beacon

[MOM359]静岡学園MF長谷川竜也(2年)_決勝彩った静学ナンバー1の業師

このエントリーをはてなブックマークに追加

[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.14 全国高校選手権静岡県大会決勝 静岡学園 3-1 清水商 エコパ]

 「とんでもない選手になる可能性がある」。静岡学園の川口修監督が、無限の可能性を示唆する技巧派軍団ナンバー1の「業師」。それが162cmのMF長谷川竜也(2年)だ。

 自身初の選手権全国大会をかけた決勝へ向けてどのようなプレーをするつもりだったのか。「股抜いたり、浮き球でディフェンスの上を抜こうと思っていた」と“別次元”とも言える相手をかわすイメージを淡々と語った長谷川。ともに相手の良さを消すことに執着しかねない決勝の舞台で、静岡学園の背番号25はまるでショーのように多彩なドリブルとパスを次々と繰り出し、攻撃を彩った。

 サイドに追い込まれてもスルリと前を向きなおしては、DFの間を掻い潜って決定的な仕事をしてのける。この日は取りに来た相手の裏をとって抜き去るドリブルに加えて、思い描いてた通りの股抜き、そしてDFの頭上を越すように小さくボールを蹴り出して自らボールを拾い、そのままゴールへと迫るという圧巻のチャレンジまでしていた。静岡学園のコーチングスタッフは「きょうは何回スタンドを沸かせた?」と常に選手たちに問いかけているが、この日最もスタンドを沸かせていたのが長谷川。ボールを持つと本当に何をするのか想像がつかなかった。

 長谷川は「これまでは(イメージしたものを)大舞台でできていなかったけど、チャレンジできるようになったのは成長したところ」。チームで最も小柄なMFは腰周りも細く、高校生のなかに入っても外見では明らかに見劣りする。ただ名門・静学で主力を担う実力はやはり本物だ。
 この日も先制点は長谷川の個人技から生まれた。23分、DFラインの手前でボールを受けた長谷川は左サイドへ流れてマークに来た相手ボランチのプレッシャーを背中でかわすと、次の瞬間一気に加速。ゴールライン際まで縦に切れ込んでから出したグラウンダーのラストパスに、走りこんだMF大橋玄季(3年)が難なく先制ゴールを決めた。「自分の中では満足していない」と試合後やや不満げだった長谷川だが「アシストできたのはよかった」。

 現時点でもその存在感は十分だが、将来性についての評価も高い。162cm、51kgの小さな体ではプロへの道のりは険しいのかと思いきや、4強へ進出した全日本ユース(U-18)選手権でJユース選手を相手に見せたキープ力でJスカウト陣からの評価が急上昇。チームにも問い合わせが来ているという。組織で技術をごまかすのではなく、技術だけにこだわって練習に取り組んできた静岡学園が生んだ新たな才能。「小さくてもできるところを見せたかった」と静岡学園中入学から6年間、身体の不利をカバーすべく一途に技術を磨いていたMFの足技は全国大会でも要チェックだ。

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

TOP