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[選手権]4-0勝利も苦悩する國學院久我山:東京B

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[11.8 全国高校選手権東京B大会準決勝 國學院久我山 4-0 東京実 西が丘]

 第89回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック大会は8日、西が丘サッカー場で準決勝を行った。08年度全国8強の國學院久我山と東京実の一戦は、MF右高静真とMF大畑圭輔(ともに2年)がそれぞれ2ゴールを挙げた國學院久我山が4-0で勝利した。國學院久我山は2年ぶりの全国大会出場を懸けて13日、都・駒場と決勝を戦う。

 東京実にシュート15本を浴びせ、4-0の快勝で決勝進出を決めた國學院久我山だったが、試合後の李済華(リ・ジェファ)監督の表情は明らかに不満げ。「イメージ、テクニックがない。フィジカルが弱い」とイレブンをばっさり切り捨てた。そして「きょうはいい時間帯に点を取れたことに尽きます。確かにいいパスも2、3回はあった。でもベースとなる技術が不安定。視野もいいところを見れない」と技術不足について厳しく言及した。

 2年前の全国大会ではMF田邉草民(現F東京)を中心とした攻撃サッカーで2試合連続7ゴールを挙げるなど鮮烈なインパクトを残したが、昨年、今年は苦戦。全国出場がない。特に今年は総体予選こそあと1勝で全国進出という準決勝まで勝ち上がったものの、東京都のT1リーグでは2勝1分8敗という惨敗で11位に沈んでいた。
 原因はファーストタッチのブレなど技術不足。派手な足技から相手を抜き去る選手は前線から最終ラインまで何人もいる。ただし、わずかな正確性の欠如がチームを目標とするサッカーから遠ざけてきた。ゲーム主将のDF並木凌介(3年)は言う。「『美しく勝て』が自分たちのキーワード。パスをつないで、力任せではないサッカーをしなければいけない。でも(内容・結果も伴わず)悔しい1年になっています」。

 この日もなかなかリズムに乗ることができなかった。右SB小沼佑介(3年)のオーバーラップやFW原之園卓也(3年)のキープ力などを生かしてシュートまで持ち込んだが、一方でミスも出て相手との大きな差をつくることができない。逆にシンプルに前線へボールを放り込み、スピード十分のFW村越大地(2年)やMF海宝一輝(3年)が走りこんでくる東京実の攻撃にゴールへ迫られてしまう。また中盤で存在感放つMF大堀大貴(3年)や正確なポストワークを見せる1年生FW高橋成明にバイタルエリアを取られる時間帯もあった。

 ただ前半23分、ゴール正面PAやや外でボールを持った右高がDFの股間を抜くドリブルから鮮やかな先制ゴール。すると30分には左CKのこぼれ球を大畑が蹴りこみ2-0とした。プレッシャーから開放されたチームは伸び伸びと「らしさ」を発揮。32分にもPA右横から右高、FW宮崎準也(3年)、大畑とつなぎ、最後はゴール正面でリターンを受けた右高が左足でゴールを陥れた。

 後半運動量が落ちたこと、相手GKのロングキックに押し込まれたことなどの影響によりリズムを崩した國學院久我山に対し、東京実は息を吹き返したが、1点を奪うことができず。逆に21分、自陣でボールを失うと最後は大畑に決定的な4点目を奪われてしまった。

 展開によってはチャンスもあった東京実だが、流れをつかみきれず敗戦。一方、勝った國學院久我山にも笑顔はなかった。この時期に思うようなサッカーができないことへの苛立ちを感じているのは確かだ。「4点取れて無失点。でも自分たちはここ(東京都決勝進出)を目指している訳ではない」と並木。敗戦の許されない一発勝負の決勝だが、國學院久我山は「美しい」サッカーにこだわって全国切符を勝ち取る。

[写真]前半23分、先制ゴールを決めた國學院久我山MF右高
(取材・文 吉田太郎)

【特設】高校選手権2010

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