beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第40回 天皇杯3回戦 湘南対V・ファーレン長崎&「全国社会人選手権展望」編
by 木次成夫

 Jリーグの佳境で天皇杯どころではないということでしょうか、J2の上位4チームが敗れました。

札幌(1位)1-1(PK9-10)TDK(JFL14位)
東京V(2位)0-1 Honda FC(JFL7位)
京都(3位)0-1 明治大学
仙台(4位) 1-2 順天堂大学

 J2のチームはメンバーを大幅に入れ替えた末の敗戦。川崎に苦言を呈したJ幹部の方々が、なぜ天皇杯は問題視しないのか、疑問を感じます。というか、J幹部が口を出すこと自体、理解できません。サッカーの楽しみ方は人それぞれですし、そもそもチームを評価する主体は、お金を払って見る側=ファンだと思います。

 ただ、個人的には天皇杯よりもリーグ戦(J2昇格)の方が大事だと思っていません。結果的にJ1昇格を逃しても、目先の天皇杯で“カップ戦ならでは”の快挙を目指すチームがあるとすれば、そちらの方が好きです。

札幌(4177人=公式発表)
東京V(2428人)
京都(1663人)
仙台(6545人)

 J2チームのファンは、「今日は補欠メンバーだけど、それはそれで楽しそうだ。今後のリーグ戦を占う上でも控えの台頭は重要な問題だから」と期待しながら、スタジアムに足を運んだのでしょうか? だとすれば、幸いですが……。 

湘南ベルマーレ対V・ファーレン長崎
(平塚競技場1591人)

 湘南は9月29日のC大阪戦のスタメンのうち5人を温存しました。長崎にとっては、チーム発足史上最も格上との公式戦です(天皇杯初出場の昨年は1回戦で関西リーグ優勝のバンディオンセ神戸に敗退)。こういう対決が見られる(選手からすれば、できる)のは、1年に1回、天皇杯だけの魅力です。

 湘南は4-4-2で、長崎は3-5-2。試合は序盤から湘南ペースで進みました。坂本紘司を基点にした速いボール回しと、サイドを広く使った攻撃は、“さすがJ2”という感じ。実際に対戦してこそ、選手も観戦者もわかる差。トラップの角度、次のプレー選択までの時間、パスコースの微妙なズレなど、ひとつひとつのプレーの蓄積が結果的に大きな差になります。

 実力差を最も感じたのは、サイド深くまで切り込まれた際の長崎の対応でした。サイドのDFが開いて、空いたスペースにボランチが下がるのか、それともサイドMFが下がって4バックのようにスライドするのか。例えば湘南の右SB、山口貴弘がオーバラップした際、長崎の左DF梶原公(20歳、大分からレンタル移籍)が、山口につくべきか、山口からのパスを受ける側になる(であろう)選手につくべきか戸惑っているようなシーンが散見しました。監督を含め、チーム全体の対応、修正意識の問題だと思います。

 結果は3-0で湘南が勝利。得点をあげたのは原竜太(前半20分)、石原直樹=後半0分交代出場(後半78分、89分)。ゴールシーンに限らず、キレ味の鋭さは、地域リーグとJ2の差を如実に感じさせてくれました。

 とはいえ、2点目を奪われるまでは、長崎が互角に試合を進めていた時間帯もありました。得意なカウンターの形がひとつでもあれば、結果はかわっていたかもしれないというのが、率直な印象です。正面から自分たちのサッカーで挑んだともいえますが、九州リーグの強豪ゆえに、格上との戦い方を知らなかった(この試合までは、知る必要もなかった)ともいえるでしょう。

 試合後、長崎の岩本文昭監督は「J2の湘南さんと、こんな綺麗なグラウンドで試合ができることに喜びを感じながら、トレーニングしてきました」と言いました。J2チームにとっては、やがては記憶から消える程度の1試合かもしれませんが、都道府県予選を戦うチームにとっては、J2と対戦できる3回戦に進出することは大きな夢であり、目標です。

 そういう観点でいえば、湘南の菅野将晃監督のメンバー選択と采配は絶妙でした。控えを試しつつ、完勝。長崎にとっても、自分たちの実力を知ったという点で「価値のある敗戦」だったと思います。全国社会人選手権(10月13日-17日)に向けて、気持ちを引き締める“きっかけ”にもなったでしょう。

全国社会人選手権

 各地域予選を勝ち抜いた31チームと、開催県の大分から1チーム、合計32チームが参加します。トーナメント形式で1回戦から決勝まで5日間連戦。1試合80分(40分ハーフ)とはいえ、過酷なスケジュールです。

 優勝チームは全国地域リーグ決勝大会(11月23日から)出場権を得ます。優勝チームが所属地域リーグで同大会出場権を得ている(今後、得る)場合は、全社・準優勝チームが出場権を得ます。つまり、所属地域リーグで全国地域リーグ決勝大会出場権を獲得できなかった(できない可能性のある)チームにとっては、JFL昇格に向けた“もうひとつのチャンス”です。

 昨年、長崎は同大会で初優勝。九州リーグ優勝(リーグ終了)後に開催されたため「比較的楽な気持ちで大会に臨めた」(チームの重鎮、原田武男)点も勝因でした。ところが、今季はリーグ進行中の上に、ホンダロック、ニューウェーブ北九州に次ぐ3位。残すは1試合(ホンダロックとNWは2試合)。地域リーグ決勝大会出場権獲得(2位以内)は上位2チームの“取りこぼし”しだい。つまり、昨年とはプレッシャーがまるで違う中で、全社・優勝を目指すわけです。

 以下、全社・展望。長崎にとっては厳しい組み分けになりました。

 1回戦の相手はT.F.S.C(関東7位)。2回戦で松本山雅(北信越優勝)、3回戦(ベスト8)ではツエーゲン金沢(北信越4位、天皇杯3回戦進出)と戦う可能性があります。

 「Jを目指す」他のクラブを見ると、FC Mi-OびわこKusatsu(関西2位)は1回戦でホンダロック(九州1位、昨季JFL最下位)と対戦。Mi-Oにとっては最悪の組み合わせです。この試合の勝者は2回戦で町田ゼルビア(関東優勝)と対戦する可能性があります。

 カマタマーレ讃岐(四国2位)は2回戦でニューウェーブ北九州(九州2位)と対戦する可能性があります。そして、3回戦は上記、町田ゼルビアのブロック勝者と対戦。

 そして、V・ファーレン(山雅、ツエーゲンなど)のブロックと、町田ゼルビア(カマタマーレ、NWなど)のブロック勝者が準決勝で対戦します。

 結果的に「Jを目指す」強豪の多くが上記ブロックに集まりました。その分、組み合わせに恵まれたのが、バンディオンセ神戸(関西優勝)です。まず、1回戦で沖縄かりゆしFC(九州6位、天皇杯進出)と対戦。3回戦でセントラル中国(中国2位)と対戦する可能性がありますが、普段の実力を発揮できれば、決勝進出の最有力候補です。

 ダークホースとして注目は図南SC群馬(群馬優勝)。1回戦でNECトーキン(東北2位)に勝てば、2回戦で南国高知FC(四国3位)とアイン食品(関西3位)の勝者と対戦。図南は群馬県リーグ所属ですが、天皇杯予選でアルテ高崎(JFL18位)に完勝した実力を発揮できれば、快進撃で準決勝も夢ではないと思います。

<写真説明>湘南FW永里源気と、長崎MF原田武男の攻防。そのほか写真はPhotoNEWSに掲載!


・今まで紹介したJを目指すクラブの動向

●天皇杯3回戦
福岡(6位) 4-2 栃木SC(JFL10位)
徳島(12位)2-0 FC岐阜(JFL4位)
水戸(13位)1-0 ツエーゲン金沢
佐川急便SC(JFL1位)4-0 バンディオンセ神戸

※本コラムは毎週火曜更新予定です

TOP