beacon

F東京は“数秒”を守り切れず初の決勝進出を逃す。今野「ここから這い上がっていきたい」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.29 天皇杯準決勝 鹿島2-1(延長)F東京 国立]
 まさに一瞬で地獄に突き落とされた。1-1の延長後半ロスタイム。FC東京は縦パス1本でPA左を破られ、最後はFW興梠慎三に決勝ゴールを決められた。鹿島の歓喜の輪ができた直後に試合終了を告げるホイッスル。ほんの数秒、耐えきればPK戦突入だったが、勝利の女神は残酷な結末を用意した。
 「こういう負け方はほんとに悔しい。あの場面は守りたかった。あれですぐに笛が鳴った。あれだけ、防いでいたらPK戦だった。きょうは、やられたというゲームじゃないと思うけど、最後、ああやって勝ち切っちゃうのは、鹿島の強さなんだと思った」
 日本代表GK権田修一が悔しそうな表情で振り返った。ほんとにラストワンプレーだった。本山雅志の縦パスに大迫勇也が抜け出した。「あそこで大迫は折り返すことしか考えていなかったと思う」という権田は素早く飛び出しパスを防ごうとした。しかし、不運にも中へ通された。「何とかしのぎたかった。そこまで守れてて、あの場面だけは守りたかった」とうなだれた。
 延長後半5分、MF米本拓司が2枚目のイエローカードをもらい退場になった。米本は「僕が悪いのでしょうがないです。チームに迷惑をかけてしまった」と涙を浮かべたが、日本代表DF今野泰幸は「あれは退場じゃない。ああいうイエローが出ると、僕ら(DF)は激しく行けなくなってしまう。米本はうまくボールに行っていたと思う」とかばった。しかし、一人少なくなったのは事実。そこから鹿島の勢いが増し、猛攻を受けた。
 それでも「10人になってきつかったけど、みんなの意思統一ができた。退場してよかったというわけじゃないけど、最後のワンシーンまでは守れていた」と権田が振り返る通り、FW大黒将志だけを前に残し、FW平山相太も含めて4-4のブロックを形成し、守り抜いていた。本山やMF小笠原満男らのパスワークでゴール前まで押し込まれたが、最後のところは決して破らせなかった。
 「1人減ってからは、もちろん勝つことを狙っていたけど、PKでもいいかなという感じでやっていた。チャンスがあれば得点を狙おうと」と今野。10人になりながらも浦和の猛攻に耐えてPK戦の末に優勝をつかんだ2004年のナビスコ杯決勝を彷彿させる守備を見せた。しかしそのプランは、成功までわずか数秒というところで惜しくも崩れ去ってしまった。
 先制しながら準ホームといえる国立で敗れ、初の決勝進出を逃した。リーグ戦では最終節の京都戦に敗れてJ2降格が決まるなど、1年を通して勝負弱さが目立ったが、今野も「ほんと今年はロスタイムの失点が多かった。勝ちきれないのは力が足りないということ。プロは勝ってなんぼ。いい試合をしたで終わりたくない」と今季を象徴する負け方になったことを嘆いた。
 そして「鹿島はレベルが高いし、質が高い。セットプレーのときもそうだけど、攻守の切り替えが速い。攻めるときと守るとき、ゲームをうまくコントロールしてる。11人みんながやろうとしている。3連覇しただけある。僕的には名古屋が優勝したけど、鹿島の方がレベルは高いと思う」と今野は鹿島の試合巧者な部分を、FC東京も身に付ける必要性を説いた。
 来季はJ1昇格という“至上命題”が待ち受けている。米本は「今年は迷惑をかけてしまった。怪我をしたし、きょうも退場した。来年は迷惑をかけないようにしたい。しっかりチームに貢献できるようにしたい」とリベンジを宣言した。今野も「もう一度、一からやっていかないといけないと思う。ここから這い上がっていきたい」とさらなる成長を誓った。
 今野と権田はアジア杯を控えており、ほとんど休む間もなく次の戦いが控えているが、すべて乗り越えていく覚悟だ。もちろん、他のイレブンもオフを大事に過ごし、さらに成長することしか考えていない。すべてはJ1復帰のために-。来季はこの日の、いやこの1年の悔しさを必ず肥やしにする。
[写真]サポーターに挨拶するF東京の選手たち
(取材・文 近藤安弘)

▼関連リンク
第90回天皇杯特設ページ

TOP