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小野が先発落ちの悔しさぶつける2発、栗原「18歳、末恐ろしい」

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[5.7 J1第10節 横浜FM3-2福岡 日産ス]

 右足で、左足で、18歳のストライカーが圧巻の2発を叩き込んだ。前半を0-2で折り返した横浜F・マリノスは後半1分に1点差に追い上げると、後半11分に投入されたFW小野裕二の2得点で大逆転勝利を飾った。

「1点目は気持ちよかった。2点目はビックリした」。後半32分、左サイドでボールを持った小野がゴール前に折り返すと、MF谷口博之のポストプレーからワンツーの形でPA内に走り込んだ小野が右足を振る。美しい曲線を描いたボールはゴール右上へ。待望の今季初ゴールで勢いに乗ると、その4分後だ。MF兵藤慎剛のシュートをGKが弾いたこぼれ球に詰め、左サイド角度のない位置から左足を振り抜く。弾丸シュートは右ポストを叩いてゴールネットに突き刺さった。

「(4月29日の)清水戦のときとか、考えてやっていたらよくなくて、シュートでためらうシーンもあった。今日はシュートを打つときは思い切りいこうと思っていた。こないだの試合が終わって悔しくて、昨日もずっとシュート練習していた。それが結果につながってよかった」

 並々ならぬ決意を秘め、ピッチに入った。前節3日の浦和戦(2-0)まで3試合連続で先発していたが、開幕から4試合連続無得点。浦和戦では後半20分で交代を命じられた。

 試合翌日、先発組は軽めのメニューとなる中、小野は「長い時間出ていないし、練習させてほしい」と通常練習に参加しようとしたが、木村和司監督に「へたくさは入れない」と言われ、一人で黙々とシュート練習を行った。そして、この日は開幕戦以来となるベンチスタート。燃えない理由はなかった。

 木村監督は小野について「浦和戦でボールが足に付いていなかった。彼なりに悩んでいたし、練習でも気負い過ぎていた」と指摘する。昨年7月、横浜FMユース所属の高校3年生でJデビュー。10月17日の神戸戦では歴代6位となる17歳9ヵ月25日でJ1初ゴールを決めるなど17試合3得点を記録し、一躍チームの主力にまで成長した。

 そして、“ルーキーイヤー”として迎えた今季は背番号10を任された。まだ18歳。目に見えない重圧やプレッシャーがあってもおかしくはない。しかし、それを自分の力ではねのける強さが、小野にはある。DF栗原勇蔵は「アドバイスなんてしてないよ。あいつは気持ちが強いから。前回悪くて、今回スタメンから外れて。やってやろうという気持ちになっていた」と言う。「うちのチームは、FWにこういうタイプがいないから貴重だよ。結果も出しているしね。18歳、末恐ろしいよ」と冗談交じりに称えた。

「自分が出たら、自分が点を取れなくても絶対に勝ってやろうと思っていた。浦和戦のあと、ストレスもあったし、焦りもあった。今日で点を取れて、これを機にどんどんゴールを決めていきたい」。また一つ壁を乗り越えた小野。18歳の若きエースはまだまだ急成長を続けている。

[写真]2得点を決めた小野

(取材・文 西山紘平)

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