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引いた相手を崩せない……F東京は無得点ドロー

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[4.30 J2第9節 F東京0-0札幌 味スタ]

「3分の1までは運べるけど、そこから手詰まりになる」。DF今野泰幸が苦悩の表情を浮かべた。

 現役日本代表2人を抱えるなど圧倒的な戦力を誇るFC東京が、コンサドーレ札幌を相手に0-0の引き分け。後半9分からの約35分間は初先発のロベルトセザ-と、F東京で初出場のペドロジュニオールが同時にピッチに立って2トップを組みながらも、最後までゴールをこじ開けることができず、無得点ドローに終わった。

 シュート本数は札幌と同じ11本だったが、攻めが単発で得点の香りも漂わず、スタンドからは「シュート打て!」の声とブーイング。「サポーターがブーイングするのは不満だからだと思うし、僕らも不満。勝ち点1を取ったと思う選手より、勝ち点2を落としたと考える選手が多いのは間違いない」。GK権田修一は口惜しそうに言った。

 立ち上がりは動きの硬い相手に対して優位に試合を進めた。前半14分にはボランチの徳永を基点に鈴木、阿部とつないで最後は遅れて上がった梶山が右足ミドル。シュートは枠をそれて飛んだが、ペナルティーエリア内に3、4人が入る圧巻の攻撃を見せた。

 ところが、前線にボールが収まらない、シュートが枠を捉えないという時間を続けているうちに、リズムを失っていく。後半は焦って簡単にボールを失う場面が増え、決定機はむしろ札幌の方が多いほどだった。10本のCKを生かすこともできず、遠いゴールを見つめるかのように、選手たちは天を仰いだ。

 まだ3試合、されど、もう3試合。大熊監督が「引かれた相手に対していいアイデアがなかった。もっと工夫が必要」と言葉を振り絞ったように、J2ならではの課題が重くのしかかってきている。

 その中でのホーム無得点ドロー。今野は「去年も最初は内容が悪くないのにホームで引き分けていた。勝てなかったその勝ち点が後々で響いた。だからこういうときも勝ち点3が大事になる。ベタ引きされようが、前から出てこられようがゴールをこじ開けるチームにならないとJ1に昇格はできない」と語気を強めた。

 厳しい表情は権田も同じだ。「ここがJ1であろうがJ2であろうが、引いてくるチームはあるし、J2だからと考えるのは大きな間違い。そう考えているうちは昇格はできない」と、チーム全体に警鐘を鳴らす。

 好材料はロベルトセザーとペドロジュニオールの2トップがようやくそろって出場できたことだ。「まだ100%ではないけど、やっていくことで良くなっていくと思う」と言うペドロジュニオールについて、今野も「いい選手もいるし、工夫していないわけでもない。2人いればカウンターもできるし、それができれば攻撃のバリエーションも増える。もう少し待ってくれれば必ず点は入るようになる。サポーターの皆さんにも少しの間、待っていてほしい」と訴えた。

 引いた相手を崩せないという悩みは、過去にJ1降格→昇格を経験した多くのクラブが抱えてきたこと。何が何でもそれに打ち勝つことが、J1復帰の最低条件になる。

[写真]堅守をみせた今野。守備は立て直しており、あとは攻撃陣の奮起を期待したい

(取材・文 矢内由美子)

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