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[選手権]名将「トップレベルにない」と厳しい名門・武南、後半2発で逆転勝ち:埼玉

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[10.10 全国高校選手権埼玉県大会2次L 武南 2-1 大宮東 西武台G]

 第89回全国高校サッカー選手権の予選大会は各都道府県で熱戦を展開中。埼玉県大会では10日、16強を懸けた2次予選リーグの第2戦を行い、81年度全国Vの名門・武南が大宮東に2-1で逆転勝利。2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。
 
「この時期にどうしてこういうことが起こるのか」。2-1で逆転勝ちをおさめた武南の名将・大山照人監督は試合後、ぶ然とした表情で語り始めた。「不用意に立ち止まって失点している。『チェックしろ』とか『上がれ』とか周りに声をかけられる選手はいる。でも流れを変える指示がない。結局ハーフタイムまで流れを変えられない。そういうところを意識させてきたつもりなのにがっかりした」。そして「戦えた時と比べるとフィジカル面だったりひ弱さがある。トップレベル? うちはそんな位置にはいないですよ」と厳しい言葉ばかりが口をついた。

 全国選手権優勝1回、準優勝1回、4強3回など輝かしい歴史を持つ名門だが今年は、プリンスリーグ関東1部で最下位に終わり、埼玉県内でも無冠。「ウチは耐えてセットプレーとかPKの1点差勝負に懸けるしかない」(大山監督)という。それでも10番FW河野直登や右サイドで攻撃力を示したFW吉永和真(ともに3年)、そしてボールコントロールに長けたMF谷口貴哉(2年)、MF三浦健太郎(3年)、そしてアンカーの位置から果敢に飛び出してくるMF橋本開(3年)とその分厚い攻撃は十分に相手の脅威となりうるように映った。

 前半15分にMF東祥汰(3年)の右CKからDF池田翔太(3年)のヘディングシュートで大宮東に先制されたものの、再三最前線まで飛び出した橋本らが怒涛の攻撃を展開。いつでも追いつくことができそうな雰囲気をかもし出しながら攻め続けると、後半9分には右クロスをファーサイドの橋本が頭で折り返し、CB大西祐輝(3年)が体ごとゴールへと押し込んだ。さらに17分には右サイドから切れ込んだ吉永のラストパスを河野がゴールへと流し込み逆転に成功。ただこの後、個人技を生かして次々とショートカウンターを浴びせたが、最後まで3点目を奪えない。勝ったものの、縦への速さと遅攻を使い分ける大宮東にゴールに迫られ、あわやの場面もつくられた。

 決勝ゴールを決めた河野は「今年はレベル低いと言われている。楽勝で勝つ試合もないので競った試合を勝つしかないです。出だしが悪くて点取られてからしてから火がつくようなチーム。これは改善しなければいけない」。それでも「持ち味のパスワークはどこでも崩せる自信がある」と口にするように攻撃力は指揮官の言葉ほど低くはない。ライバルたちも警戒する自分たちの武器でチャンスを多く作り、相手を上回っていくつもりだ。

 フォア・ザ・チームを表現できる選手を優先して起用しているという選手権での武南。結束力と粘り強さ、そして周囲も認める攻撃力で全国8強へ進出した06年以来となる全国舞台へ駆け上がることができるか。この日存在感を示した橋本は「自分たちはこれまでタイトルがなかった分、この大会に懸けている。全国に出たい」。シーズン最後の大会で名門復活を果たす。

<写真>後半17分、武南FW河野(右)が決勝ゴール
(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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