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[選手権]滝川二、都立の星を撃破!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 駒場1-6滝川二 西が丘]

 東京都立校の駒場(東京A)が登場とあって、西が丘サッカー場には7,000人を超える観衆が集まった。
 しかし、「相手の雰囲気にだけは飲まれないように」警戒していた滝川二(兵庫)は、前半に先制するとペースをつかみ、[大勝]という理想的な結果をたぐりよせた。

 滝川二の栫裕保監督は「前半は0-0で行くかと思っていた」という。

 初戦の緊張がないわけはない。
立ち上がりはどこかぎこちなかった。試合開始から引き気味でブロックを固めて守ってくる駒場に、サイドから崩せても中央でのフィニッシュには至らせてくれないでいた。

「前半に点が入って肩の力が抜けた」と栫監督が言う場面は前半19分だ。
 CB土師直大(3年)のフィードで裏に抜け出したMF香川勇気(3年)がGKの飛び出しを見てループ気味にボールを浮かす。それをキャプテンのFW浜口孝太(3年)が頭で決めた。

 一方、駒場の山下正人監督は「前半は0-0、0-1でもいい」と前日のミーティングで選手たちに伝えていた。

 滝川二のボランチ、MF谷口智紀(3年)が出られないのは分かっていた。では誰がそのポジションを埋めてくるのかがポイントだった。結果は本来点取り屋であるはずのFW樋口寛規(3年)が入った。「だからやっかいだった。相手が1枚上と感じた」。
 結局この樋口に前半ロスタイム、「予定外の」2点目を決められ0-2で前半を終了することに。「前半最後の失点は痛かった。ボランチとしていいポジションにいるから、攻撃も逆に入りやすかったんでしょう」と山下監督は悔やむ。

 いい意味でも悪い意味でも、この前半の両チームのプランの「誤差」が、そのまま試合結果になって現れた。

 後半に入ると、滝川二の攻撃にかける圧力が増す。栫監督が振り返る。
「前半はかなり引かれてたし、1点取っても引かれてたのはウラをかかれた。だからボールを取ったその後も動け、と」
 前半で2点リードしたからであろうが、後半はボールを持つと、次々と選手たちが前に走りこみ、ボールをテンポよくつないでいく。1、2度クリアしたぐらいでは止められないと思わせるくらいの「推進力」を感じた。
「今回は決定力が高く、たまたま点が入ったからラクでしたけど、いつもそうだとは限らない。これが入らなくて競った展開になった時にどうするのか。次の試合も点を取れると思ってしまわないように、(気持ちを)抑えるのが大変です。うちは波があるので」
 樋口のハットトリック、浜口の2得点、香川のヘディングシュート。全国大会を6ゴールでスタートし、最高の船出に見えるが滝川二の指揮官は気持ちを一切緩めなかった。

 一方「さすが滝二は常連、強い」と駒場・山下監督は言う。
引いて守り、ロングボールをトップに当ててセカンドボールを拾うつもりだったが、できなかった。
「セカンドボールを拾う準備、競り際、球際…やはり強い」
「大量失点されちゃいました!」とお手上げだ。

 しかし光明もあった。後半16分にはFW畠中潤(2年)が意地の1点を返した。
 この試合ほとんど孤立した駒場の2トップの相棒、FW赤沼太郎(2年)とのコンビで挙げたゴールだ。
「(前線が)2人きりになることは予想通り。ポイントは2人がなにをどう判断できるかだった。実際コンビでシュートまで持っていけたしゴールもした。これでまた来年がおもしろいかと思います」
 後半にはGK根岸和也(3年)が接触プレーで頭を打ち、途中まで記憶を飛ばしながらプレーしていたという「不運」もあった。流れを変えたい時に限ってマイナス要素に勢いをそがれた。しかし言い訳をすることはしない。ちゃんと得られたものがあるからだ。

 滝川二は勝って兜の緒を締め、駒場は来年への光明を見つけた。
もちろん一発トーナメントの勝負事だ。嬉しい、悔しい感情が生まれるのは当然のこと。
 しかし、勝負やゴール数だけでなく、全国大会で戦うことでしか得られない糧というものがある。このゲームを通じて、両校それぞれにまたひとつ貴重な経験と歴史が積まれた。

(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 伊藤亮)


【特設】高校選手権2010

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