツ(勝つ)プレート」(ドライカレー風、520円)、「11(イレブン)ボックス」(360円。おにぎり弁当=おかずも含めると11種類)。弁当販売コーナーには小さいながらもTVモニターがあり、ファジアーノのPRが音声付きで、流れていました。これまた、PR効果は抜群です。また、弁当も好評のようで、僕は2店目で唯一残っていた「11ボックス」を買いました。

 佐川急便戦でのスタジアム演出(運営)にも熱意を感じました。キックオフは18時。昼間にはサッカースクールの生徒を集めた大会を実施。試合観戦ファンが集まり始めると、ゴール裏の大型ビジョンを使って、準加盟申請のためにJリーグを訪れた際の映像の他、「岡山大学感謝デー」と銘打って、同大学の紹介ビデオが放映されました。スタンド裏でビラを配ったり、チームへの募金をつのるスタッフに対して、木村代表が「ただ、ビラをどうぞじゃなくて、趣旨を説明してから、お願いしますと言うように」などと指示している点も印象的でした。

 チームの強さを喜ぶ暇もなく、クラブ全体の整備のために必死に動き、強さだけではない「顧客満足度」を追求しているという感じです。現状ではユースなど下部組織がない点など、Jリーグ昇格に向けてクリアしなければならない課題は多々ありますが、だからこそ、今後の動向は注目です。

「Jを目指すクラブ」には、大企業誘致、あるいは世界陸上など短期的大イベント開催ではなしえない「地域活性化」が可能だと思います。自分たちの力で作り上げていくプロセス自体が貴重な「地方文化」ではないでしょうか。

 

▼ファジアーノ応援グッズや佐川急便中国戦の写真は↓
最新NEWS

今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL

FC岐阜 0-0 アローズ北陸 
横河武蔵野FC 1-0 アルテ高崎 
ロッソ熊本 3-2 ガイナーレ鳥取 
栃木SC 0-0 ソニー仙台
佐川急便SC 3-2 FC刈谷

首位=佐川急便SC(勝ち点45)、2位=ロッソ熊本(同43)、3位=FC岐阜(同37)、4位=YKK AP(35)、9位=栃木SC(同26)、18位=アルテ高崎(最下位、同5)

 FC岐阜は前期のアウェーに続き、アローズ戦2引き分け。栃木SCは柱谷幸一監督就任後の初ホームを勝利で飾れず。10節から6分け4敗で9位に後退。Jリーグ昇格圏内の4位との勝ち点差は9。次節(14日)、アウェーのアローズ北陸(7位)戦は注目!


●北信越リーグ
7月8日 13節
1部リーグ

JSC 1-2 長野パルセイロ 
松本山雅FC 2-1 ツエーゲン金沢
フェルヴォローザ石川・白山 4-1 上田ジェンシャン
ヴァリエンテ富山 1-1 新潟経営大学

 首位=松本山雅(勝ち点30)、2位=JSC(勝ち点28)、3位=長野パルセイロ(同28、得失点差)、4位=ツエーゲン(同27、得失点差)、5位=フェルヴォ(同24)、6位=ヴァリエンテ(同7)

 最終節(7月22日)はJSC対山雅、長野対ツエーゲン。13節終了時点での得失点差は山雅=32(総得点45)、JSC=24(同35)、長野=14(同31)。勝ち点、得失点差ともに並んだ場合は総得点で上回るチームの優勝となるため、微かながらも長野優勝の可能性が残されている。長野の優勝条件は以下の通り。
・山雅が引き分けた場合、長野が18点差をつけてツエーゲンに勝てば、長野が総得点で上回る。
・JSCが勝った場合、JSC対山雅の得点差プラス10の差をつけて長野が勝てば、総得点で上回る。例えばJSC対山雅が1-0の場合は、11対0。
・つまり、JSCと引き分けても山雅優勝となる可能性が高い。

2部リーグ

テイヘンズ 0-0 グランセナ新潟 
丸岡フェニックス 2-0 サウルコス福井
アンテロープ塩尻 1-3 CUPS新潟

 首位=グランセナ(勝ち点28)、2位=サウルコス(同25)、3位=アンテロープ(同22)。最終節(22日)は、グランセナ新潟対丸岡フェニックス(6位)、テイヘンズ(7位)対サウルコス福井、富山新庄クラブ(8位)対アンテロープ塩尻。13節終了時点での得失点差は、グランセナ=17(総得点25)、サウルコス=11(同26)

●関西リーグ
7月7日 12節
三洋電機洲本 1-6 バンディオンセ神戸
神戸FC1970 1-2 FC Mi-OびわこKusatsu

 首位バンディと、2位Mi-Oの勝ち点差は2。Mi-Oホームの直接対決(7月22日)まで、優勝争いはもつれこむか?

●九州リーグ
7月8日 15節
V・ファーレン長崎 8-1 三菱重工長崎
ニューウェーブ北九州 3-0 沖縄かりゆしFC

 首位=NW北九州(勝ち点37)、2位=ホンダロック(同36)、3位=V・ファーレン長崎(同35)。今後の注目カードは、8月12日、V・ファーレン長崎対NW北九州


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