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Jを目指せ! by 木次成夫

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第33回 JFL後期8節 FC岐阜対ロッソ熊本
by 木次成夫

 8月21日、Jリーグ理事会でファジアーノ岡山(中国リーグ)の「Jリーグ準加盟」が承認されました。ロッソ熊本、栃木SC、ガイナーレ鳥取、FC岐阜に続き、5番目の「準加盟クラブ」になりました。クラブ運営会社の代表取締役、木村正明氏は申請に関して、「来季に向けた選手契約を早めに進めるためにも、今年中に準加盟したい」と言っていましたが、目論見通りになったわけです。ファジアーノは現在、中国リーグ1位。すでに2位以内が確定しているため、地域リーグ決勝大会出場が決まっています。

 さて、今回はFC岐阜対ロッソ熊本の「Jリーグ準加盟」対決です。8月19日、岐阜・長良川競技場には7688人(公式発表)もの観客が集まりました。第2節の今季初ホーム、対アルテ高崎戦の5082人を、はるかに上回る今季最高数です。

 後期7節終了時点で、ロッソは勝ち点53の2位、岐阜は同42の3位。ロッソと首位、佐川急便との勝ち点差は5。岐阜と5位のアロー北陸との勝ち点差は、わずかに1。つまり、他力本願ながら優勝の可能性も十分にあるロッソに比べて、岐阜はJリーグ昇格圏の「4位以内」確保に必死という状況でした。

 ロッソ、岐阜ともにスタメン中、元Jリーガー10人。フィジカル面で勝るロッソに岐阜は闘志溢れるプレーで対抗。序盤から「J準加盟対決」にふさわしい白熱した展開でした。

前半20分。ロッソの斉藤紀由(前・アルテ高崎)が直接FKを決めて先制。

前半44分。岐阜がPKを得て、小島宏美(元・G大阪など)が得点。岐阜にとってはラッキー、ロッソにとっては不可解な判定でした。

後半2分。岐阜の吉田康弘(元・鹿島など)とロッソの有村光史(前・V神戸)が2枚目のイエローカードで退場。

後半44分。ロッソの山口武士(元・鹿島など)が2枚目のイエローカードで退場。

 結果は1-1で引き分け。吉田と有村が退場になって以降は、大雑把な試合になってしまいました。前半は、ロッソの池谷友良監督が「同じような立場のチームどうし。見ている人にとっても面白い試合だったと思う」と言うように、サッカーの醍醐味を感じさせる内容だったのですが……。

 PKはセットプレー時にロッソ選手が岐阜選手を倒したプレーに対する判定でした。厳密にいえばファールですが、ボールにからんだプレーは二アサイドで、ファールをとられたプレーはファーサイド。つまり、ボールに関わっていません。「審判には判定の基準を明確にしてほしいと抗議しました。あのプレーがファールになるなら、セットプレー時の対応のほとんどがファールになってしまう」(池谷監督)。

 池谷監督の言う通りだと思いつつ、JFLの難しさも感じました。審判の能力と経験値が、元Jリーガーら選手たちの激しいプレーに追いついていないのです。PKの判定後、ロッソのMF喜名哲裕(前・東京V)は「俺たちは生活がかかっているんだよ」と何度も審判に叫んでいました。熱い思いを感じると同時に、審判も“辛いだろう”と、思いました。多くのアマチュア審判が頑張っているからこそ、日本サッカーは成立しているのですから。

 また、この試合に関して言えば、選手たちの執拗な抗議が審判のメンタル面に悪影響を与えてしまったのでしょう。また、判定に対して、選手もイラついたのでしょう。もともとロッソは荒っぽいプレーが目立つチームですが、退場者が続出するほどダーティな試合ではありませんでした。例えば有村の2枚目のイエローカードは「侮辱」に対するもの。つまり、ロッソは自滅したともいえます。

 この試合の結果、岐阜は4位に降格。5位のアローズ北陸との勝ち点差は1のまま。「勝とうという気持ちが引き分けにつながった」(森山泰行)とは思いますが、岐阜のメンバーを見て、喜ぶべきか嘆くべきか、微妙な気分でした。前期ほとんど出番がなかった森山泰行(38歳)とボランチ吉田康弘(38歳)はじめ、昨季とほぼ同じ顔ぶれだったからです。スタメンで新加入選手はCBの深津康太(23歳、前・柏)だけ。後半には、負傷した小峯隆幸(33歳、元・FC東京など)に変わって選手兼コーチの伊藤哲也(36歳、前・大分)も出場しました。ベテラン勢の老獪なプレーは感動的でしたが……。

「強いだけじゃなくて、魅力のあるチームになることが重要。俺らベテランが出ていることは必ずしも良くない。上(J2)にあがって、(やがて、ベテランが去った)後に何も残らない、では意味がない」(森山泰行)

 JFLは、残り9試合。目先のJ2昇格だけでなく、クラブの将来にためにも、若手、中堅の奮起に期待したいところです。

 ところで、サッカー以外に目を向けると、FC岐阜は着実に進化しています。

 5月には大垣、中津川で試合をしました。観衆はともに2000人あまり。観客数が伸びない点に不安を感じたのですが、森山泰行いわく「うち(FC岐阜)は、いわば全県区だから」。つまり、岐阜市内以外にPRをすることも重要だというわけです。

 メイン・ホームの長良川競技場を離れたのには、もうひとつ理由がありました。芝(ピッチ)整備のためです。開幕当初はデコボコな上に、昔懐かしの“茶色い”ピッチでしたが、今や「日本標準」になりました。

整備の合間に、県内PR。そして、観客増。作戦大成功です。

栃木戦でも触れた「スタンド裏」では、定番の「ゴリ・サンド」などの他に「ひるがの高原 にんじんだんご」という出店がありました。海抜900メートルの高原で生まれた自然食品だそうです。また、「ぎふデスティネーション・キャンペーン」という観光PRのブースが設置され、スタッフが宣伝チラシなどを配布していました。

 FC岐阜関係者に聞いたところ、毎試合出店している業者もあれば、スポットの業者もあるとか。いずれにせよ、人が多数集まる「FC岐阜の試合」を利用しようとする人(企業、団体)が増えているのは幸いです。

<写真説明>FC岐阜。森山泰行。3戦連続のスタメン


今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向

●JFL
後期8節(8月16、18、19日)

三菱水島FC 4-0 アルテ高崎
FC岐阜 1-1 ロッソ熊本
佐川急便対栃木SC=落雷のため中止

首位=佐川急便(勝ち点58)、2位=ロッソ熊本(同54)、3位=YKK AP(同44)、4位=FC岐阜(同43)、5位=アローズ北陸(同42)、6位=Honda FC(同38)、7位=横河武蔵野(同38、得失点差)、11位=栃木(同32=2試合未消化=暫定順位)、18位=アルテ高崎(最下位、同6)
*次節(後期9節)は9月8、9日開催予定。栃木SCは8月25日に未消化の第7節、YKK AP戦

●北信越リーグ所属クラブ 
全国社会人選手権北信越大会(8月17、18、19日)
1回戦(17日)
ヴァリンテ富山 0-6 ツエーゲン金沢
サウルコス福井 1-0 グランセナ新潟 

2回戦(18日)
松本山雅 2-0サウルコス福井
JSC(ジャパンサッカーカレッジ) 4-3 ツエーゲン金沢

3位決定戦(19日)
ツエーゲン金沢 4-0 サウルコス福井

決勝(19日)
松本山雅 3-1 JSC
*松本山雅(優勝)、JSC(準優勝)、ツエーゲン金沢(3位)の全社・出場決定

●九州リーグ所属クラブ 
九州社会人大会(8月18、19日=全社・九州予選)
1日目(18日)
V・ファーレン長崎 7-0 エストレーラ宮崎
2日目(19日)
V・ファーレン長崎 2-1 ヴォルカ鹿児島
*V・ファーレンの全社・出場決定

天皇杯福岡県予選1回戦(ベスト8=19日)
ニューウェーブ北九州 1-1(PK0-2)福岡大学
*NW痛恨の敗退! 

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