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【連載】南アフリカへのサバイバル(10)DF今野泰幸(F東京)

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[2.9 練習試合 日本代表10-0中央大]

 ライバルは自分-。CB、ボランチ、SBの控えとして岡田ジャパンの常連となっているDF今野泰幸(F東京)。器用で、デキるからこそ多くの役割を与えられているが、実際にどのポジションで勝負し、誰と生き残りを争うのか照準を絞りにくい立場にある。メンタルが弱い選手だと、焦りを感じてもおかしくないケースだが、今野はブレていない。

 「もちろん試合には出たいですし、それが目標ですけど、代表の中で練習できるだけでも幸せですから。ほんとにいい練習ができているし、自分はライバルが誰だとかは意識しないで、自分が成長することだけを考えてやってます。『ライバルは自分』というか、ぼくは自分のことを考えてプレーするようにしています」

 もちろん、控えでいいとは思っていない。レギュラーを奪い、先発でプレーしたい気持ちは強い。実際に他の選手と比較して、「闘莉王さんに、この部分は勝っているなとか、そういのは思ってやっている」と若年層から代表入りし、周囲からも才能を高く評価されている男だけに、プライドも持ち合わせる。

 だが、スタメンは監督が決めることだと割り切っている。試合に出られずにふてくされるよりも、日本代表のメンバーとしてチームに何ができるか、そして、自身がいかに成長できるか、そこを大事にし、一日一日を一生懸命過ごしている。「ポジションも、どこがいいとかはない。監督に求められているところでやれるように準備するだけ」と言い切る。

 この日の中央大戦ではそんな姿勢が報われた。3本目にはCBで先発し、守備だけでなく、つなぎのパスでも貢献した。ボランチに回った4本目では、持ち味のボール奪取に加え、サイドチェンジや縦パスで攻撃を司った。試合後、岡田武史監督は報道陣からボランチで起用された小笠原と稲本について質問されたが「ボランチはいっぱいいるし、いろんな組み合わせを試したいと思っていた。今日は今野も素晴らしかった」とあえて名前を挙げて絶賛したほどだった。

 W杯メンバー入りは、ジーコジャパン時代に続く2度目の挑戦となる。前回はジーコ監督の“序列”では後ろのほうで選から漏れたが、今回は当時より“前方”にいる。今度こそ、の思いはある。CBにしろ、ボランチにしろ、激戦区であることは間違いなく、岡田監督の“好み”もあり、レギュラーを奪うことは簡単ではないが、自分を信じて突き進む。

 「先のことは何も分からないですからね。考えてもしようがないし。(W杯が)確定している人はほとんどいないんで、最後までわからないと思っています。自分はやるしかないんで。W杯に向けて? 自分のいい面をもっともっと伸ばしたいし、ぼくは欲張りなんで、パスとかシュートとか、1対1とか、攻撃も守備も全部、高めたい」とあくなき向上心をのぞかせた。コツコツと着実に、前進あるのみ-。サバイバルは激しいが『ライバル』という己に打ち勝ち、メンバー入りを奪い取る。

(取材・文 近藤安弘)

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