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Jを目指せ! by 木次成夫

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第29回 JFL後期4節 FC岐阜対栃木SC“J準加盟対決”
by 木次成夫

 JFLは18チーム×2回戦総当り、1チーム当たり合計34試合の長丁場です。岐阜、栃木ともに好調なスタートを切りながらも、不調に陥っていました。第8節(4月29日)、栃木ホームの直接対決時点では、岐阜=6勝1分け、栃木=5勝2分けだったのですが、後期3節終了時点で岐阜は首位と勝ち点差11の3位、栃木は同22の10位。Jリーグ昇格圏は「4位以内」ですから、栃木は危機的状況です。

 また、岐阜は前期17節から松永英機・新監督(17節時はヘッドコーチ)が、栃木は後期1節から柱谷幸一・新監督が指揮をとっていますが、ともに良い結果を出せていません。

 キックオフは7月21日、土曜日19時。観衆は3865人(公式発表)。うち約100人が栃木ファンでした。アジアカップ日本対オーストラリアのTV放映時間と重なることを考慮すれば、上々だと思います。

 スタンド裏の売店では、森山泰行選手兼コーチの愛称をとった名物“ゴリサンド”(なぜか、トルコのケバブ系サンド詳細はこちら)をはじめ、タコ焼き、焼きそばなど定番のほか、「各務原(カガミハラ)キムチ」、「飛騨牛の串焼き」などもありました。ちなみに、各務原は岐阜の隣の市で、「各務原キムチ」は近年登場した“地元名産”です。すでに同味のカルビー・ポテトチップもあります(写真)。

 ピッチ脇には約30社のスポンサー看板が並び、スポンサー提供の抽選プレセントも充実していました。開幕前にクラブの経営危機が問題になりましたが、徐々に支援は高まっているようです。“スタジアム食”に地元らしさがあるのは、アウェーファンにとっても嬉しいことではないでしょうか。

 ところが、結果はアウェーの栃木が0-2で勝利。前半18分に、7月から加入したMF米田兼一郎(京都からのレンタル)が先制して、36分に左SBの片野寛理が追加点。2点とも、きっかけは岐阜の集中力を欠いたプレーでしたが、信じられないほど精度の高いシュートだった点は驚きでした。「足に魂こめました」という感じです。

 雨の後ゆえにピッチコンディションが多少悪かったことも影響したのでしょうか、岐阜の出来は良くなかったです。安易なクリア、集中力を欠いたポジショニング、ひとりよがりの攻撃、単調なクロスなど質の低いプレーの連続で、チームになっていませんでした。

 首位を争っていた当時の岐阜は、組織力と集中力で粘って、ボールをつないで、競り勝つのが持ち味でした。13節終了時点で24得点(リーグ9位)、14失点(最小失点)。11勝のうち7試合が1-0です。結果だけ見ると、守備的なサッカーをイメージするかもしれませんが、逆です。自分たちで攻撃を構築して、相手陣内のサイド、それも深いところまで切り込むプレーが武器のひとつでした。攻撃的でありながら、自分たちのゴールから最も遠い位置で勝負をしかける点で失点のリスクの少ないサッカーともいえます。

 松永英機監督が指揮をとって以降、1勝3敗1分け。順位は「Jリーグ昇格圏外」の5位に落ちました。松永監督はJリーグ・チームを指導できるS級ライセンス保持者です。戸塚・前監督は“S級”を持っていませんでしたから、岐阜が監督交代を決断したのはJリーグ昇格以降のことも考慮してのことでしょう。ですが、栃木戦では、どんなサッカーを志向しているかすら、見えませんでした。

 対する栃木は、12試合ぶりの勝利(柱谷監督就任後初勝利)を達成しました。監督交代、選手補強などの成果が出たともいえますが、“ドタバタ”の運営に疑問も感じます。

 JFL8シーズン目の今季、栃木は山下芳輝(前・柏など)ら積極的な補強をしました。その一方で、監督は現役時代を含めて今季が22年目の高橋高氏(中学教諭)。アマチュア選手のほうが多いこともあり、練習は平日夜間。「理想と現実」を考慮した上で、予算の範囲内でのベストの選択をしたと思っていました。ところが……、

6月4日、FW上野優作(前・広島など)加入発表
6月11日の週から平日昼間練習も導入
6月19日、高橋監督辞任発表
6月24日、柱谷幸一監督就任発表
7月1日、5人のアマチュア所属選手とのプロ契約発表
7月2日、MF米田兼一郎(京都からのレンタル)加入発表
7月23日、FW小田昇(京都からのレンタル)加入発表

 こうした策が結果的に“後手に回った”となるか、危機的状況を考慮した“迅速な改善策が功を奏した”となるかは今後しだいですが……。

 柱谷・新監督は高橋・前監督の国士舘大学時代の先輩にあたります。学生時代から日本代表に選ばれ、日産自動車(現・横浜Fマリノス)では「プロとアマチュアの混在」という「Jリーグへの過渡期」を経験しました。その後、浦和レッズ、柏レイソルでプレーし、現役引退後はモンテディオ山形、京都サンガを率いた実績があります。

 岐阜戦は「キープのできるツートップを基点に展開する」という柱谷監督の狙い通りでした。ロッソ戦を見た際は理論上正しい(かもしれない)反面、選手の能力が追いつかないサッカーをしていると感じましたが、今回の岐阜戦では攻守のバランスという点で改善しているという印象を受けました。地元・真岡高校出身のスター、上野が主将としてチームを引っ張っている点も、新たな魅力だと思います。

 柱谷監督は現状を「いつかは通らなければいけない道」といいます。また、J1の強豪のように一応完成されたクラブの監督に比べると「いろいろやらなければいけない点で大変だけど、だからこそ面白い面もある。(自分は)外から来た人間だからこそ、いろいろ言える」と――。14節を終えて、4位との勝ち点差8の9位。8引き分けのうち、6試合は得点を入れている事実にも、挽回の可能性を感じます。


今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL
後期4節(21、22日)
FC岐阜 0-2 栃木SC
ロッソ熊本 1-1 ソニー仙台
YKK AP 2-1 アルテ高崎

首位=佐川急便SC(勝ち点51)、2位=ロッソ熊本(同47)、3位=YKK AP(同38)、4位=横河武蔵野FC(同37)、FC岐阜(同37=得失点差)、9位=栃木SC(同29)、18位=アルテ高崎(最下位、同5)
次節の注目カードは栃木SC対横川武蔵野FC(28日)、佐川印刷対岐阜(29日)

●北信越リーグ
22日に予定されていた最終節は地震の関係で9月9日に延期

●関西リーグ
14節=最終節(22日)
FC Mi-OびわこKusatsu 0-2 バンディオンセ神戸 
優勝=バンディ(13勝1敗=勝ち点39)、2位=Mi-O(10勝2分け2敗=同32)。今後の注目は、Mi-Oにとって「第2のチャンス」であり「今季最後のチャンス」、全国社会人選手権関西予選(7月29日、8月5日)

<写真>各務原キムチ味のポテトチップス

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