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ビジャが執念の決勝点、スペインが60年ぶり4強

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[7.3 W杯準々決勝 パラグアイ0-1スペイン エリスパーク]

 W杯南アフリカ大会は3日、準々決勝2試合を行い、ベスト4が出そろった。ヨハネスブルクのエリスパークではパラグアイとスペインが対戦。スペインは後半38分、FWダビド・ビジャの決勝点で1-0と競り勝ち、50年大会以来、60年ぶりの4強入りを決めた。準決勝は6日にウルグアイ対オランダ、7日にドイツ対スペインが行われ、11日の決勝に進出する2チームが決定する。

 決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に日本を下したパラグアイはMFビクトル・カセレスが出場停止から先発に復帰。日本戦の激闘の影響か、先発6人を入れ替えた。システムは4-4-2で、GKフスト・ビジャル、4バックは右からダリオ・ベロン、パウロ・ダ・シルバ、アントリン・アルカラス、クラウディオ・モレル。中盤はカセレスとクリスティアン・リベロスがセンターで、右にエドガル・バレット、左にホナタン・サンタナが入り、ネルソン・バルデスオスカル・カルドソが2トップを組んだ。MFエンリケ・ベラ、FWロケ・サンタクルス、FWルーカス・バリオスはベンチスタートだった。

 スペインは4-2-3-1で、決勝トーナメント1回戦のポルトガル戦と同じ先発メンバーで臨んだ。GKイケル・カシージャス、4バックは右からセルヒオ・ラモスジェラール・ピケカルレス・プジョルホアン・カプデビラ。中盤はセルヒオ・ブスケツシャビ・アロンソのダブルボランチで、トップ下にシャビ・エルナンデス。右サイドにフェルナンド・トーレス、左サイドにアンドレス・イニエスタが入り、ダビド・ビジャが中央に位置した。

 試合はパラグアイが積極的な立ち上がりを見せた。高い位置からプレッシャーをかけ、スペインの出はなをくじくと、その後はじっくり組織的な守備を敷いて相手のパスサッカーを封じる。攻撃の意識も高く、前半1分、バレットのスルーパスからサンタナが際どいシュートを放つと、同8分にはスペインのバックパスにバルデスが詰め、GKのキックに体を当てるなどスペインをヒヤリとさせた。

 スペインはこれまで中央でプレーしてきたフェルナンド・トーレスが右サイドで先発。コンディションの上がり切らないエースをサイドに回し、ここまで4得点と好調なビジャをセンターに置いたが、なかなか攻撃が機能しない。結局、前半10分過ぎにはフェルナンド・トーレスが真ん中、左にビジャ、右にイニエスタという通常の形に戻した。

 前半26分には左サイドでボールを持ったビジャがドリブルで切れ込み、ゴールライン際をえぐって折り返したが、DFのクリアに遭う。同27分、カプデビラの縦パスを受けたシャビが鋭い反転からミドルシュート。しかし、これもゴール上へ。パラグアイの粘り強い体を張ったディフェンスの前に決定的なチャンスをつくれなかった。

 一方、パラグアイはカウンターからチャンスを伺う。前半35分には速攻でモレルが左サイドを駆け上がり、ピンポイントのアーリークロスを送るも、ゴール前のFWにはわずかに合わなかった。同41分、バレットの右クロスを受けたバルデスが右足でゴールネットを揺らすも、オフサイドの判定。ロスタイムにもカウンターからバルデスが決定的なシュートを放ったが、枠を捉え切れなかった。

 攻撃が空転するスペイン。前半40分過ぎにはビジャがセンターに移り、フェルナンド・トーレスが左サイドに回る。なんとかリズムをつかもうとするが、最後までかみ合わず、前半を0-0で終えた。

 後半7分にはシャビがボールキープ中に3人に囲まれてボールを奪われるなど、テンポよくパスを回せないスペインは後半11分、とうとうフェルナンド・トーレスを下げ、MFセスク・ファブレガスを投入。ビジャが中央に移り、セスクは右サイドに入った。ここからというところだったが、直後に思わぬ展開が待っていた。

 後半12分のパラグアイの左CK。バレットがゴール前に上げると、PA内でカルドソがピケに倒され、パラグアイがPKを獲得する。スペインにとっては絶体絶命のピンチだったが、カルドソのキックはGKカシージャスが見事にセーブし、ゴールを許さなかった。

 すると、直後の後半14分、今度はビジャがPA内でアルカラスに倒され、スペインがPKを獲得。キッカーはシャビ・アロンソ。いったんはゴール左に決めたが、蹴る前にスペインの選手がPA内に進入していたとして、やり直しとなる。2度目のキック。今度はゴール右を狙ったが、GKビジャルのセーブに阻まれた。

 約4分間に3回のPK。しかし、そのいずれもゴールとはならず、試合は0-0のまま激しさを増していく。パラグアイは後半19分にバレットに代えてMFエンリケ・ベラ、同28分にはバルデスに代えてFWロケ・サンタクルスを投入。スペインも同30分、シャビ・アロンソに代わってFWペドロ・ロドリゲスがピッチに入った。

 膠着状態の続く展開。その中で試合を決めたのは、やはりスペインの華麗なパス回し、卓越した個人技だった。後半38分、ワンタッチのパス交換からイニエスタが中央をドリブルで抜け出し、右サイドのペドロに展開。ペドロのシュートは左ポストに弾かれたが、跳ね返りをビジャが右足で狙う。シュートは右ポストの内側に当たり、今度は左ポストに当たってゴールマウスへ。ビジャの執念が乗り移ったかのようにボールはゴールラインを割り、スペインが先制点を奪った。

 後半39分、カセレスに代わってFWルーカス・バリオスを投入し、最後のカードを切るパラグアイ。同44分にはバリオスの強烈ミドルをGKが弾き、こぼれ球にサンタクルスが詰めたが、シュートはGKカシージャスが体を張って防ぐ。試合はそのまま1-0で終了。ビジャの今大会5点目となる決勝点を守り切ったスペインが、60年ぶりのベスト4進出を決めた。

<写真>ビジャの決勝弾に狂喜乱舞するスペイン選手たち。ビジャは一番下に埋もれています・・・

(取材・文 西山紘平)

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