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新生浦和の第1号は新司令塔、「ホーム開幕戦で大きな喜び」

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[4.24 J1第7節 浦和3-0名古屋 埼玉]

 ペトロヴィッチ新監督を迎え、生まれ変わろうとしている浦和レッズが、4万2767人観衆を迎えたホーム開幕戦で今季初勝利をつかんだ。新王者の名古屋に3-0の完勝だったが、幕開けとなる今季ファーストゴールを決めたのは、新潟から加入した新背番号「10」マルシオ・リシャルデスだった。

 前半12分、中央からのカウンターでFWエジミウソンが右に展開。FW田中達也がPA右でミドルシュートを放ち、そのこぼれ球に反応したのがマルシオだ。開幕・神戸戦は0-1で敗れているため、これが浦和の今季初ゴール。もちろん、マルシオにとっても移籍後初ゴールで、「ホーム開幕戦ということで、大きな喜びだった。選手全員と喜ぶことを意識していた。ホーム開幕戦で、ゴールを決められた現実がうれしい」と笑顔で振り返った。

 ペトロヴィッチ新監督を迎え、システムこそ昨年までと同じ4-5-1だが、戦い方は変わった。前任のフィンケ監督は、ともすれば回しすぎなほど細かいショートパスにこだわったスタイルだったのに対し、新指揮官はサイドを活かし、ゴール前でのダイナミックな攻撃を求める。パスよりも積極的なシュート、ドリブル突破、裏への飛び出し……。そんな新スタイルのキーマンが、マルシオ・リシャルデスだった。

 新スタイルが垣間見えたのは2点目だ。前半25分、右サイドでMF柏木陽介のスルーパスに、マルシオが抜け出す。司令塔はポジションチェンジで中央に走り込んでいた田中達也を見逃さなかった。落ち着いて横に流し、田中のゴールをアシスト。「常に意識していることは動き出すこと。僕が動き出すことで、他の選手が(空いたスペースに)入れる。達也選手が点を取ったが、あれはいいコンビネーションで取れた。新しいスタイルがあって、僕が意識しているのは与えられた仕事をして、いい結果を生むこと」と胸を張った。

 マルシオがダイナミックな動きをすることで、両翼の田中、原口元気もポジションにとらわれず、のびのびとプレーできている。田中はこの日1ゴール1起点と活躍。「ゴールは、マルシオが良いボールをくれたから。自分たちのサッカーをやれば勝てると思った。神戸戦でもやりたいサッカーはできていた。中断があって難しかったけど、同じことをやろうと思っていた」と新しいスタイルへの手応えを口にした。

「もちろん、怖い気持ちはあった。地震が起きたときは、ブラジルに帰って欲しかったが、彼女から残りたいと言ってくれたんだ。彼女の決断には驚かされたよ。彼女の強さや信頼感とか、これが僕にいい影響を与えてくれている」

 3月11日に起きた東日本大震災。この影響で複数の外国人選手が日本を離れる中、マルシオは浦和でのプレーを決断した。何より、タリタ夫人は6月に第一子の長女を出産する予定で、マルシオは、夫人だけはブラジルに戻るように薦めたという。しかし、日本に残って、マルシオを支えながら出産することを決断した。身重ながら、自分のことを気遣ってくれる夫人のためにも、早く勝利を届けたかった。
  
「このように3-0で勝ったあとには悪い点が見えにくことがあるが、パスミスとか細かい修正点はある。ビデオを見て修正していきたい。ワンゴール・ワンアシストできたが、納得するのではなく、常にもっといいものを求めていかないといけない。この調子で勝ち続けたらいい結果が生まれると思う」とさらなる飛躍を誓ったマルシオ。新生レッズを、新背番号「10」が歓喜に導き続ける。

[写真]先制点を決めたM・リシャルデス

(取材・文 近藤安弘)

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