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[選手権]「インハイV時と似てきている」前橋育英が16強進出

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[1.2 全国高校選手権2回戦 前橋育英4-0室蘭大谷 フクアリ]

 2日に行われた第89回全国高校サッカー選手権2回戦、前橋育英(群馬)対室蘭大谷(北海道)の一戦は前橋育英が4-0で勝った。前橋育英は3日、流通経済大柏(千葉)と対戦する。

 両チーム合わせてわずか5本に終わった前半のシュート本数。前橋育英の10番を背負う188cmFW小牟田洋佑(3年)は「(コンサドーレ札幌加入の室蘭大谷の)櫛引(一紀)君に競り合いで負けていたし、自分が奪われてリズムに乗れなかった」と振り返る。また前橋育英の前半は前線、攻撃的MFの4人がフラットに並んでしまい、ボランチ以下の選手たちにとってもパスの選択肢が限定されている状態。加えて山田耕介監督が「きょうは小島が全くダメ」と鋭く指摘したように、浦和レッズ加入内定のMF小島秀仁主将にも細かなミスが出て試合の流れを引き寄せることができなかった。

 ただ負傷のためこの日もU-18JFA選抜のエース安藤瑞樹(3年)が先発を外れている室蘭大谷もサイドまでは上手くボールを運んだものの、そこからの工夫がなく、また前橋育英は絶妙なカバーリングを見せる北爪健吾(3年)と魂のこもった守備で相手の前に立ちはだかった川岸裕輔(3年)の両CBを中心に奮闘。決定的なチャンスはつくらせなかった。実力派の両校は決定機につながるような致命的なミスも犯さず、試合は膠着したまま前半を終えた。

 差となったのはゴール前最後の局面の部分の精度。室蘭大谷は後半8分、10番MF石川勝智のインターセプトから1年生FW内山北斗が鋭く右足を振りぬく。だがシュートはゴール左へ外れ、この好機を決めきることができない。逆に前橋育英は後半最初に訪れたビッグチャンスをゴールへと結びつけた。12分、自陣からの縦パスを右サイドのゴールライン際で拾った小牟田はこの日苦戦していた櫛引に距離を詰められながらも、わずかな隙を突いてライン際で上手く体をひねりクロスボール。絶妙のタイミングで上げられた正確なクロスを中央で受けた2年生MF白石智之がトラップで上手くマークを外すと、そのまま左足シュートをゴールへとねじ込んだ。

 反撃の時間が限られてきた室蘭大谷は後半30分、左サイドからのパスをPAで受けたFW前田翔貴(3年)が右足シュート。さらに32分には安藤をピッチへ送り出し、その直後にはPA外のこぼれ球に反応した安藤が左足シュートを放つ。だがこれはともにゴールの枠外へ。逆に前橋育英は35分、この日抑えられ続けていた櫛引の目の前でアシストし「五分五分に取り戻せたかなと思う」と喜んだ小牟田が中央から白石、FW飯沼壮貴(3年)とつながれたボールを左足ループで押し込み2戦連発。ロスタイムにはMF湯川純平(3年)のドリブルから途中出場のMF柏俣翔也(3年)が3点目を奪い、試合終了間際には小牟田のラストパスから小島主将が左足シュートを決めて試合を締めた。

 「あとの点はおまけみたいなもの」と前橋育英・山田監督は最終的に開いた得点差にも笑顔を見せなかった。ただ新人戦九州チャンピオンの神村学園、プリンスリーグ北海道で無敗だった室蘭大谷という強豪から2戦8発で8強進出だ。例年に比べてタレントは落ちると評価されてきたが、成長したチーム力で補っている。昨年の全国高校総体優勝メンバーの小島主将は言う。「昨年も大会の途中で成長して優勝しました。その時と似てきていると思います」。

 浦和レッズ加入内定の小島主将は浦和への練習参加や09年U-17W杯に出場し「(Jや世界は)シュートエリアが広いということ、一歩の寄せが遅くてシュートを決められたこと」をチームメートに説明し、意識の向上を図ってきたという。それが実っていることもあるのか、この日はPA付近までボールを運ばれてもDF陣の出足が早く、また体を張った好守により、1点を与えなかった。3日の対戦相手は07年度日本一の流通経済大柏。地道に課題へ取り組み続けて結果「大会中も確実に成長できている」前橋育英が成長の成果をV候補にぶつける。

(写真協力 『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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