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F東京、大熊監督9年ぶり勝利&7カ月ぶりホーム白星

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[10.3 J1第25節 F東京3-0湘南 国立]

 前半39分、石川直宏が2点目を決めた瞬間、FC東京大熊清新監督はピッチに背を向け、右腰脇で右拳を強く握り締めた。そしてペットボトルを取り、ごくりと水を飲み込んだ。勝利に大きく近づく一発。大げさにせず喜びをかみ締めたが、その拳、表情にはたぎる思いが詰まっていた。

 後半終盤に追加点を奪い3-0白星。監督復帰から2戦目で11戦ぶりの白星をもたらし、16位→15位とひとまず降格圏から脱出させた。予定より少し早い監督復帰で、自身約9年ぶりとなる監督勝利を手にしたが、当然、笑顔はほとんどなかった。

 「結果的には3-0ですが、前半、少し守備でスペースを与えた。先に失点していたらわからなかった。ただそこを耐えて勝ちを引き寄せたという意味では、よく90分間、集中を切らさずに頑張ったと思います。ただ後半は運動量が落ちたし、中盤で主導権を握られた。走りきるところで足りない選手もいる」

 大熊監督は選手をたたえながらも、反省を忘れなかった。前半32分にはゴール前を崩され、MF寺川能人にクロスバー直撃のシュートを放たれた。これが入っていたら……と思うと背筋が凍る。2点を先行したが、後半途中にはセカンドボールを拾われて差し込まれる時間帯もあった。後半26分にはGKと1対1になる場面も作られた。「プロの世界は口で頑張ろうと言うだけでは、なかなか勝利をもぎ取ることはできない」と表情を緩めなかった。

 とはいえ、多くの“呪縛”から解き放たれた。国立競技場とはいえ3月6日の開幕戦・横浜FM戦以来となる約7カ月、13試合ぶりの白星も手に入れた。少しずつ“雑念”が消え、より気持ちを前向きにして戦うことができる状況になった。大熊監督は「今日は味スタではありませんが、たくさんの人に来ていただいた。これだけの後押しがある中で90分間、ひたむきに勝利を目指すということは、最低限必要なこと。選手にも言いましたが、個人の意地やチームとしての意地を試合で表現しないといけない。次の味スタで勝利ができるようにしていきたい」とサポーターに感謝の意を表し、“真のホーム”での勝利を誓った。

 「ずっと勝てなかったので選手もうれしいと思いますが、次が大切。トーナメントの初戦のつもりで残り9試合を戦って行きたい」

 新指揮官は強い決意を明かした。残り9試合。F東京は勝ち点が24で、15位の神戸とは勝ち点差1と苦しい状況に変わりはない。ただ、13位の仙台までは同3差で中位まで浮上することは決して難しくない。かつてF東京をJ2、そしてJ1に上げたのは大熊監督。自らが成長路線へと軌道に乗せたチームだけに、必ず残留させ、来季の飛躍へつなげるつもりだ。

(取材・文 近藤安弘)

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