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Jを目指せ! by 木次成夫

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第42回 JFL後期11節 アルテ高崎対FC琉球「最下位決戦」
by 木次成夫

 Jリーグ同様、昇格&降格が気になる時期になりました。後期10節終了時点でアルテは4連敗中の18位=最下位(勝ち点6)。琉球は5連敗中の17位(勝ち点20)。アルテが敗れれば、“ほぼ”最下位が決まる状況でした。

 にもかかわらず、高崎市浜川競技場の観衆は、わずか265人(公式発表)。うち30-40人は琉球ファン。声を枯らして応援する“いわゆる”サポーターはアルテが半数以下。同じ時間に隣の前橋市では、J2のザスパ対愛媛戦(観衆3910人=公式発表)が開催されていました。ザスパ戦は地元TVで録画放映がありましたが、アルテ戦はありません。高崎(及び、その近郊)の方々はアルテに“ほぼ”興味がないようです。

2000年に活動を開始し、04年にJFLに昇格したものの、同年8位、05年8位、06年10位。元Jリーガーを積極的に集めて強化をしたり、大量解雇をしたり、長期的ビジョンが見えないという点が人気面でも低迷している理由でしょう。

 FC琉球は短期的強化で躍進した後に低迷している点で、アルテに似ています。クラブ発足は03年。翌04年に与那城ジョージ氏を監督として招聘。藤吉信次ら元Jリーガーを獲得するなど積極的な補強が実り、昨季JFLに昇格しました。

03年=沖縄県リーグ3部優勝。
04年=県サッカー協会の特例措置により“飛び級”で1部昇格。優勝
05年=九州リーグ2位(優勝はロッソ熊本)。全国地域リーグ決勝大会優勝
06年=JFL14位

「2位以内」を目標にしていたチームとしては「大失速」ですが、昨季のホーム試合平均観客数は3189人で、ロッソの3765人に次ぐ2位。サポーターはJFL「ベストサポーター賞」を受賞しました。

 今季は昨季以上に苦戦していますが、10節のホーム、ガイナーレ鳥取戦で観衆3478人(公式発表)を記録するなど、人気面は相対的に上々です。例えば同節、経営難が問題になっているFC岐阜(当時4位)はホームで“絶対に勝たなければいけない”YKK(同3位)と対戦しましたが、観衆2877人(公式発表)でした。

 琉球アウェーの試合には沖縄県在住ファンだけでなく、日本各地の沖縄出身者が集まるそうです。世代は様々。審判への抗議など“日本随一”といっても過言ではないほどの女性の「金切り声」も再三、聞こえました。観客総数が少ないためか、いまだかつて経験したことがないほどの迫力でした。

 そんな応援が選手を後押ししたのでしょうか、試合は1-2で琉球が逆転勝ち。アルテは24敗目(うち13試合は1点差の敗退)。良いリズムで試合を進めながらも、結果的に自滅してしまいました。

前半9分 1-0得点=アルテMF杉山琢也(24歳、前・岐阜=今季加入)
後半5分 琉球FW蒲原達也(24歳、前・鳥栖=今季加入)、2枚目のイエローカードで退場。
後半22分 1-1 得点=琉球MF秦賢二(26歳、前・名古屋=今季加入)
後半38分、アルテ主将、CB松本三四郎(23歳)、レッドカードで退場
後半43分、1-2 得点=琉球MF三原廣樹(29歳、前・札幌=2年目)

 アルテの2失点は、ともに“ちょっとした不用意な”プレーがきっかけでした。
「お前ら、90分間戦えないのかよ!」
アルテ・ファンの叫びが、悲しかったです。

 とはいえ、今後に向けて、アルテに好材料がなかったわけではありません。スタメン平均年齢は22.5歳。最年少は柏レイソルユース出身の田中靖大(19歳)でした。トップに昇格できずに、高校卒業後、北信越リーグのフェルヴォローザ石川・白山FCに加入。ところが同クラブは経営難のため、7月上旬に監督、選手ら全員と契約解除。先にアルテに移籍したフェルヴォの先輩、GK和田翔太の“ツテ”を辿って移籍し、「今は工場でバイトをしています」(田中)とのこと。琉球戦が初スタメンでしたが、溌剌とプレーしていたのが印象的でした。ちなみに、アルテは04年、天皇杯で柏に勝つ快挙を達成しています。当時、田中は高校1年生。後にアルテ入りするとは夢にも思っていなかったでしょう。

 いずれにせよ田中を含めて、再チャレンジしている若きチームを、是非、地元出身の福田首相、あるいは本社を高崎駅付近に建設予定のヤマダ電機の方々に見てほしいものです。昼間は地元で「タカサキ」と叫び、夜はTVで中村俊輔(同社のCF出演)を見るのも楽しいのではないでしょうか。

 また、琉球ファンを見て、「地域密着」はいうまでもなく、地元出身者との「密着」も大事だと改めて痛感しました。日本全国、就職や進学のために地元を離れる人が多い地方が多い中、地方出身者の“新たな楽しみ=Jを目指すクラブ”が地方活性化につながるとすれば、故郷を離れた人たちの“新たなコミュニティ”ができるとすれば……。将来的に、例えばアウェー・スケジュールに合わせて、スタジアムの周辺あるいは百貨店などで「沖縄県物産フェア」なども開催できれば、試合開催地クラブのファンにとっても、楽しい「文化」になると思います。

<写真説明>少数ながらも盛り上がるFC琉球ファン

・今まで紹介した「Jリーグを目指す」クラブの動向
JFL 後期11節(20、21日)
ロッソ熊本 1-1 Honda FC
ガイナーレ鳥取 1-1 FC刈谷
栃木SC 5-0 三菱水島FC
ジェフリーザブズ 1-2 FC岐阜
横河武蔵野FC 4-1 TDK SC
首位=佐川急便(勝ち点70)、2位=ロッソ(同55)、3位=アローズ北陸(同49)、4位=YKK AP(同48)、5位=岐阜(同47)、6位=Honda(同45)、7位=ジェフ(同45、得失点差)、8位=流通経済大学(同41)、9位=横河武蔵野(同41、得失点差)、10位=栃木(同39)、12位=鳥取(同34)、17位=琉球(同23)、18位=アルテ(同6)

※残り6試合。上位5チームの直接対決は岐阜対佐川急便(後期16節、11月25日)のみ。つまり、ロッソ以外のJ準加盟3クラブ(岐阜、栃木、鳥取)の「J昇格圏=4位」上昇は他力本願です。例えば、栃木は6連勝(勝ち点57)しても、YKK3勝1分け2敗(同58)で5位以下。厳しい状況です。では、地域リーグへの降格はどうかというと、「J昇格チーム数しだい」。昇格2チームの場合、入れ替え戦はナシ。昇格1チームの場合、最下位チームは地域リーグ決勝大会3位チームと入れ替え戦を行うことになります。ちなみにアルテは最終節=ホームで対岐阜戦。アルテにとっては、微妙な試合になるかもしれません。

東北リーグ2部南ブロック 21日=14節(最終節)
ビアンコーネ福島 5-1 マリソル松島
ペラーダ福島 13-0  クレハ
※優勝=ビアンコーネ(勝ち点40)、2位=ペラーダ(同37)。
10月28日、北南優勝決定戦(1部昇格チーム決定戦)ビアンコーネ対FC秋田カンビアーレ(北ブロック1位)

四国リーグ 21日=14節(最終節)
カマタマーレ讃岐 5-1南国高知FC
徳島ヴォルティス・アマ 12-0 徳島コンプリール
※優勝=ヴォルティス・アマ(勝ち点40)、2位=カマタマーレ(同37)、3位=南国高知
(同30)。カマタマーレの2連覇ならず。ヴォルティス・アマ初優勝。

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