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運も呼び込む勝負強さ、枝村「普通に打ちたかったけど…」

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[8.7 J1第17節 清水2-1鹿島 アウスタ]

 この男は何かを持っている。首位・鹿島を勝ち点1差で追う清水エスパルスがホームで迎えた首位決戦。決勝点はMF枝村匠馬の腹から生まれた。

 後半28分に途中出場でピッチに入ると、その1分後のファーストプレーだった。中盤のこぼれ球を拾って左サイドのMF兵働昭弘に展開。兵働のクロスをFW岡崎慎司が胸で落とすと、DF伊野波雅彦がクリアしようとしたボールはゴール前に詰めていた枝村の腹部に当たって跳ね返り、そのままゴールラインを割った。

 「ほんとラッキーだった。普通にシュートを打ちたかったけど…。よかったです」と苦笑いを浮かべたが、自分ではたいたあとに迷わずゴール前に飛び出した動きがほめられるべきだ。「そこは自分の特長だと思うので。抜け出す動きが最初のプレーに出せてよかった。両チームとも運動量が落ちていたし、そういう動きはマークしづらい。ああいう動きをして、かき回そうかなと思っていた」と胸を張った。

 今季は開幕前から股関節痛に苦しみ、大きく出遅れた。中断前は5月8日の新潟戦にベンチ入りしただけ。この日が今季3試合目の出場で、出場時間は今日を含めても54分にしか満たない。「ケガはしょうがないし、割り切りながらやっていた。これが自分の勢いになってくれれば」と話す言葉にも実感がこもっていた。

 大事なところで、いつもゴールを決めてきた。昨年8月2日の浦和戦(1-0)での決勝ゴール。同22日には磐田戦で2得点を決め、5-1の大勝に導いた。08年のナビスコ杯準決勝・G大阪戦では2試合で3ゴールを奪い、決勝進出に貢献。静岡ダービーなどの大一番、鹿島や浦和、G大阪といった強敵相手の試合で何度も勝負強さを発揮してきた。清水ジュニアユース時代からともにプレーしてきた1学年下のMF山本真希は「あの人はほんとに持ってる。俺にも分けてくれないかな」と冗談交じりに先輩を称えた。

 「まだ半分。まだまだこれから勝ち点を伸ばしていきたい」。出遅れた分を取り返すのはこれからだ。終盤の大失速でタイトルを逃した昨季の二の舞を防ぐためにも、地に足を付け、一戦一戦戦っていく。

<写真>試合後、チームメイトとハイタッチを交わす枝村
(取材・文 西山紘平)

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