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[選手権]52年ぶり出場の宇和島東、選手権初勝利!!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 遠野0-3宇和島東 西が丘]

 52年ぶり出場の宇和島東(愛媛)が、前回出場時ベスト8に入った遠野(岩手)に3-0で快勝し、選手権初勝利を記録した。

 両チームのよさが前面に出た試合だった。スコアほどに実力の差があったとはいえないだろう。これだけの差になったのは、チャンスで決めきれるかどうか、そして要所を締められるかどうか、という単純にして最も重要なポイントで明暗がついたからだ。

 遠野の松田光弘監督が言う。
「80分運動量を落とさずに戦えたスピリッツは伝統。後半最後の戦い方が最初から出来ていれば…」
 遠野の持ち味といえば、試合最後まで走りきるハードワークだ。それはこの試合でもぞんぶんに見られた。後半、宇和島東の運動量が落ちると、その活動量はより際立った。当然チャンスも増える。しかし結局1ゴールが遠かった。

 宇和島東の先制点は前半12分。左サイドからMF梶田真司(3年)のセンタリングをFW立花嵐(3年)が頭で合わせた。
山本光生監督がこのゴールを解説する。
「ビデオで見て分析した結果、サイド攻撃は通用するかと思った。本来SBのキャプテン(DF簗場豪史(3年))がCBに入っていたことも有利に働いたかもしれません。だから攻撃は狙いどおりです。いい時間帯に点が取れたことで楽になりました」

「ケガのCBに簗場を入れるのは、チームの中のオプション。崩れてたわけじゃない」と遠野・松田監督は言うが、この試合の失点全てはどこかあっけなく許してしまった感がある。

 前半20分の2失点目はゴール前の混戦からFW有間潤(3年)が詰めたもの。同じく28分の3失点目は1点目と同じように左サイドからのボールをMF中平脩人(3年)が合わせている。
 結局前半だけで許した3ゴールが、結局、遠野イレブンから心の余裕を奪ってしまった。

「左からのクロスが良かった。そこからマークがずれたり、前に入られたり先に先に動かれた。前半は下がりすぎてたので後半前に位置を修正したらチャンスも作れたのですが…」
 ハードワークはしている。しかし、肝心なところで前に入られたりフリーを許したりと、後手に回ってしまった。そこが早く修正して、本来の“粘り”が戻ってくれば試合はまた違った展開になったかもしれない。松田監督が悔しがるのもうなずける。

 一方宇和島東は試合前、どの選手も緊張しきりだったという。
「気持ちが入りすぎて後半バテましたが(笑)、カウンターがある怖い相手に対し粘り強くやってくれたと思います。うちは上手い子がいない。集中力、粘り強さ、ひたむきな精神、そんなのを持った子ばかりです。今日会場についたときはみんなの顔がひきつっていましたから。だから『緊張するのが当たり前なんだ。そんな舞台に立てることはそうそうないぞ』といって、特にやわらげもせず送り出したんですけど」
と山本監督が語れば、キャプテンの中平も
「52年ぶりの出場でみんなに期待されてたぶん緊張しました。それこそ立ち上がりは観客の多さ(8450人)に圧倒されて。愛媛は田舎なんで(笑)。でも1点目が入ってほぐれましたね。2~3点と入ることで自分たちのサッカーができるようになりました」
とゴールしたことによる精神的アドバンテージを最大限にいかした。

 宇和島東にとっては4回目の出場にして初の選手権勝利だ。
「インターハイでも初勝利を記録して、四国大会で優勝して、そして全国で1勝…。このチームではずっとひとつひとつ目標をクリアして歴史を作っていこうと言ってきました。次は静岡学園ですか?どこまで通用するか楽しみです。逆にボコられるかもしれませんけど(笑)、チームの次の目標は国立なので」
今年のチームのスローガンは
「蹴史創新」
サッカー部の歴史を新しく創っていく――。
 宇和島東は今、未踏の一歩一歩を確かに刻んでいる。この足跡は果たしてどこまで伸びていくのだろうか。

(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文/伊藤亮)


【特設】高校選手権2010

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