beacon

F東京、10戦ぶり大黒弾などで11試合ぶりの複数得点。“平山システム”が徐々に機能

このエントリーをはてなブックマークに追加
[10.3 J1第25節 F東京3-0湘南 国立]

 辛く長いトンネルをようやく抜け出した。試合後のピッチで久々に青赤軍団の笑顔が見られた。FC東京は最下位の湘南に3-0と“裏天王山”を制し、連敗を3で止めて11試合ぶりの白星をつかんだ。順位も一つ上げて15位とJ2降格圏内からの脱出に成功した。

 攻撃陣がようやく爆発した。前半38分、右CKのチャンスからDF今野泰幸の折り返しをFW大黒将志が相手GKより一瞬早く左ボレーを繰り出し先制点。大黒にとって7月25日の湘南戦以来、実にリーグ戦10試合ぶりのゴールだった。その1分後、今度は左サイドをMFリカルジーニョが仕掛け、FW平山相太の落しから最後はMF石川直宏がミドルシュート叩きこみ2点目を決めた。さらに後半39分にはMFリカルジーニョが個人技で突破して3点目を決めた。

 10戦(3分け7敗)勝ち星なしだった期間中は、決定機を作りながらも決めきれず、計5得点と極度の得点力不足に苦しんだ。前節の大宮戦も悪くなかったが、この日も攻撃がまずまず機能し、最後の白星となる7月25日の湘南戦(3-1)以来11試合ぶりの複数得点を奪った。大黒は「ああいうのは狙い続けていた。ボールが来れば決定的なシュートにいける」と振り返り、「サポーターの人が、勝てないときも応援してくれて、僕らを信じてくれていた。みんなの前で勝ててよかった」と笑顔を見せた。

 1点目は大黒の良さが生きたものだが、2点目は『THE・大熊サッカー』ともいえる新戦術“平山システム”が発揮された形だった。決めた石川は「ゴールできて嬉しかった。ゴールしたけど、ソウタ(平山)がうまく落としてくれて、流し込む感じだった。あそこはリカが仕掛けて、ソウタが落としてと、みんなが連動して生まれたシュート。やってて手ごたえを感じた。トータルで手ごたえを感じたゴールだった」と、攻撃陣全体が同じイメージを共有してのゴールだったことを明かした。

 解任された城福浩前監督時代はボールをつなぎすぎるところがあり、シュートよりもむしろ、つなぎの面が優先された部分もあったが、新指揮官は中盤でつなぐことは継続しながらも、攻撃時の最初の選択として、まずは平山のポストプレーを生かしたショートカウンターを掲げた。まだ指揮を執り始めて2戦目のため完璧ではないが、初めて具現化できたゴールだった。

 「チームとしてぶれずにやることが大事。やっていることが間違っていないと証明したい。全力で練習や試合をやっていきたい」と石川は新戦術をさらに浸透させることを誓った。大黒も「これをとにかく続けていかないといけない。もっと縦パスを出してほしいですね。そうすれば、シュートまでいけるんで」と持ち前の強気のコメントが戻った。

 とはいえ、まだ勝ち点は24で、16位の神戸に1差をつけただけ。これからも勝ち続けて一桁順位を目指すくらいでないと残留は厳しくなる。必要なのはゴールを奪うことだ。くしくもこの日無得点だった最下位の湘南は、今節を終えて26得点を挙げているが、3点を奪ったF東京は25得点。これは山形、大宮、神戸、京都に続いて5番目に低い数字だ。

 対する失点は29。こちらはリーグ最少23失点の鹿島やC大阪には及ばないが、日本代表DF闘莉王が率いる首位・名古屋の同27と比べてそん色ない数字。4位・G大阪、5位・川崎Fはともに同34で、6位・清水は同39。つまりF東京は攻撃さえ改善されれば、浮上する可能性は十分あるのだ。J1残留を成し遂げるために“平山システム”をさらに進化させ、ゴール欠乏症から完全に立ち直りたい。

(取材・文 近藤安弘)

TOP