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[選手権]初出場同士の対決は座間が勝利。負傷欠場の守護神に勝利をプレゼント!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 座間1-0香芝 ニッパ球]

 第89回全国高校サッカー選手権は31日に1回戦の2日目が行われ、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場の第1試合では共に初出場の座間(神奈川)と香芝(奈良)が対戦した。立ち上がりから積極だった座間は前半3分にCKから先制点を奪い、そのまま1-0勝利。地元の大応援団の声援に包まれながら、選手権初陣勝利を飾った。

 初出場同士の一戦。立ち上がりはお互いに緊張し、落ち着かない試合展開になるかと思われたが、“ホーム”の座間が前からの積極的なプレスでリズムをつかんだ。「三ツ沢は県の決勝でもやっていたし、選手たちは落ち着いていました」と内田雅之監督が振り返ったように、初出場のプレッシャーを感じさせなかった。

 そして前半4分、幸先良く先制点を奪った。左からのCKにキャプテンマークを巻いたDF内田浩彰(3年)がニアに飛び込み、豪快なヘディングシュート。「練習していたことが出せた。前々からイメージしていた」という一発。同校史上初の“選手権ゴール”がいい時間帯に生まれ、さらに落ち着いた試合運びを見せた。

 押されていた香芝は、ボールを奪ったら1トップに入ったDF登録の濱武亮太(2年)か、サイドのスペースに蹴り込んで攻略の糸口を狙う。しかしパスが通らない。そこから座間の反撃を食らう悪い流れとなった。

 座間にはどうしても勝ちたい理由があった。本来は主将で、県予選の準決勝、決勝では2試合連続でPK戦2本をセーブしているGK宇佐美輝(3年)が11月末に右膝の前十字靱帯断裂と半月板損傷の大怪我を負い、今大会が絶望的となった。この大会に導いたと言える大黒柱を欠いたのだ。

 「生徒にも話したが、宇佐美の分もというのがあった。これまで宇佐美に救ってもらったので、(宇佐美が急回復をみせて試合に出られるように)未来を作るためにも、是が非でも勝ちたかった」と内田監督。代わりに守護神を任されたGK山口修平(2年)は「試合に出たかったけど、こんな形で出られるのは正直、複雑でした。でも宇佐美さんが『お前ならできるよ。自信もってやれ』と言ってくれた。先輩の分も頑張りたかった」と話すように、チームは一層、一致団結した。

 練習してきたしっかりとボールをつないで攻めるスタイルを通した。そしてFW梅田雅大(3年)やエースFW今野鷹輔(3年)に集めた。前半7分には梅田がPA左を仕掛けてシュート。同29分にはハイボールのこぼれ球を梅田が拾って再びシュートした。惜しくも決められなかったが、流れは完全につかんだ。前半40分には左サイドを梅田が仕掛けてグラウンダークロス。これをMF坂本尚哉(3年)がヒールで合わせたが、わずかに外れた。前半は座間が1-0で折り返した。

 厳しい状況の香芝は後半開始から、FW藤岡雅基(1年)に代えて194cmの長身FW柳智幸(2年)を送り出した。高さを活かして打開の糸口を探したが、これが効いたのか後半2分、遠目のFKにゴール前で柳がおとりになり、濱武がフリーになってヘディングシュートを放った。GK山口にセーブされたが、一つの形を示した。

 香芝はその後も徹底したカウンターでゴールをうかがう。後半16分、速い攻撃でFW浅野雄大(3年)が右サイドを突破して絶妙クロス。GK山口に防がれたが、攻撃に迫力が出てきた。そして後半28分、絶好機を迎えた。ゴール前のハイボール、座間DFが194cmの柳につられる中、濱武が頭で落としPA左から浅野が左足ボレー。ジャストミートしたが、上に浮かしてしまった。

 嫌な時間帯を迎えた座間だが、反撃に転じた。後半32分、縦パス1本で今野が抜け出し突進。ゴール前で相手DFを切り返しで交わして左足を一閃した。まさに決定機だったが、GK山本竜也(3年)のファインセーブに阻まれた。ロスタイム、座間はカウンターからMF伊能篤志(3年)がGKと1対1になったが、惜しくも外した。

 試合はそのまま1-0で、座間が初勝利をつかんだ。最低目標だった宇佐美に勝利を届けた。仲間たちの奮闘を見届け、試合後は足を引きずりながらも、ボール運びなど裏方の仕事をこなした宇佐美は「みんなよく頑張ってくれた。良かったです」と称えた。2回戦の相手は中京大中京(愛知)を下した久御山(京都)と強敵が待ち受けるが、悔しい思いをしている守護神のためにも、座間はチーム一丸で快進撃を目指す。

[写真]選手権初出場初勝利をつかんだ座間イレブン。学友たちや地元の応援に支えられて勝利をつかんだ。
(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 近藤安弘)

【特設】高校選手権2010

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