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[選手権]「大会の主役!」滝川二FW樋口が決勝2発で得点王に!

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[1.10 全国高校選手権決勝 久御山3-5滝川二 国立]

 「大会の顔」が鮮やかなゴールで初Vに華を添えた。3点リードを後半39分、41分の連続ゴールで2点差にまで詰め寄られた滝川二。残り時間わずかな中でもあきらめない久御山が前を向いて次々と仕掛けてくる。だがロスタイム表示の5分が経過しようとしていた50分、滝川二はFW樋口寛規(3年)が敵陣PAで相手クリアをブロック。背番号10は真上に上がったボールの落ち際を冷静にコントロールすると、飛び込んできたGKを右横への動きでかわして、内転筋と足首を痛めている右足で“優勝ゴール”を叩き込んだ。

 樋口は久御山が猛追を開始する直前の後半38分に相手GKと1対1になりながらもコントロールミス。試合を決定付けるチャンスを逃すとチームはその後連続失点し、責任を感じていた。それだけに「流れ悪くなっていて『トドメをささないかんな』と。決められてよかった」とホッとした表情だった。

 そして前半40分にMF本城信晴(3年)のラストパスから決めたゴールに続くこの日2点目で、通算7得点で並んでいた立正大淞南MF加藤大樹(3年)とチームメートのFW浜口孝太(3年)を上回り、通算8得点で得点王を獲得。「チームの優勝が一番でしたけど、得点王取りたいと思っていた」と語るストライカーは最高の形で高校生活最終戦を締めくくった。

 滝川二の栫裕保監督によると内転筋と足首の負傷は、「(トレーナーの話では)動くこともあまりよくない。本来ならば休ませないといけない」というもの。それでも「あとひとつなんでやるだけ」と決戦のピッチに立った。怪我の影響もあり準決勝は「全く動けていなかった。もっと動かなイカンと思っていた」。これ以上、自分のためにチームに迷惑をかける訳にはいかなかった。

 その思いをピッチで表現した樋口は前半24分には左サイド中盤から完璧なクロスボールをファーサイドの本城へ通し、先制点を演出。その後も“ブルドーザー”と称されるFWは豪快な突破やDFライン背後への飛び出しで相手の脅威となった。相手をあざ笑うようなボールコントロールでも異彩を放っていた。「相手にしても前にこられた方が怖いと思うし、前は何回失敗してもいいからチャレンジしようと思っていた」と繰り返しプレッシャーをかけると、この試合最多のシュート6本。誰より貪欲にゴールを狙っていた。その結果、自らの2ゴールで滝川二に初優勝をもたらした。

 その樋口は清水エスパルス加入が秒読み段階。昨夏に練習参加しているものの、これまでの評価はJ入りを勝ち取るまでではなかった。だが、自身の先制ゴールで青森山田を下した試合後に清水の強化担当から打診があり、急転清水入りの方向となった。「プロになるのが夢だった。声かけてもらえるように必死でやってきた」という樋口。自らの足で切り開いた将来へ向けては「ボクがいっちゃん下手くそやと思う。これからどんどん練習して成長したい」。10年度高校選手権の「主役」はプロでのさらなる飛躍を誓っていた。 

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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