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[選手権]「対等だとは思っていなかった」桐蔭学園が“格上ライバル”桐光学園撃破!:神奈川

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[10.31 全国高校選手権神奈川県大会準々決勝 桐光学園 0-0(PK5-6)桐蔭学園 麻溝]

 第89回全国高校サッカー選手権神奈川県大会は31日、準々決勝を行い、今夏の全国高校総体4強の桐光学園と桐蔭学園との実力派同士が激突。0-0で突入したPK戦の末、6-5で勝った桐蔭学園が準決勝へ駒を進めた。

 100分間の熱戦では決着がつかず、0-0のまま突入したPK戦。ともに5人全員が成功して迎えた6人目、先攻の桐光学園MF小村研人(2年)のキックを桐蔭学園GK三本松優(3年)が左に跳んで左手ワンハンドで止める。そして直後、プレッシャーのかかるシュートをCB西村未來(3年)が決めると、桐蔭学園イレブンはピッチ中を走り回って喜びを表現した。

 2000年以降、全国高校選手権、全国高校総体、全日本ユース(U-18)選手権の3大大会に出場した回数は桐光学園の11回に対し、桐蔭学園は10回。この10年間神奈川の高校サッカーを引っ張ってきた両雄の対決だが、今年全国総体で準決勝まで進出した桐光学園に対し、桐蔭学園は県大会初戦で敗退していた。また選手権に限ると桐蔭学園が県制覇したのは03年が最後。山本富士雄監督が「(以前のように)全国出て当たり前という雰囲気はない」と説明し、また三本松が「自分たちが(桐光と)対等だとは思っていなかった」と振り返ったように、桐蔭学園は桐光学園をライバルではなく乗り越えなければならない壁として立ち向かった。

 それでも前半は対桐光というよりも「敗れれば3年生は引退」のプレッシャーが桐蔭学園の動きを硬くさせる。それを飲み込むかのように試合巧者・桐光学園が一方的に攻め続けた。桐蔭学園の前半のシュート数はゼロ。だが川崎フロンターレ加入内定のCB福森晃斗の左足キックを警戒し、緩めずにプレッシャーをかけ続けるなど、前半を無失点で終えたことで桐蔭学園は落ち着きを取り戻す。

 後半、カウンターからMF小形聡司(2年)やFW有元漠(3年)がいい形のシュートで終えると、16分の10番MF泉宗太郎(3年)投入でチームは完全に火がついた。20分にはドリブルでDF2人を振り切った泉が決定的なシュート。これは桐光学園の名手・GK峯達也(3年)にセーブされたが、勢いづいたチームは直後にも右サイドからあわやの場面をつくり出した。
 
 チャンスの数で上回っていたのは間違いなく桐光学園だった。だがゲーム主将のDF山口廉史(3年)と西村の両CBを中心に必死の守りを見せる桐蔭学園はすれすれのところで相手のシュートを足に当て、危険な場面でもあきらめずに体を寄せるなどシュート精度を狂わせた。緊張度が一気に高まった試合終盤。逆に敗戦のプレッシャーを大きく感じていたのは桐光学園の方だった。

 「ウチは半分くらいしか力をだせなかった。でも桐蔭はベストゲームをしたと思う」と桐光学園の佐熊裕和監督も評していたが、桐蔭学園はPK戦でも準備してきたことをフルに発揮する。桐光学園との対戦が決まった9月から1ヵ月以上の間、毎日練習後にトップチームの約30人全員がPK1本を蹴ってからグラウンドを後にしていた。延長戦で決定的な場面を相手MF岩浪晃大(3年)にクリアされるなど勝ちきれなかったが、それでもつかんでいたPKへの自信は揺るがない。一丸となってひとつの目標へ向かってトレーニングしてきた成果を1本1本確実に沈めて歓喜を味わった。

 ゲーム主将の山口は「桐光がインハイでベスト4までいったのは知っていたし、意識していた。でも1ヵ月間いい準備をしてきたし、自信があった。そして勝った今、また自信になりました」と大一番勝利に胸を張る。山本監督が「まだ準々決勝を勝っただけ」と話したように優勝を決めた訳ではない。ただ、選手たちも当然それは理解している。三本松は「勝った瞬間はうれしかったし、感動で泣いている選手もいたけれど、まだ通過点です」と語り、山口も「自分たちはみんなでやるだけ。全国は目標だけど、まずはひとつずつ勝つ」と引き締めた。

 あざみ野FC時代に桐光学園GK峯とチームメートだった山口は試合後、相手守護神から「優勝しろよ」と声をかけられた。その思いに応えたい気持ちは持っている。ただ今年、そしてここ数年悔しい思いを何度も経験してきた桐蔭学園は先を見据えるのではなく、一歩一歩確実に頂点への歩みを進める。

<写真>勝利の瞬間、桐光学園は思い思いの場所へ歓喜のダッシュ
(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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