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悲願のタイトル届かず…長谷川監督「またいつの日かチャレンジを」

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[1.1 天皇杯決勝 鹿島2-1清水 国立]

 有終の美は飾れなかった。今季限りで退任する清水エスパルス長谷川健太監督にとって6シーズンの集大成の一戦は2本のセットプレーに泣いた。就任1年目の05年度の天皇杯、08年のナビスコ杯はいずれも準優勝。3度目の正直で悲願の初タイトルを狙ったが、またしても届かなかった。

 「2位は過酷だなとあらためて思った。2位なのに、優勝チームが喜んでいる姿を見なければいけない」。試合後は、歓喜に沸く鹿島の選手たちをじっと見ていた。「今度はその悔しさを晴らせと。そういうことだと思い、甘んじて選手と一緒に受け止めた」と振り返った。

 ベンチ前で鹿島のオズワルド・オリヴェイラ監督と言葉をかわす場面もあった。通訳を伴って清水側のベンチまで来たオリヴェイラ監督は「またいつの日か監督して対戦しよう」と声をかけたという。

 「いいチームをつくって、いい指導者だとほめていただいた。自分も『最後がオリヴェイラ監督率いる鹿島で、とても幸せです』という話をした」

 昨季まで鹿島をリーグ3連覇に導き、最後の最後で自らのタイトルの夢を打ち砕かれた。鹿島との差について「何が足りないのか、時間をかけて考えていきたい。終わってすぐに『これが足りなかった』というのは思い浮かばない。それを探すための時間だと思って、明日から有意義に使っていきたい」と語った。

 「したたかな鹿島にやられた。ただ、悔いはない。またいつの日かチャレンジできるように精進していきたい」

 今後はいったん現場を離れ、主にテレビ解説者として活動していく。とはいえ、近い将来、再び監督として戻ってくるだろう。下位に低迷していた清水を立て直し、緻密なチームづくりと大胆な世代交代で優勝争いの常連チームにまで成長させた手腕に疑いの余地はない。

 試合後のロッカールームでは選手に対し「しばらく現場を離れるけど、また監督になったとき、敵として対戦するのを楽しみにしている」と、指揮官として最後の言葉をかけたという。「いろんな意味で監督業は孤独なんだなと、この6年間でつくづく思い知らされた」。そう語る表情には、どこか重圧から解き放たれたようなすがすがしさも見えた。つかの間の充電期間。清水で果たせなかったタイトルの夢は、次なる舞台で追い求めていく。

[写真]清水の長谷川監督

(取材・文 西山紘平)

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