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[天皇杯]え?まさかの幕切れで名古屋が決勝へ

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[12.29 天皇杯準決勝 名古屋1-1(PK5-3)清水 エコパ]

 地獄から天国へ。幕切れは意外な形で訪れた。1-1のまま突入したPK戦。4-3とリードした先攻の名古屋グランパスは5人目が決めれば勝ちという状況で、FW杉本恵太のキックはクロスバーを直撃した。

 「バーに当たってガクッとなった」とひざを落としかけた杉本の前に信じられない光景が広がった。クロスバーに弾かれたボールはジャンプしていたGK山本海人の背中に当たり、再びゴール方向に跳ね返る。そのままゴールネットに吸い込まれたボールを見届け、杉本は丸めかけた背中を伸ばし、歓喜のダッシュだ。

 「一瞬でいろんな気持ちを味わった」と苦笑いした杉本の周りには歓喜の輪が広がり、チームメイトが茶化した。「危ない、危ない、危ない…でも入ったーー!」。試合直後も、ロッカールームに戻っても、ムードメーカーの周囲は笑いが絶えなかった。

 延長後半12分のFW岡崎慎司のシュートなど再三の好セーブを見せていたGK楢崎正剛も「紙一重でしょ。最後、あんなことで終わるなんて」と苦笑い。守護神を中心に劣勢の展開を耐え、シュート23本を1失点に食い止めた気迫が最後に運をも呼び寄せた。

 ストイコビッチ監督は「キャリアの中で信じられないプレーはいろいろ見てきた。誰かからのプレゼントという形に見えるかもしれないが、我々のやってきたことが実った結果で、努力が報われたと思う」と胸を張った。

 清水のGK山本海は「背中のど真ん中に当たった」と悔しそうに振り返った。「バーに当たった音は聞こえても、どこに来るかは分からない。後ろは見えないので。(ジャンプした体が)落ちる前に(背中に)当たったと思うし、よけることもできない」

 クロスバーに跳ね返ったボールがGKの体に当たってゴールに入っても得点になるのか? 山本海は「抗議しようとかとも思ったけど、審判を見たら“終わりだよ”っていう感じで、“しょうがないね”って」とうなだれた。PK戦では『ボールが完全にゴールに進めなくなるまでペナルティーキックの結果を待つ』という規則になっており、杉本のゴールは当然、有効。GKとしては悔やんでも悔やみ切れないが、敗戦を受け入れるしかなかった。

 昨年のナビスコ杯、今年のACLと阻まれてきた準決勝の壁をついに破った。ナビスコ杯準決勝は日本代表で、ACL準決勝は負傷でいずれも欠場していた楢崎にとっては、「自分が出てベスト4の壁を破る」と宣言していた通りの決勝進出。だが、「ターゲットは決勝じゃない。タイトルを取りたいし、その先にあるACLにもう一度チャレンジしたい。次負ければ、意味がなくなるし、切り替えていきたい」と、早くもG大阪との元日決戦を見据えていた。

<写真>勝利を喜ぶ名古屋イレブン
(取材・文 西山紘平)

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