beacon

ラストプレーで劇的に勝ち点1奪取。王者・名古屋がドロー発進

このエントリーをはてなブックマークに追加
Text alert@豊田ス
[3.5 J1第1節 名古屋1-1横浜FM 豊田]
 王者の凄みは最後のワンプレーに集約された。4分のロスタイムも過ぎた後半50分。名古屋グランパスの新加入FW永井謙佑が奪ったPKのチャンスで、ケネディがボールをセットする。長い間合い。背番号16がのしかかるプレッシャーをはねのけるかのように右足を振り抜くと、ボールは勢いよくゴールネットの中央に突き刺さった。

 「永井がいいところでPKを取ってくれた。後は決めるだけだった」。エースストライカーはただただ安堵の表情を浮かべた。

 苦しい試合だった。2月26日のゼロックススーパー杯から始まった今季の公式戦。1日には敵地中国でACL杭州緑城戦を行い0-2で敗れ、心身ともに疲労を引きずったまま、Jリーグ開幕戦に臨んだ。

 試合内容を見れば、8日間で3試合目という厳しい日程が大きく関与しているのは間違いない。赤のユニホームの出足は鈍く、立ち上がりから昨季8位の横浜F・マリノスに押し込まれた。後半18分にはペナルティーエリア内で増川隆洋田中マルクス闘莉王のスライディングタックルが相次いでかわされ、先制点を奪われた。

 清水エスパルスから移籍加入したMF藤本淳吾が波に乗れぬまま後半37分に交代。ストイコビッチ監督は「彼にとっては移籍後初のリーグ戦。いつも以上のプレッシャーがあったと思う」とかばったが、試合内容を象徴する交代だった。

 だからこそ、負けに等しい内容でもぎ取った勝ち点1は大きい。「苦しく、厳しい試合だったが、最後の方にはチャンスも多く作れた」と指揮官。闘莉王は「相手も必死だからね。でも、最後の最後に何とか追いつき、追い越せるという雰囲気を出せている」と勝者のメンタリティーに胸を張った。

 とはいえ、長期離脱中のダニルソン、ブルザノビッチが戻ってくるのはしばらく先のことになる。フィールドの選手で完全に〝守備的〟な選手が増川1人という不安定さをどうカバーしていくか。命からがらの勝ち点1奪取で連覇への第一歩を踏み出した名古屋が乗り越えなければならない試練は少なくない。
(取材・文 矢内由美子)

TOP