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[選手権]今大会24人起用の滝川二、「全員で」「楽しむ」滝二スタイルでついに壁破る!

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[1.8 全国高校選手権準決勝 立正大淞南0-0(PK6-7)滝川二 国立]

 8日、第89回全国高校サッカー選手権準決勝が東京・国立競技場で行われ、第2試合ではともに初の決勝進出を目指す立正大淞南(島根)と滝川二(兵庫)が対戦。0-0で突入したPK戦の末、滝川二が7-6で勝った。滝川二は10日の決勝で初優勝を懸けて久御山(京都)との関西勢対決に臨む。

 シュート数24対15。今大会7得点で得点ランキング首位の立正大淞南FW加藤大樹(3年)が鋭いドリブルからゴールへ迫れば、同2位の滝川二FW樋口寛規(3年)が絶妙なボールコントロールから決定的なシュートを打ち込む。4試合で今大会最多の15得点をたたき出している滝川二と同12得点の立正大淞南の対決。前半主導権を握った滝川二は後半にも18分にMF谷口智紀(3年)の右足ミドルがゴール右ポストを叩き、33分にはMF本城信晴(3年)のラストパスから中央へ飛び込んだ樋口がゴール至近距離から左足シュートを放つ。

 対して立正大淞南は後半運動量の落ちた滝川二に怒涛のラッシュをかけ、特に42分にはMF小田悠太(3年)のクロスにフリーで飛び込んだFW池田拓生(3年)が決定的なヘディングシュート。そして43分には池田のスルーパスで抜け出した加藤がGKをかわし無人のゴールへ左足シュートを流し込む。だが、ボールは無情にもゴール左へと外れてしまった。

 互いの粘り強い守備も併せて両チームに差は生まれなかった。ビッグセーブを連発した立正大淞南GK三山大輝(3年)はPK戦でも決められれば敗戦の決まる5人目のDF土師直大(3年)のシュートをストップ。だが、勝負を決めたのは栫裕保監督が「PK戦になると予想していた。調子は中尾(優輝矢、3年)の方がよかったがシュートへの反応は下出がいいので」と3試合ぶりに先発起用された滝川二GK下出晃輔(3年)だった。滝川二の7人目が失敗した直後、下出が立正大淞南MF稲葉修土(2年)のシュートを右へ跳んで止め返すと、最後は立正大淞南9人目のSB椎屋翼(3年)のシュートがゴール左へ外れ、滝川二が決勝切符をつかんだ。

 滝川二は今大会、準々決勝までの4試合で登録25人中24選手を起用。指揮官の「1分でも勝負の世界に立たせてあげたい。(他校の監督には)怒られるかもしれないけど、選手の経験を重視している」という方針でどのチームよりも多くの選手が起用されてきた。全国2位となった夏の全国高校総体では登録全17選手を起用し、今大会もピッチに立っていないのは3番手GKの清水貴大(2年)だけ。GKでは青森山田、日章学園を完封した中尾が好調さを結果で示してきたが、ここでも指揮官の「何とか出したかった」と将来への経験を積むことを加味し、再び下出が先発起用されていた。 

 チームの中には、当然より多くの出場時間を得たい選手たちもいるようだが、それでも一部主力選手以外は固定せず登録メンバー全員で戦うことが、全国総体での決勝進出に続き、選手権でもチームを決勝の舞台へ押し上げた。FW浜口孝太主将(3年)は「きょうスタメン4人が代わると思っていなかったですけど。自分たちは誰が出てもレベルが落ちないチームだと言われている」。

 独特なのは選手起用だけではない。今年の滝川二は「楽しむ」ことをモットーに1年間を送ってきた。準優勝した全国高校総体出発前日には「WBC(WORLD BASEBALL CLASSIC)しよ!」「オレ、イチロー!」と言って野球を楽しみ、優勝した近畿大会出発前にはキックベース大会を開催し、サッカーバレーを行って臨んだ大会もある。「滝二らしく楽しんで試合に入りたい」と今回の全国大会出発前日にも監督らコーチングスタッフを含めたメンバーで野球を行い、出陣。いい形でムードを高めて全国大会に入り、大会期間中も2度全員で「回転寿司スシロー」に繰り出し、記念艦「三笠」を見るためにバスで片道40分かけて横須賀市へ観光に出かけるなど、メリハリをつけた生活を送り、そして決勝進出した。「全国に出るチームでこんなに遊んでいるところはないと思う。でもやるときはやる。これが今年の滝二」と浜口主将。メンバー起用、そして楽しみながら結束力を深める「10年度版滝二スタイル」でこれまで3度閉ざされていた決勝への道までこじ開けた。誰が出ても変わらないチーム力で、全員で壁を破った滝川二がこれまで通りの「滝二スタイル」で初Vをつかむ。

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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