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【連載】南アへカウントダウン!(6)寿人はFWのプライドをチラリ。「代表はもうないと思っている」

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南アフリカW杯開幕まであと83日!
[3.20 J1第3節 湘南1-3広島 平塚]

 今年も佐藤寿人の得点感覚は健在だった。この日の湘南戦でも、DFラインとGKの間にうまく入り込んで2得点。3節を終えて3得点と暫定ながら得点ランクトップに躍り出た。例年通り、得点王争いを演じることは間違いなさそうだ。

 4月7日にはW杯メンバー選出前の最後の代表戦、セルビア戦(長居)がある。“アピールする”という思いが強いのかと思いきや、佐藤は日本代表のことは、考えていないと明言した。というよりも、日の丸に“呪縛”されたまま、プレーするのはやめたようだ。

 「代表のことは頭から切り離しています。もう、チームのためにやるだけです。1回(3月3日のバーレーン戦で)外されてるんで、可能性としては、代表はもうないかなと思っています」

 淡々とした口調だったが、言葉には複雑な心境がにじみ出ていた。「短い時間でも得点を獲れる選手」として、岡田監督から実力を再評価され、代表に定着した。しかし、東アジア選手権では、レギュラーFW陣の得点力不足が叫ばれた中、6年連続二桁得点という、日本人FWでは最多の記録を持つ佐藤が、先発に起用されることはなかった。中国戦に5分間、韓国戦に8分間、起用されただけで、3月3日のバーレーン戦から落選した。

 「海外組を呼びたいのも耳に入ってますし、そこらへんで、呼ばれてもチャンスがあったり、なかったり、(チャンスが)なくて外れてる選手は僕だけじゃないですけど、それは、どうなのかなっていうのは正直、ある」

 ストライカーとしてプライドをのぞかせた。岡田ジャパンのFWは、たしかに、得点という結果だけで評価されていない部分がある。得点王の前田も呼ばれていない状況だ。思い出すたびに、怒りや悔しさ、いらだちや起用法への疑問も出たが、悩むことはやめた。原点に立ち返ることにした。

 「代表のアピールのためにサッカーをやってるんじゃない。サンフレッチェのためにサッカーをやっている。代表を意識しすぎないで、クラブのために、もっともっと成長しなくちゃいけないと思っている。当然、W杯に出たいですけど、それに出られたら大きく人生が変わるわけじゃない。出られなくても、サッカー人生は続いていく。今はクラブでしっかり仕事をすることが大事だと思っている」

 まさに“無の境地”。いまは広島で結果を出すことだけに集中する。ゴールを重ねていけば、おのずと道は開けると信じている。仮に、W杯に選ばれなくても、それが自分の“絶対評価”でないこと佐藤は悟った。とにかく、ただゴールを-。そんな思いで自分のプレーに集中する。佐藤寿人はゴールで人生を変えてきた。これからもストライカーとしてのプライドを前面に、生きていく。

(取材・文 近藤安弘)
※今連載ではJリーグ取材時にW杯を目指す日本代表選手を取り上げていきます

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