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[総体]「粘りの」武南が大阪桐蔭も突破し、初V王手!!

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[8.3 全国高校総体準決勝 武南1-1(PK3-0)大阪桐蔭 松本平広域公園総合球技場]

 平成24年度全国高校総合体育大会「2012北信越かがやき総体」サッカー競技(長野)は3日、準決勝を行い、24年ぶりの4強進出を果たした武南(埼玉2)と初めて4強へ勝ち上がった大阪桐蔭(大阪1)との一戦は、1-1で突入したPK戦を武南が3-0で制し、初優勝へ王手を懸けた。

 主将のMF佐藤仁紀(3年)は「武南サッカーの粘りとか気持ちの部分は出せた」と胸を張り、大山照人監督は「ダメになりそうなところを、素直に取り組んでいるところで保っている。今年は切れ味も怖さもない。いつもやりたいことが今年はできないので、粘り強くやらないといけない」。ずば抜けたタレントは不在。決して力で相手を圧倒するチームではない。ただ主導権を握ることができなくても、相手の良さを出させずに粘って勝ちを拾っていく。青森山田(青森)、桐光学園(神奈川1)など強豪を沈めてきた武南の粘りが、近畿選手権優勝の大阪桐蔭をもわずかに上回る武器となった。

 大山監督も「格は向こうの方が上」と語っていたが、技術の高さを武器に前評判通りの強さを発揮してきた大阪桐蔭は正確なポゼッションからリズムをつくってくる。だが、試合は立ち上りから武南が相手をプッシュ。素早く、厳しいプレッシャーで相手ボールを引っ掛けるとセカンドボールも拾い、スピードのあるMF奥村宣彦(2年)や右SB高橋貴大(3年)らのサイド攻撃で相手陣内で試合を続けた。

 ただ大阪桐蔭は一発で流れを自らへ引き寄せる。16分、MF西山秀祐(3年)からのパスを受けたMF松木政也(3年)が相手DFのスライディングタックルをかわして独走。飛び出してきたGKも個人技でかわすと、右足で先制ゴールを流し込んだ。大阪桐蔭はさらに19分にもディフェンスの背後を突くボールからFW臼井裕弥(3年)がPAへ侵入し、またMF白井康介やFW丹羽詩温(ともに3年)らがスピードと技術を活かして迫力のある攻撃を繰り広げた。

 だがこれまでの4試合同様、DF三浦柾人とDF相馬幸哉(3年)の両CB中心に粘り強い対応を見せる武南は、シュートを撃たせない。逆に前半終了間際は武南のオープン攻撃が効果を発揮。そして前半ロスタイム、中央のMF鈴木裕也(2年)の好パスから左サイドのスペースを突いたMF室崎雄斗(2年)が、角度のない位置からニアサイドへ左足シュートを叩き込んで同点に追いついた。
 
 武南は後半も相手にボールを支配される時間が長かったものの、佐藤主将が「抜かれても身体を張ってシュートを撃たせないという気持ちがある」と語ったように、要所を粘り強い守りで封じて勝ち越しゴールを許さなかった。勝ち越すこともできなかったが、根気強く試合を進めた武南は後半ロスタイムに1年生GK荒井文弥に代えて“PK戦要員”のGK毛利拓臣(2年)をピッチへ送り出す。1-1のまま突入したPK戦でその毛利は「最初のPKを止められればプレッシャーをかけることができる」という言葉通りに相手の1人目、白井のシュートを右へ跳んでストップ。これでプレッシャーのかかった大阪桐蔭は2人目、3人目が立て続けにシュートを失敗してしまう。最後は2-0から先攻・武南の4人目・奥村が決めて武南が3-0で勝利。埼玉県第2代表ながら決勝進出の切符を手に入れた。

 全国高校選手権優勝1回、準優勝1回の名門・武南も総体はこれが初の決勝進出。それも2月の埼玉県新人戦ではベスト16で敗れるなど、“史上最弱”のチームと言われた世代が成し遂げたのだから驚きだ。殊勲の毛利は「ここまで来たら優勝しかない」と言い切った。決勝(4日)では初出場の三浦学苑(神奈川)と対戦。佐藤主将は「三浦学苑もダークホースだと思うけれど、自分達も同じ立場。粘っていいゲームができるように頑張る」。偉大な先輩たちを越えた「粘り」の世代が、名門に初の夏の日本一をもたらす。

[写真]初の決勝進出を決め、喜びを爆発させる武南イレブン
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
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