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【連載】南アフリカへのサバイバル(7)DF岩政大樹(鹿島)

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 意識は常に主力組だ。練習でも紅白戦でも控え組に回ることが多いDF岩政大樹(鹿島)は2日のベネズエラ戦も出番がなかった。DF中澤佑二とDF田中マルクス闘莉王という不動のセンターバックが君臨する岡田ジャパン。この牙城を破るのは簡単なことではない。だが、2人のうちどちらかにアクシデントがあれば、一気に岩政がレギュラーに台頭する。

 3番手のセンターバックという複雑な立場にも、岩政は気持ちを切らすことなく、黙々と汗を流し続ける。「僕にとって意味があるのは、試合に出るかどうかではない。自分がいい準備ができるかどうかだから」。いつ、何があってもいいように準備をしておく。そして、いざという緊急事態に動じることなく、レギュラーを脅かすようなパフォーマンスを見せる。今はそのことだけを考えている。

 「試合に出る、出ないにかかわらず、コンディションをつくって、試合勘を戻す。それをしっかりやることがシーズンにつながっていくし、チーム内の評価を上げることにもなると思う」

 1月25日に始まった指宿合宿から東アジア選手権が終わる14日まで。約3週間の長期キャンプ中にアピールのチャンスはいくらでもある。昨年9月のオランダ遠征で約1年半ぶりに招集されるまでは、ひたすらクラブで自分の良さ、武器をアピールするしかなかった。だが、オランダ遠征以後、岡田ジャパンの常連になったことで心構えも変わった。

 「去年までとは違う。普段から代表の練習でコーチ陣にアピールもできるし、そうすれば少しずつ試合にも出させてもらえると思う。それを続けるだけ」。昨年10月10日のスコットランド戦で待望のA代表デビュー。その後もコンスタントに招集されているが、試合出場はない。昨年10月14日のトーゴ戦、11月18日の香港戦はベンチ外だった。それでも、気持ちが折れるどころか、W杯に向けモチベーションを高めている。

 「出場を決めるのは僕じゃない。ただ、試合に出る、出ないで自分の力は判断していない」。代表の一員としての自信と誇り。むやみに個をアピールする必要がなくなり、W杯に臨むチームの中で自分が今、何をすべきかということだけに集中している。

 指宿合宿中の1月30日には28歳の誕生日を迎えた。同日夜に開催された選手だけの食事会ではケーキも用意され、チームメイトから祝福された。「代表らしいお祝いをしてもらって、うれしかった」。岡田ジャパンに岩政あり。今の地位に満足しているわけではない。だが、こういう男が控えているからこそ、チームは成り立っている。

<写真>DF岩政大樹は緊急事態に備えて準備を怠っていない

(取材・文 西山紘平)

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