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これぞ名古屋の強さ、千金アシストの"伏兵"杉本「全員で勝ち取った」

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[11.20 J1第31節 湘南0-1名古屋 平塚]

 最後の最後に大仕事をやってのけた。試合を決めたのは、途中出場でピッチに入ってきた“伏兵”だった。0-0の後半18分、FW杉本恵太がFW小川佳純に代わってピッチに入る。こう着状態を打破すべく、ストイコビッチ監督が投入したスピードスターが、試合の流れを一変させた。

 わずか3分後だった。左サイドでボールを持ったDF阿部翔平が右サイドのスペースに正確なサイドチェンジのボールを送る。「スペースに落とせば、杉さん(杉本)なら追い付ける。監督もそういう狙いだったと思うし、狙っていた」。快足を飛ばしてボールをキープした杉本は鋭く縦に突破。右足のクロスにFW玉田圭司がヘディングで合わせ、優勝決定弾となった。

 値千金のアシストを決めた杉本はベンチに向かってガッツポーズし、控え選手たちと抱き合った。「今年苦しんできて、今日こそやってやると思っていた」。出場機会に恵まれなかった1年間。この日が14試合目の出場とはいえ、先発は5月9日の仙台戦だけだった。もがき続けてきた男が、優勝の懸かった大一番でチームを勝利に導いた。

 「勝たないといけない試合だったし、個人的には今年、何もやってなくて、数字にこだわっている部分もあった。今年は1アシストもなかったし、チームに貢献する数字を残したかった。こういう大事なところでアシストできてよかった」

 杉本だけではない。控え選手の力が間違いなく名古屋の初優勝を支えていた。シーズン終盤に入り、DF田中マルクス闘莉王、FW金崎夢生という攻守の主力2人が負傷離脱。それでもDF千代反田充や小川ら普段出番に恵まれない選手が奮闘した。

 4試合連続先発となった千代反田は「自分は最後にちょっと出ただけだけど、こういう状況で最後に出られただけでも、かけがえのない経験になったし、感謝したい」と、新潟から移籍1年目での優勝をかみ締めていた。「最後の方はきつい試合で、C大阪戦、鹿島戦、大宮戦、そして今日と、鹿島には勝てなかったけど、最低限のことはできたかなと思う」。ラスト4試合の失点は2。闘莉王離脱の穴をきっちりと埋めた。

 17日の天皇杯4回戦・新潟戦は、直前のリーグ戦から千代反田を除く先発10人を入れ替えた。PK戦にもつれ込む激闘となったが、GK高木義成が再三の好セーブを見せ、PK戦でも見事に4人目のキックをストップ。「僕とか若い選手が天皇杯に出て、勝つことができた。そのパワーをみんなに伝えることができて、今日の優勝につながったと思う」と高木は胸を張った。

 杉本は「チームが一丸となって戦った結果。最終的に全員で勝ち取った優勝だと思う」と言った。他クラブがうらやむほどの圧倒的な戦力。と同時に出場機会が少なくとも決して腐ることなく、チームのために懸命にプレーしてきた控え選手たち。11人だけで優勝できるものではない。チームとして戦ってきた今シーズンを象徴するゲームで、名古屋が初の栄冠に輝いた。

[写真]後半18分に投入された名古屋FW杉本

(取材・文 西山紘平)

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