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"3度目"の0-1、埋まらない世界との差

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[6.19 W杯グループリーグE組 日本0-1オランダ ダーバンスタジアム]

 0-1の敗戦は、健闘とも、善戦とも言える微妙なスコアだ。特に格上相手に0-1なら「いいサッカーをした」と評価もされやすい。

 確かに、この日の前半はほぼ完璧な試合内容でオランダにチャンスらしいチャンスをつくらせなかった。唯一の失点はスナイデルの強烈なブレ球ミドル。フリーにさせてしまったとはいえ、相手のシュートをほめるべき失点だった。

 守備重視ではあるが、やろうとしているサッカーには規律があり、迷いもない。しかし、このサッカーで本当に世界で勝てるのかというと、やはり疑問は残る。

 オランダは明らかに後半開始からエンジンをかけてきた。そして失点。それ以降の時間帯は日本もチャンスをつくったとはいえ、1点をリードしたオランダがリスクを冒さず、慎重な試合運びを見せていたからとも言える。もし、オランダが先制点を決めていなかったら、後半立ち上がりのような防戦一方の展開がその後も続いていたかもしれない。

 それでも、耐えられた可能性はある。実際、14日のカメルーン戦はそうだった。粘り強く守り、ワンチャンスをものにする。しかし、そこに明確な勝利への道筋はなく、本田圭佑の決定力や川島永嗣のビッグセーブ次第という多分に運に頼った“賭け”だった。その賭けにカメルーン戦では勝ち、今日は敗れたのだ。

 後半32分から出場した玉田圭司は「確率的なものだけど、それで成功しているところもあるから。自分としては真っ向勝負したかったけど…」と話していた。これも選手の本音のひとつではある。もちろん、先発組と控え組では考えに差が出るのは仕方がない面もあるが、どちらが的を得ているのだろうか。

 岡田武史監督にとって、W杯での0-1敗戦は実に3度目のことになる。98年のフランス大会も守備的な戦い方で臨み、アルゼンチン、クロアチアに0-1で連敗した。

 当時と現在では状況は違うが、自分たちと世界との差を分析した結果、大会直前に守備重視の現実的なサッカーに転換したという流れは一緒だ。

 しかし、いくら理想を捨て、どんなに泥臭く戦っても、結果が出なければ意味がない。1点の差は1点の差。そこを埋めることができない限り、日本が本当の意味で世界に追い付くことにはならない。

 カメルーンには逆に1-0で勝つことができた。しかし、98年のアルゼンチン戦、クロアチア戦、そしてこの日のオランダ戦は0-1。勝率は4分の1=25%。この確率に頼るだけで、W杯のグループリーグを突破できるとは思えない。

 指揮官は「1点の差は日本がなかなか乗り越えられないひとつの壁だと思っている。差がなんだったのかは、日本のチーム全体の差だと思う。これが劣っていたからというものではない。ボール際であったり、ポゼッション率であったり、すべてのことを含んでいると思う」と話したが、その解決策は見えているのか。

 24日のデンマーク戦は1-0か0-1か。それとも、こうした「運」や「確率」を超えるサッカーができるのか。グループリーグ突破を懸けた一戦ということだけでなく、この2年半の成果、さらには今後の日本サッカーを見据えた意味ても重要な試合になるのは間違いない。

(取材・文 西山紘平)

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