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[選手権]ロスタイムの悪夢→PK戦の歓喜、立正大淞南が島根県勢初4強

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 西武台2-2(PK4-5)立正大淞南 フクアリ]

 第89回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行い、フクダ電子アリーナではともに初のベスト8進出となった西武台(埼玉)と立正大淞南(島根)が対戦し、PK戦の末、立正大淞南が競り勝った。島根県勢初の4強入りを果たした立正大淞南は8日の準決勝で滝川二(兵庫)と対戦する。

 最悪の展開で迎えたPK戦だった。立正大淞南が2-1とリードして迎えた後半ロスタイム。表示された2分も過ぎていた。西武台の攻撃となったラストプレー。DF町山阿記(3年)の左クロスを逆サイドのFW清水慎太郎(3年)が頭で折り返し、MF末松光(3年)が体ごと飛び込んだ。ヘディングで押し込む劇的な同点弾。直後にタイムアップのホイッスルが鳴り、試合はPK戦に突入した。

 互いに1人目が決め、先攻の西武台は2人目のDF山崎健吾(3年)がゴール上に外す。すると、立正大淞南3人目のDF中村宏輝(3年)のキックもゴール上へ。4人目、5人目は両チームが成功させ、4-4でサドンデスに入った。

 6人目。先攻の西武台はDF大迫翔太(3年)がキックを浮かしてしまう。決めれば立正大淞南の勝ちとなる場面。ところが、DF椎屋翼(3年)のシュートは左ポストを直撃し、ついに7人目までもつれ込んだ。

 ここで立ちはだかったのが立正大淞南のGK三山大輝(3年)だ。MF岡田和貴(3年)のキックを横っ跳びでセーブ。そして、今度こそDF竹内洸(3年)が落ち着いてゴールに叩き込み、立正大淞南が激闘に終止符を打った。

 「この苦しい試合をものにしたことは、今大会に限らず、将来にも生きる。勝ったと思ったら追い付かれて、PK戦でも勝ったと思ったら失敗して……」。南健司監督は苦笑いしながらも、二転三転の末の勝利を喜んでいた。

 試合は絶好調男のひと振りで幕を開けた。前半10分、FW池田拓生(3年)からパスを受けたMF加藤大樹(3年)が左足を振り抜き、ゴール左隅にねじ込む。加藤の4戦連発7得点目で先制すると、同26分には加藤の左足ミドルがクロスバーを直撃。同28分にもFW新里大地(3年)のループシュートがクロスバーに当たり、同35分にも加藤のシュートがゴールポストに阻まれた。

 運にも見放され、2点目を奪えず、1点リードで前半を折り返すと、後半立ち上がりの2分に追い付かれた。西武台はDF澤本玲(3年)の右クロスを清水が頭で合わせる同点弾。こちらも清水の4戦連発5得点目で試合を振り出しに戻し、一気に攻勢を強めた。

 押し込まれる時間が続いた立正大淞南だったが、少ないチャンスを生かした。後半19分、右サイドからDF中村謙吾(3年)のロングスローがゴール前に流れてきたところを池田がトラップから前に持ち出し、右足を一閃。ゴール左隅に流し込み、2-1と再び勝ち越しに成功した。

 怒涛の反撃に出る西武台。後半40分には清水のパスから岡田がポスト直撃のシュートを放つなど攻め立てた。後半のシュート数は9対2。ゴールへの執念が最後の最後で実り、ロスタイムに末松の劇的な同点ゴールが生まれた。

 最後の同点ゴールは立正大淞南のGK三山のキックミスから始まった。「僕のミスから追い付かれて、頭が真っ白だった。でもチームメイトから『自信を持って、切り替えろ』と声をかけられて。止められて良かった」。最後は自分のミスを帳消しにするビッグセーブ。国立への切符を手にした。

 またしても歴史を塗り替えた。島根県勢初進出となった準々決勝を制し、ついに次は国立だ。南監督は「数年前までは島根県のチームが国立に行けるなんて考えられなかった。夢で言っていたぐらいで、目標にはしていたけど、夢が叶ってよかった」と興奮冷めやらぬ様子だった。5大会連続で初優勝校が生まれている全国高校選手権。その流れに乗って、立正大淞南が一気に頂点まで駆け上がる。

[写真]初の4強入りを決めた立正大淞南イレブンがスタンドへ歓喜のダッシュ(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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