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シャーレを掲げた楢崎、「コンプレックスになりそうだった」悲願の初V

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[11.20 J1第31節 湘南0-1名古屋 平塚]

 Jリーグチャンピオンに与えられるシャーレ(銀皿)を高々と掲げた。名古屋グランパスのキャプテンとしてチームを引っ張り、守護神としてゴールを死守してきたGK楢崎正剛が、歓喜の中心にいた。

 クラブだけでなく、楢崎自身にとっても念願の初優勝だった。天皇杯は横浜F時代を含め、2度制している。Jリーグベストイレブンに4度選ばれ、日本代表としてW杯にも4度出場。しかし、そんな日本を代表するGKも、なぜかリーグタイトルだけは縁がなかった。

 「これだけやってきて、なかなかめぐり合わないから、コンプレックスになりそうだった。俺のものじゃないのかなと思ったこともあった」と言う。だからこそ、クラブが大型補強を成し遂げた今季に懸けていた。「今年しなきゃ、いつ優勝するんだという気持ちでいた」。8月14日の浦和戦に勝ち、第18節終了時点で今季初の首位に立つと、その後は着実に勝ち点を積み重ね、他のライバルに影も踏ませなかった。

 「あの優勝シャーレは久米さんがつくったものだってずっと言ってたから、久米さんに返そうという一心でやっていた。今日返せてよかった」。久米一正GMがJリーグ事務局長時代にできたのが、あのシャーレだという。柏、清水で強化部長を歴任し、08年に名古屋のGMに就任。その辣腕をふるい、積極的な補強とクラブ改革を推し進めてきた久米GMへの恩返しとなる“返還”の意味もあった。

 湘南の反町康治監督は名古屋の優勝の要因として「GKとセンターFWが年間を通してトップパフォーマンスだった。一番前と一番後ろの力強さがあった」と指摘した。

 「自分の存在が相手にとって邪魔になっているというのはうれしいけど、自分だけでやっているわけじゃない。俺の前に強いDFがいるし、MFもいるし、守備もできるFWもいる。そのおかげだと思う」

 楢崎自身はそう謙遜するが、この日も劣勢の時間帯を好セーブでしのぎ、勝ち点3につなげた。たとえ内容が良くなくても、試合を勝ち切る勝負強さ。名古屋が積み上げてきた勝ち点の多くに守護神のビッグプレーがあった。

 試合後、ピッチ上ではストイコビッチ監督に続いてチームメイトから胴上げされた。「あれはビックリした。俺じゃないでしょ」。思わず苦笑いを浮かべながらも、悲願のリーグ優勝の喜びをかみ締めていた。

[写真]優勝杯を掲げた名古屋GK楢崎

(取材・文 西山紘平)

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