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[選手権]3点ビハインドにも諦めず、猛追みせた久御山

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[1.10 全国高校選手権決勝 久御山3-5滝川二 国立]

 後半9分、3失点目を喫した久御山イレブンはピッチの中央で円陣を組んだ。「まだ30分ある。ここから追いつけたらすごいぞ」とベンチから松本悟監督が声をかければ、選手たちは「笑顔!笑顔!」「笑顔でいこうぜ!」「あきめるな!仲間を信じてやろう!」と声を掛け合った。0-3でも誰一人として諦めていなかった。

 気合を入れ直し、そこから猛追をみせた。失点からわずか3分後、MF坂本樹是(3年)のシュートを相手GKが弾いたこぼれ球にMF林祥太(1年)がつめて、まずは1点を返した。2分後に失点を喫して、再び1-4と3点差に突き放されたが、それでも久御山が下を向くことはなかった。

 後半39分にFW安川集治(3年)、同41分には坂本がゴールを決めて、ついに3-4と1点差に詰寄った。迎えたロスタイムの表示は5分。3万5千人を超える観客のどよめきは「僕たちも5分っていうのを見て、くじけることなくいこうと思いました」(足立)と選手たちの士気を高めた。

 終了間際に5失点目を喫して結果的には3-5で敗れたが、選手たちは「あそこで1点差まで追いつけたのが良かった」と胸を張って振り返る。松本監督は「1点差まで追いつけて、国立の中が盛り上がって、もしかしたらというところまでいけた。満足している。負けたのは自分のせい」と選手たちをかばった。

 今大会、久御山の選手たちの顔からは笑顔が絶えなかった。PK戦直前の緊迫した雰囲気、リードを詰められて迎えたハーフタイム。どんな時でも誰かから「笑顔でいこうぜ!」と声があがった。練習から全員が持っていた『サッカーを楽しもう』という信条を全国の舞台でも実践した。

 決勝前日には松本監督から「勝敗にこだわらず『いいゲーム』をしようと伝えたい」と選手たちへの言葉があった。3失点を喫したものの、諦めずに追い上げ続けた選手たちがみせたのは、紛れもなく『いいゲーム』だったはずだ。

(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 片岡涼)
【特設】高校選手権2010

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