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【連載】南アフリカへのサバイバル(11)MF香川真司(C大阪)

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 岡田武史監督の“秘蔵っ子”もサバイバルに必死だ。チーム最年少の20歳にして、すでに国際Aマッチ11試合に出場しているMF香川真司(C大阪)だが、10年に入って同年代のMF金崎夢生(名古屋)の台頭もあり、出番が減っている。

 2日のベネズエラ戦は金崎が後半30分から出場したのに対し、香川は残り6分間の出場にとどまった。指揮官の中での優先順位の低下。ベネズエラ戦後、東アジア選手権に向けて3選手が代表から外れた際も、「試合で結果を出してなかったので、不安は多少あった」と“生き残り”に安堵の表情を見せていた。しかし、6日の中国戦も出番なし(金崎は後半40分から出場)。危機感は強まるばかりだ。

 J1昇格の代償は大きかった。昨年9月から右足甲の痛みを押して強行出場を続けた。J2得点王としてJ1昇格の立役者となったが、昇格決定後の検査で右足第5中足骨の骨折が判明。昨年11月24日に手術も受けた。

 リハビリに専念したオフは海外移籍も模索し、オランダ、ドイツへ渡った。最終的にC大阪残留を決断したが、激動のオフもつかの間、1月25日から日本代表の鹿児島・指宿合宿が始まった。

 チーム全体でコンディションや試合勘が戻り切らない中、最も不安を抱えている選手のひとりでもある。試合が続くため、チームは軽めの練習が多く、控え組の選手はコンディション調整が難しい。

 「コンディションが最高潮じゃないのは間違いない。ケガをしていて、3、4ヵ月まともに練習できていなかった。もっと練習したいけど、試合が近いからメニューの負荷も上げられないし、難しさはある」と本人も認める。合宿中は練習のない午前中にランニングを行うなど精一杯の努力はしている。それでも、やはり限界はある。

 9日には中央大との練習試合が行われ、香川も50分間プレーした。昨季終盤はC大阪でも後半からの出場がほとんどで、指宿合宿中に行われた鹿屋体育大戦も30分間の出場。対外試合で50分間プレーしたのは、昨年9月23日の東京V戦以来、実に4ヵ月ぶりだった。

 「試合勘がなくて動けなかったり、リズムが合わなかったり、全然試合をやってなかったから疲れたけど、久々だったので、試合ができてよかった」。得点を奪うことはできなかったが、得意のドリブルで切れ込んでシュートを放つなど“らしい”シーンもあった。「最後は決まらなかったけど、あそこで仕掛けていく姿勢が大事だから」と、表情に明るさも戻ってきた。

 07年のU-20W杯、08年の北京五輪を“飛び級”で経験した香川は12年の北京五輪も出場資格がある。だが、「ロンドン五輪は今は意識していない。まずは今、練習して、成長して、W杯で活躍できるように頑張りたい」と目の前の毎日を全力でこなしている。1日も早くベストパフォーマンスを取り戻す。今は苦しくとも、あとは上向いていくだけだ。

<写真>MF香川真司はコンディションを戻そうと必死だ

(取材・文 西山紘平)
=この項終わり=

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