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[高校選手権]“得点王”山本、涙。ルーテル学院は国立に戻れず

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[1.5 高校選手権準々決勝 ルーテル学院0-1山梨学院大付 駒場]

 聖地に戻ることはできなかった。国立での開幕戦で強豪の帝京を下し、一躍注目を集めたルーテル学院(熊本)。再び国立のピッチに立てる4強入りを目標に戦っていたが、初出場の山梨学院大付にストップをかけられた。

 「ほんとに悔しいです。自分が決定機を決められなかった。それが負けた原因です」

 主将でエースのFW山本大貴(3年)が涙を浮かべて、反省を口にした。ここまで3戦連発の5得点で得点王だったが、不発に終わった。本人が悔しがったのは、0-1の後半32分だった。ゴール右でスルーパスに抜け出し突進した。角度はあまりなかったが、右足を振り抜いた。しかし、無情にもゴールはサイドネットへ。同点に追いつく機会を逃した。非常に決めるのが難しいシュートだが、エースは責任を背負い込んだ。

 実は右脇腹を痛めていた。九州対決となった3回戦の日章学園(宮崎)戦で負傷した。激しいマークに合い、いつの間にか痛めていたという。小野秀二郎監督も「プレーの精度を欠いていた。バランスが良くなかった」とかばった。とはいえ、この日はチームの全4本のシュートのうち、3本は山本が放っている。今大会5得点は準々決勝を終えて、単独得点王をキープしている(各・靴燭海箸牢岼磴い覆ぁ・n

 では敗因は何だったのか。小野監督は「スペースがあって、いつものうちのサッカーができていた。(パスが回せた)前半のうちに点が取れていれば。勝負のあやというのは、こういうもの。ボールが回せたので、余裕を持ちすぎてしまったのかもしれない」と分析した。

 これまでは相手にがっちり守られることが多かったが、山梨学院大付が攻撃サッカーを展開したことで、逆にスペースが生まれ、ルーテル学院も持ち味の攻撃サッカーを展開できたという。速いプレスから、目指していたパスサッカーができた。指揮官はそれが“落とし穴”だったという。

 前半、ゴールが奪えず焦りが生まれ、バイタルエリアで正確性を欠いた。右サイドのFW伊藤卓(1年)が前半に接触プレーで後頭部を2cm切る裂傷を負った不運もあり、“最後の部分”での攻撃がうまく機能しなかったようだ。そんな中、後半5分にDF藤巻謙(3年)に強烈なミドルシュートを決められた。「美しいシュート。(ルーテル学院が想定していない)計算を度外視したシュートだった。あれがすべて。あれがうちにはなかった」と小野監督は嘆いた。

 それでもチーム最高の8強の結果は残した。小野監督は「新たな歴史が作られた。選手たちはよく頑張った」とイレブンをたたえた。山本は卒業後、駒大に進学することが決まっている。「きょうは平常心でプレーできなかった。あせりがあったり、堅かった。それに体が弱いと感じた。体を強くして、大学で頑張りたい」と“久保2世”ともいわれたエースは、さらなる成長を誓っていた。

<写真>ルーテル学院FW山本
(取材・文 近藤安弘)

特設:高校サッカー選手権2009

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