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[選手権]後半ロスタイムのPKも「チャンスだと思った」、駒大高GK岸谷が起死回生のセーブ

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[12.30 全国高校選手権1回戦 駒澤大高2-1大津 国立]

 絶体絶命のピンチにも動じなかった。GK岸谷紀久(3年)がゴールを死守した。2-1の勝利目前で迎えた後半40分、駒澤大高(東京B)はDF松岡聡太(3年)がPA内で相手を倒したとしてPKを与えてしまう。微妙な判定にどよめく駒大高スタンド。大津高の応援席からは同点を確信したかのように大歓声が巻き起こった。

 「審判のジャッジは絶対なので。PKを止めることだけに集中していた。今日は自分のミスが多くて、PKになったとき、借りを返せるチャンスだと思った」

 DF藤本貴士(3年)のキックを横っ跳びでセーブ。試合終了のホイッスルが鳴ると、チームの窮地を救った岸谷のもとへチームメイトが次々と駆け寄り、抱き合って喜んだ。

 大野祥司監督は「PKを入れられたらPK戦で負けていたと思う」と言う。土壇場で追い付かれれば、流れは完全に相手へ傾く。岸谷のビッグセーブが、まさに駒大高が手にしかけていた勝利をしっかりと守った。

 「PKは好きですね。練習試合だけど、前橋育英とか八千代とか相手にPKを止めたこともあったし、少し自信はあった。全体を見て、相手の目を見て(飛ぶ方向を)決める。今日は相手が緊張しているのが分かった」

 そう胸を張った岸谷だが、チームでは絶対的な守護神というわけではなかった。今年6月、全国総体出場権の懸かった東京都予選準決勝・駒場戦で0-4の大敗。この試合のゴールを守っていた岸谷は、今秋の選手権都大会で初戦の2回戦、そして準々決勝と正GKの座をGK斉藤正樹(2年)に明け渡した。

 準決勝・成立学園(2-0)で先発に戻り、完封勝利に貢献。「キックミスが多くて、決勝に立てるかは分からなかった」が、決勝の帝京戦(1-0)もゴールを守り、見事に連続完封で初の全国切符をつかんだ。それでも「1ヵ月ぐらい間が空いたし、全国大会で出られるかは分からなかった」と言う。「僕は連続して試合に出ることが少なかった。総体のあとにGKが代わって、悔しい気持ちもあった」。もう2度と正GKの座は渡せない。岸谷の意地が、最後にPKストップという形で花開いた。

 「岸谷は3年生になってようやく試合に出られるようになった。試合に出られなくても腐らずにやってきていた努力家。それがスーパーセーブにつながったんだと思う」。大野監督も手放しで称えていた。

 「(斉藤)正樹のためにも負けられない」と岸谷は力を込める。ポジションを争ってきた後輩GKの分まで。「団結力だけは他のチームにも勝てると思う」という駒大サッカーで大会に旋風を巻き起こす。

[写真]後半ロスタイムのPKを止めたGK岸谷紀久がチームメイトと抱き合う(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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