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憲剛が意地の同点アシスト、「磐田にはずみをつけさせるわけにはいかなかった」

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[10.30 J1第28節 川崎F1-1磐田 等々力]

 司令塔の意地が凝縮された。0-1の後半31分、川崎フロンターレの日本代表MF中村憲剛が、さすがのアシストを決めた。ゴール前中央でこぼれ球を拾ってルックアップ。ドリブルからPA左のFW矢島卓郎にスルーパスを送った。決めた矢島も上手かったが、憲剛らしい相手の急所を突く素晴らしい一撃だった。

 「はずみをつけさせるわけにはいかなかった。うちを倒していくわけだし。うちは2連敗はできなかった。どうしても勝ちたかった。勝てずに残念です」

 相手は11月3日のナビスコ杯決勝に挑む磐田。10月10日のナビスコ杯準決勝第2戦ではホームでまさかの1-3敗戦を喫し、2戦合計2-3で決勝進出を逃した。憲剛はこの試合、日本代表の韓国遠征に参加していたため、あえなく欠場した。敗退という結果を韓国で知り、やりきれない思いをしていた。

 特にナビスコ杯は昨年は決勝でF東京に敗れたうえ、表彰式での一部選手の態度が社会問題化した。そのリベンジを果たすために何としても決勝に進み、そしてチーム初タイトルをつかみたい思いが強かった。そんな思いを打ち砕かれた相手が磐田だった。自分が出ている試合で、負けるわけにはいかない-。そんな責任感、そしてこれまで積み上げてきた努力が、台風という悪環境下でも狂いのないスルーパスを生んだ。

 「いいスルーパスだった? そういうのを90分間とうしてやらないといけない。こういう中で、技術の高さが見られる。ヨーロッパのトップの選手は、こういう雨の中でもやれている。オレ自身もチャレンジしたいと思った」

 高き理想を追い求める憲剛らしいコメントだった。たしかにこの日は、磐田MF西紀寛が「ラグビーみたいだった」というほど、一部の選手はうまくボールを処理できずハイボールが目立った。大雨に台風による暴風と仕方ない面はあるが、憲剛は「こういう中でも(サポーターに)いいプレーを見せたかった」という。これらの姿勢が無名選手から日本代表選手へと育った要因の一つといえるだろう。

 「追いつけたことは自信になるけど、逆転できるかどうか。こういう試合を勝ちきれるように」と憲剛。首位の名古屋とは勝ち点14差と逆転優勝は絶望的だが、最低目標とするACL出場圏3位のG大阪には同3差と迫った。激しい“デッドヒート”が続くが、憲剛が歓喜に導くつもりだ。

[写真]アシストを決めた中村憲剛

(取材・文 近藤安弘)

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