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[選手権]PK戦直前の静けさ破る大爆笑!「笑顔の久御山」京都府勢18年ぶり4強進出!!

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 久御山 1-1(PK4-3)関西大一 三ツ沢]

 第89回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行った。神奈川県のニッパツ三ツ沢球技場の第1試合では昨年度4強の関西大一(大阪)と初めて準々決勝へ進出してきた久御山(京都)が対戦。1-1でもつれ込んだPK戦の末、久御山が4-3で勝ち、初の準決勝進出を果たした。久御山は8日に国立競技場で開催される準決勝で流通経済大柏(千葉)と戦う。

 PK戦によって“国立切符”が委ねられた関西勢対決。紫紺のユニフォームの関大一が円陣で集中力を高めている一方、白と赤の久御山の円陣からは何度も大爆笑が巻き起こっていた。緊張感高まるPK戦直前にスタジアムに響いた笑い声。この試合で大会通算2枚目となる警告を受けたCB山本大地主将が「勝ってもオレは(出場停止で)国立行けへんわー」と叫ぶと久御山イレブンはドッと沸き、「点取られたけど負けてないのはツイてる」「笑顔でいこう」との声にチームはまた盛り上がった。

 「笑っているほうが運もついてくる」。今年、久御山は全国高校総体予選で敗退するなど全国での実績ない。ただし苦しい時に前を向いて、笑うことができるようになったチームは、笑顔で国立進出の権利を引き寄せた。PK戦2人目のMF足立拓眞(3年)が右足シュートをゴール左ポストへ当ててしまったが、続く関大一MF浅井哲平(3年)の右足シュートがゴール左ポストを叩く。

 ここでも「ツイてた」チームはGK絹傘新(3年)が関大一の5人目・梅鉢貴秀主将(3年、鹿島アントラーズ加入内定)の右足シュートを左へ跳んで体でセーブ。直後にFW安川集治(3年)が右足シュートをゴール右隅へ沈めて4強進出を決めると、白と赤の笑顔はこの日一番の輝きを放った。

 山本主将は「これまでは点取られたら下を向いてすぐ雰囲気悪くなっていた。でも笑ったら前向きになれる。悪くなって点取られても下を向かないチームになった」と分析する。この日は試合序盤から足立を中心としたパスワークで主導権を握り、前半24分には足立の右CKを二アサイドへ飛び込んだ2年生CB塚本健介が頭で決めて先制する。関大一にチャンスらしいチャンスをつくらせず、相手に放たれたシュートは前半わずか1本。それでも後半12分には梅鉢主将の突破からFW井村一貴(3年)に同点ゴールを浴びた。「月まで走れ」をモットー走力が武器の関大一は、その後も運動量を全く落とさずに久御山にプレッシャーをかけてきた。

 ただ松本悟監督が「メンタル本を無理やり読ませてきた。PKでもどんなことでも勝とうとしてあきらめない姿勢。(例えば)前はPKになると『ダメだ』『怖い』となっていた。でも気持ちが強くなった」というチームはこの状況にも全く飲み込まれることなく、平常心で久御山らしいパススタイルを貫く。自陣でパスをカットされても全く怯まない。「相手を1人かわせばビッグチャンスになる」とドリブル、ショートパスを徹底し、まるで松本監督が「(現役時代の74年度に見て)衝撃を受けた」という静岡学園(静岡学園)や野洲(滋賀)のような技術を最大限に生かしたサッカーで攻め続ける。後半終了間際にビッグチャンスを逃しても引きずらない。そして逆に関大一MF小畑善孝(3年)が放った決定的なシュートを体を張って守り勝利を引き寄せた。

 準決勝で出場停止の山本主将は「やっと久御山のサッカーを全国で示すことができた。自分たちは優勝する力がついたと思う。(準決勝も)自分たちのサッカーができると思う。負ける気しぃひん(しない)です」。京都府勢が4強へ進出したのは92年度の山城以来18年ぶり。今、笑顔と勢いが最もある久御山は、果たして頂点まで一気に駆け抜けることができるか。

[写真]PK戦を制し、喜び爆発の久御山イレブン(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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