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[選手権]山梨学院が粘る駒大高を振り切る、次戦は新旧王者対決

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[1.3 全国高校選手権3回戦 山梨学院1-0駒澤大高 フクアリ]

 第89回全国高校サッカー選手権は3日、各地で3回戦を行い、前回王者・山梨学院(山梨)が初出場で16強入りした駒澤大高(東京B)を1-0で振り切り、ベスト8進出を決めた。5日の準々決勝では07年度大会優勝の流通経済大柏(千葉)との“新旧王者対決”に臨む。

 初出場ながら大津(熊本)、星稜(星稜)という名門校を連破し、波に乗る駒澤大高。立ち上がりは、その勢いが王者をも上回った。シンプルに縦に早くボールを放り込み、高い位置からプレッシャーをかける。駒澤大高の大野祥司監督が「20分まではうちのペースだった」と言えば、山梨学院の吉永一明監督も「立ち上がりは予想通りだった。うちもパワーを持って入ろうと選手には話していたし、受けに回るのではなく、食い止めることができたと思う」と振り返る。序盤の猛攻をしのいだ山梨学院に、徐々にペースは移っていった。

 前半20分過ぎからは怒涛の攻撃だった。中盤でシンプルにパスをつなぎ、前に人数をかけて押し込む。前半22分、FKのこぼれ球をMF荒木克仁(2年)がボレーシュート。これはGK岸谷紀久(3年)の好セーブに阻まれたが、どこからでも積極的にゴールを狙い、シュートの雨は浴びせた。

 それでも駒澤大高の守備陣も体を張り、ゴールを許さない。前半26分、MF堤建太(3年)の突破から最後はMF宮本龍(3年)が強烈なシュートを放つも、ゴール前でDFがブロック。流れの中ではなかなか駒澤大高の堅守をこじ開けられなかったが、セットプレーのチャンスを生かした。

 前半30分、左45度の位置でFKを獲得すると、荒木が左足で狙ったシュートは壁を越え、ゴール右上隅に吸い込まれた。これまで何度となくビッグセーブを見せてきた岸谷が必死に伸ばした手もわずかに届かず、荒木の芸術FKで待望の先制点を奪った。

 山梨学院は先制後も攻撃の手を緩めない。前半33分、GKが前に出ているのを見逃さず、荒木が約40mのロングループシュート。これは惜しくもゴールポストを弾き、同34分にはFW加部未蘭のポストプレーから右サイドを抜け出した堤がゴール前に折り返すと、走り込んだMF白崎凌兵(2年)が右足で狙ったが、わずかにゴール左へ外れた。

 結局、前半のシュート数は15対4。圧倒的に攻め立てながら1点にとどまると、後半はまったく別の展開になった。吉永監督は「(後半の展開は)当然だと思っている。昨日(国見戦)3-0で折り返した後半もそうだったが、リードされているチームは前がかりになる。相手のパワーが上回るのは当然」と言う。自陣に押し込められる時間が続いたが、後半24分には相手の右クロスをDF大黒貴哉(3年)がクリアし、同25分には左クロスをDF関篤志(3年)が跳ね返す。集中力を切らさず、粘り強く耐え続けた。

 「ここまで来れば、弱いチームなんてない。(マークを)外されたり、クロスを入れられるシーンはある。そこでバタつかず、ゴールを守るプレーができればいいと思っていた」と吉永監督は強調する。後半は完全に駒澤大高の試合だったが、シュート自体は2本しかなかった。後半39分にはMF高平将史(3年)のボレーシュートがクロスバーを直撃するなど、運も味方したとはいえ、ヒヤリとさせられた場面はこのシーンぐらいだった。

 結局、1-0の逃げ切り勝ち。2日の2回戦・国見戦は後半に1点を返され、3-1の勝利だったこともあり、「無失点で終われたのは、昨日よりも成長したところ。欲を言えば、カウンターで追加点を取れなかったことが次の課題だけど、守備陣はよく耐えてくれた」と納得の表情だった。

 大会前の練習試合でもなかなか無失点で終わることがなかったチームにとって、本番で完封勝利をおさめたことは大きい。5日の準々決勝では流通経済大柏と対戦する。組み合わせが決まった直後から吉永監督も「2つ勝って流通経済大柏とやりたい」と熱望してきた優勝候補筆頭との対決だ。前回覇者と3大会前の王者。準々決勝最大の注目カードとなるのは間違いない。

[写真]前半30分、先制点を決めたMF荒木克仁(右から3人目)がチームメイトと喜ぶ

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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