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小野がJで1190日ぶりゴールも…「勝つことしか望みはなかった」

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[10.2 J1第25節 鹿島1-1清水 カシマ]

 試合終了の笛が鳴った瞬間、清水エスパルスの選手はピッチに崩れ落ちた。FW岡崎慎司もFWヨンセンも立ち上がれない。「とにかく勝つことしか望みはなかった」(MF小野伸二)一戦は引き分けに終わった。

 待望の初ゴールで優位に立ったはずだった。前半11分、MF本田拓也からパスを受けた小野はプレッシャーが甘いのを見逃さず、約30mの位置から右足を振り抜く。「パスコースもあったけど、ここは一発狙ってみようかなと。そういう気持ちが結果につながったのはよかった。いいコースにいったけど、止められるかなと思ったので、入ってビックリした」。浦和時代の07年6月30日の磐田戦で決めた2得点以来、1190日ぶりとなるJリーグでのゴールが、値千金の先制点となった。

 しかし、後半8分にセットプレーから同点に追い付かれると、鹿島の猛攻にさらされた。シュート数は12対20。後半41分の決定的なピンチはDF陣が体を張ってゴールを死守するなど2点目は許さなかったが、自分たちも勝ち越すことはできなかった。

 優勝争い生き残りを懸けた前節の名古屋戦は先制しながら、やはりセットプレーから追い付かれ、その後4失点。1-5の大敗で、優勝戦線から脱落した。本田は「今日は1点取られても集中できたというのは変わってきている。同じことを繰り返さなくてよかった」と話し、岡崎も「これからいいサッカーをするための試合にはなった。一歩一歩いい方向に向かっているし、ポジティブに考えたい」と前を向いた。運動量や球際での競り合いなど名古屋戦と見違える部分があったのも確かだが、絶対に勝たなければならない試合で勝ち点1に終わったのも事実だ。

 9月29日のナビスコ杯準決勝第1戦・広島戦(1-2)では小野、ヨンセンを帯同させず、岡崎も本田も途中出場と温存した。勝ち点差を考えれば、ナビスコ杯にベストメンバーで臨んでもおかしくない状況で、長谷川健太監督は中2日となる今回の鹿島戦を重視した。

 「中2日では鹿島と戦えないと判断した。リーグ戦も2位とはほとんど差がない。ACL出場権を争っている以上、リーグ戦を捨てることはできない。ナビスコも大事だが、第2戦はホームで戦える」。指揮官は決断の理由を明かした。

 小野が「自分がその試合(広島戦)に行かなかった分も、今日の試合で助けになればと思っていた。みんな中2日で疲れもあったと思うけど、勝ちたい気持ちを強く感じた」と話すように、監督の思いは選手に伝わっていた。しかし、だからこそ引き分けという結果は重くのしかかる。

 これで10日のナビスコ杯準決勝第2戦は絶対に勝たなければならない状況に追い込まれた。この日の勝ち点1を先につなげるためにも、“二兎を追う者は一兎をも得ず”にならないためにも、逆転での決勝進出を懸けた広島戦が、今シーズンの行方を決定付ける大一番となる。

<写真>久々の得点を決めた清水MF小野
(取材・文 西山紘平)

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