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[大学選手権]PK戦制した筑波が「奇跡の」決勝進出!(流通経済大vs筑波大)

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[1.7 第57回全日本大学サッカー選手権準決勝 流通経済大 3-3(PK3-4) 筑波大 平塚]

 大学サッカー日本一の座をかけた第57回全日本大学選手権は7日、平塚競技場で準決勝を行った。準決勝第1試合では今年度の関東王者で初の決勝進出を目指す流通経済大と、9回目の優勝を狙う名門・筑波大(関東3)が激突。3-3でもつれ込んだPK戦を筑波大が4-3で制し、5年ぶりの決勝進出を決めた。筑波大は11日の決勝(国立)で中央大(関東4)と対戦する。

 普段は冷静な風間八宏監督(元日本代表MF)が珍しく拳を振り上げて喜んだ。ともに2人が外して迎えたPK戦6人目。先蹴りの流経大のキッカー・楠瀬章仁(4年=高知小津高、神戸加入内定)の左足シュートを、筑波大の守護神・碓井健平(3年=藤枝東高)が左へ飛んでストップ。相手の2人目に続き再びシュートを止めた守護神の渾身のビッグセーブで優位に立った筑波大は、6人目・MF大塚翔太(3年=大津高)がゴール左隅へとシュートを突き刺し、試合の決着をつける。その瞬間、選手たちが指揮官、ベンチの控え選手とスタッフに向けて一斉に駆け寄り、喜びを爆発させた。

 勝ち上がるたびに「奇跡が起きた」と笑いながら話す指揮官だが、この日は本当に「奇跡」が起きた。流経大が名古屋加入内定のMF平木良樹(4年=流通経済大柏高)らJ内定者9人で、筑波大が清水加入内定のFW木島悠(4年=滝川二高)ら同5人というタレント揃いの注目の一戦。今季の対戦では6-5(筑波勝利)、4-4という壮絶な点の取り合いを演じている両チームの戦いは、この日も激しい点の取り合いとなった。

 前半29分に先制した筑波大だったものの、後半開始からの8分間に流経大FW船山貴之(3年=柏U-18)に2発を浴び逆転を許す。19分に木島のゴールで一時同点に追いついたが、その2分後に再び勝ち越されるという苦しい展開だった。そして1点ビハインドのまま試合は後半ロスタイムへ突入した。
 運動量の落ちた筑波大に対し、集中力も落ちない流経大。ロスタイム表示の3分が過ぎ、試合は決まったかと思われた。だが筑波大はあきらめない。ラストプレーで右サイドのハーフエーライン付近にいたMF小澤司(2年=桐蔭学園高)からゴール前へ放り込まれたボールは、相手DFに弾かれたものの拾った大塚が右足シュート。このこぼれ球に反応した野本が右足を振りぬくと、シュートはゴールへと突き刺さった。
 「点取るしかなかった。(ゴールは)たまたま。キレイすぎて自分でも驚いた」と振り返った野本のゴールで蘇った筑波大。延長戦では押し込まれ、PK戦では2人が外しながらも、「(90分間で)3失点して納得していなかった。PKで取り戻そうと思っていた」と言う碓井が意地の好守でチームを救った。

 昨年度は関東1部で1部残留ギリギリの10位。最終節に1部残留を決めたが、2部に降格してもおかしくなかった。一昨年も関東1部で9位と苦しんだ。野本主将は昨年までを「個人が、勝てない理由をチームに逃げていたりしていた」と振り返る。だがチームは風間監督就任1年目の今季、たくましく変わった。関東1部リーグでは、最終節までもつれた大学選手権出場権争いを制して全国進出。そして全国大会でも厳しい戦いを乗り越えて決勝までたどりついた。風間監督は「1人1人がたくましくなって、どんな状況でも判断できて、相手が変化してきても対応できる大人のサッカーができるようになった。(今日は)以前なら負けているような展開だが、(自信がついて)あきらめなくなった」と成長に目を細めた。

 碓井は「昨年(リーグ戦はギリギリの1部残留だったが)、早稲田と法政の決勝を国立のスタンドから見て、来年こそはという気持ちを持っていた。決勝はその国立。優勝を勝ち取りたい」。11日、1年で劇的に変わった筑波大が、9度目の王座をかけて中央大との“国立決戦”に挑む。

<写真>PK戦を制した筑波大イレブンが喜びを爆発
(取材・文 吉田太郎)

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