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2得点のテセがマイクパフォ。「罪を償えたかなと思うけど、いかがでしょうか?」

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[4.4 J1第5節 川崎F2-1F東京 等々力]

 汚名返上の2発だった。3月23日のACLメルボルン・ビクトリー戦(ホーム、4-0勝利)に暴行で退場。その後のACL2試合の欠場が決まり、批判を浴びていた川崎フロンターレのFW鄭大世。試合後、拡声器を持ってゴール裏のサポーターに「ACLではしょっぱいことをしてしまいました。ちょっとは罪を償えたかなと思うけど、いかがでしょうか?」と呼びかけた。サポーターから大歓声で迎えられたストライカーからは、笑みがこぼれていた。

 「ACLで見苦しい姿を見せてしまったので、きょうは勝利に貢献したかった。ゴールを決められて、ほっとしました。チームの勝利に貢献できて、この上ない喜びです」

 ACLの分までJリーグで勝利に貢献したいと語っていたストライカーが、ついに魅せた。まずは前半21分だ。左サイドで黒津がクロス。これはDF森重がヘディングでクリアしたボールが、PA中央にいた鄭の前にこぼれる。胸トラップから右足を振り抜き先制弾。豪快な一撃だったが「力まずに打てた。今年は、シュートのときに力まないで、シュートを打つ前にゴールを見るという、練習をしてきたけど、それが出せた」とニンマリだ。

 そして2点目は技ありFKだった。後半16分、PA左で右足を一閃。グラウンダーの鋭い弾道で壁の足下を抜き、GK権田の右手を弾いてゴールネットに突き刺した。これも豪快な一撃だったが、本人は「ほんとは右上に蹴ろうと思ったけど、壁が(跳ぶための準備として膝が)沈んだから、足元かな」と瞬時の判断で蹴る方向を決めたことを明かした。

 3月23日のメルボル・ビクトリー戦での警告&退場で、ACL残り3戦のうち2試合の出場停止が決定した(詳細日程)。チームはリーグ戦はもちろん、昨季も8強で涙をのんだACL制覇も目指している。だが、GLは1勝3敗で敗退の危機に。鄭は退場行為を反省し、涙目で選手に謝罪した。そして、ACLに出られない分、Jリーグでの汚名返上を誓っていた。

 だが直後の3月27日のJリーグ・清水戦は無得点。思うようなプレーができずに自分に腹を立てた。チームメートは同31日のメルボルン・ビクトリー戦の遠征に向かったが、自身は国内に残り調整。この日は疲労がたまっている仲間のために、守備でも奮闘した。「もちろん、攻撃で引っ張ろうと思ったけど、守備の面でもいきたいと思っていた。いつもは前から行き過ぎてバテるけど、きょうはポイント、ポイントでチェイシングできた」と胸を張った。

 この日の2発でリーグ戦4得点とし、同じく北朝鮮代表の仙台MF梁勇基と並んで得点ランクトップに立った。「(FWだから)ランキングは意識はしないわけではないけど、今年は勝ちにつながるゴールを決めたいと思っている。今年はゴールを決めるだけでなく、周りを使って、周りにも取らせられる幅のあるFWを目指してるんで」とスコアも挙げて、アシストもできるFW像を理想に掲げた。まさに川崎Fのエース、ジュニーニョのような存在になることだ。

 中村憲剛が不在の中、チームをけん引する稲本潤一は、鄭の“汚名返上弾”について「1試合ではダメですね。1年を通してやってもらいたい」と注文を付けたが、続けて「この試合で一番気合いが入っていたのがテセ。そんな中で決められたというのはいいものを持っている素晴らしい選手だということ」と評価した。

 「稲本が1試合ではダメと? 自分でも、FWとして常にゴールを取りたいと思っている。今年はW杯があって、世界のDFと対峙することをイメージしてやっている。結果を出し続けたい」

 鄭大世は力強く言い切った。ACLでは苦境に立たされているが、リーグ戦は5試合で3勝1分け1敗の5位と、優勝を目指すチームとしてはまずまずのスタートを切った。依然、ジュニーニョ、中村憲剛の怪我人は戻ってこないが、メンタル面も成長させて、自身が人間ブルドーザーの異名のごとく牽引するつもりだ。

<写真>試合後にマイクパフォーマンスを行った川崎F・FW鄭大世
(取材・文 近藤安弘)

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