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[選手権]“上州の虎”に隙無し!前橋育英が「全国のない夏」の鬱憤晴らすV5!:群馬

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[11.20 全国高校選手権群馬県大会決勝 前橋育英 3-0 桐生一 敷島]

 第89回全国高校サッカー選手権群馬県大会決勝が20日、前橋市の群馬県立敷島公園サッカー・ラグビー場で開催され、前橋育英が5年連続16回目の全国大会出場を決めた。初Vを狙う桐生一と対戦した前橋育英はDF北爪健吾(3年)の先制ゴールなどにより3-0で勝利。全国大会の組み合わせ抽選会は22日に東京都内で開催される。

 09年夏の日本一に輝きながら今年の全国高校総体に姿を現さなかった「上州の虎」が、堂々のサッカーで今年初となる全国切符を勝ち取った。この日の対戦相手は全国総体予選準々決勝で不覚をとった桐生一。ただ、タイガー軍団には先制されてパニックに陥ってしまった夏のひ弱な姿はもうなかった。「流れが悪いときに団結して守れている。我慢強くなったから勝てるようになった。みんなが状況に応じてできるいいチームになった」と浦和レッズ加入内定のMF小島秀仁主将(3年)も自信を見せたが、今年群馬県内でさえ無冠に終わっていたタレント軍団が、その実力の高さを決勝の舞台で発揮した。

 序盤印象的なプレーを見せていたのは桐生一の左MF湯澤大佑主将(3年)。余程足元に自信があるのか、わざわざスピードダウンして相手DFをおびき寄せてからトリッキーな足技と緩急とでかわしにいっていた。序盤は互いが激しくプレスをかけあい、攻守が目まぐるしく入れ替わる展開。十分対抗しうる力を見せていた桐生一は14分、相手の左FKから高速カウンターを繰り出した。DFの背後へ送られたボールに反応した湯澤主将が競り合った相手DFを振り切ってGKと1対1に。だが桐生一にとってこの日最大の決定機はシュートがわずかにゴール右外へと外れ、得点に結びつかない。

 逆に187cmの長身ストライカー、FW小牟田洋佑(3年)を起点にサイド攻撃を繰り出す前橋育英は22分、ワンチャンスをものにする。小島主将の右CKから北爪がヘディングシュート。こぼれ球に自ら反応した北爪が右足シュートをゴールへと突き刺し、先制に成功した。

 1-0。わずかな差だったが、この1点が桐生一に重くのしかかった。前橋育英は両CBを交えたポゼッションで完全にボールを支配。スペースがあると見るやMF湯川純平(3年)がドリブルで中央突破を仕掛け、右SB大石智広(3年)が最終ラインから最前線まで飛び出すなど、一度シフトチェンジすると一気にPAまでボールを進めた。チームのシュート数は小島主将の左CKからMF白石智之(2年)が頭で加点した後半35分までわずか3本。それでも常に仕掛け続けていた前橋育英が完全に試合を支配していた。

 加えて、この日何より際立っていたのがディフェンス面での隙の無さだ。ターゲットのFW近藤教文(3年)とMF櫻本一貴(3年)へロングボールを放り込む桐生一の攻撃を187cmの大型CB川岸祐輔(3年)が「自分は全部勝つこと。勝てなかったところがあったことが悔しい」と振り返りながらも、圧巻の強さを発揮してシャットアウト。抜群のスピードを誇る北爪や“いぶし銀”的な守りを見せる榊原史也(3年)が的確にカバーしたほか、前線からの守備でキックのコースを限定し、セカンドボールは小島主将と湯澤が支配する。
 後半16分、相手の堅い守備を打開できない展開に桐生一ベンチはU-16日本代表のストライカー、鈴木武蔵(2年)を投入したが効果的な攻撃ができないまま35分に痛恨の2点目を失うと、38分にも右サイドを突いたFW飯沼壮貴(3年)のラストパスからFW松井聖也(2年)にダメ押しゴールを決められてしまった。

 前橋育英にとって、これまで大きな課題となっていたディフェンス面。それが両CBの台頭とともに安定し、普段からチーム内で激しく指摘し合う環境となったことで不安が払拭されている。レベルの高い試合内容で5連覇を遂げた前橋育英の山田耕介監督は「『インターハイでやられたことを忘れんじゃねぇぞ』とやってきました。(勝って)やっとホッとしたというのが正直なところ。今年はいい選手が結構いる。(今年初の全国大会となるが)全国でその分暴れてもらえれば」と期待。小島主将は「目標は全国制覇。高校に入学したときからこれを目指してやってきた。勝ちたい」と言葉に力を込めた。悲願の選手権日本一へ。夏の屈辱をバネに力を増した実力派は、本気で頂点に焦点を定めている。

(取材・文 吉田太郎)

【特設】高校選手権2010

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